a3 ベッドの中で二人
朝、カーテンに蒼い明るさが燈りだした頃。静かな部屋の中で予兆は音もなく忍び寄って来た。
「ん……ンん……?」
寝ぼけた声で、やっと布団の中の一人が起きた。
「……え……?……や……ウソ、ちょと、まって」
気付いた声は、もうすでに遅い。
「なんで……、そんな……、わたしまだ……っ」
準備のできていない声で……、叫びそうになった自分の口を手で押さえた。
「……?……なんだよ。またなんかあったのか?」
分かり切った声が、同じ布団の中から聞こえてくる。
「……ッぁ、だって、そんな。だめっ。ダメだってっ! 妹たちに聞かれちゃうッ。隣の部屋にいるのよっ」
「だったらそんな大声出すなよ。大声出すから聞こえるんだろ?」
「ム、ムチャ言わないでッ! ひゃ、ヒャッくんの、ヒャッくんの動きがっ……もっ、ひど、ヒドすぎるからァ! ……ッぅ? ……ンゥっ、アンッ、やんッ]
……と耐え難い刺激にダブルベッドの中で体を仰け反らす12歳の少女……。
「……ぁ……、ダ、だめっ、そんな所、触らないで! いまはダメなの! いまそこ触っちゃダメなのッ!」
「……っ……
そう言って体を当てれば……ぅンッ!……と、また身を仰け反らせて、少女が
ピリリと縦に裂かれた小さな四角い包装の残骸が一つ……。丸い中身だけを綺麗に取り除かれて、少年のそばの床に無造作にポイ捨てされている……。
「……ちゃんと……シテるんでしょうね……ッ?」
恐る恐る訊いてくる少女の声が邪魔だった。こちらのほうが仕方なくシテいるのに。それを改めて確認してくる無神経な根性が逆に癇に障るッ。
男は苛立ちから……ベッドを軋ませた……ッ。
「……ゥあんッ!」
振り乱れる髪! 露わになる首筋っ! 慌てて枕を掴む動作で、
「ぅあっ、やぁっ、ぁやァっ、やぁなのっ! だめっ、ぉ願ぃっ、っそ、ッふ、ン!」
乱れる少女の反応に男は笑いを隠すことが出来ない。いままでの仕返しは、ここで返さなければならないと強く誓う。日常的に溜まっていた憂さを晴らす絶好の機会は一瞬。
女のワガママに振り回されてきた男の恨みがついに、ここで牙を剥く。
「……ぁィっ……ぃたァっ! ……ぁッ? ……ッん! ……ゥそぉッこ? んンっ? ンんッ! んんッ! ぃンンッ! ゥンんッ!」
無遠慮な痛みで始まった、苛め抜かれる刺激に……、躯を仰け反らせていく。だが、こんなものだろうか? 少女の弱点はもっと他にもあるはずだ。それをゆっくりゆっくりと探していく。
「っアッ、だ、ダメッ、ッだめっ、だめェッ! そこっ、ッそこ、ソコぉッ! ……ーォんッ!」
暴れる上半身が……それでも襲いかかって来る刺激に耐える事はできない。少年はそこでついに見つけることができた。
「……んっ、あ、ヤ、まって、動か、なっ、いで、イタいっ……!」
……ぅえェ……と。最後には泣いて、放心して……唐突に降りかかった最悪がまだ終わらないまま、伝う涙に任せて宙を泳いで救いを求めようと彷徨う伸ばされた手が切ない……。
「……な、……ンっ……、でぇ……? こんな……っ?」
ひっく、ひっくと……泣きながら。望まない襲いかかる暴力から逃げたい意思が絶望に変わる。いまもまだ微かな可食部を残している
「……はぁ……、はぁっ、はァッ……」
男の吐息……。もはや少年の声には聞こえない、
……筋肉痛で。
「ィ……痛いっ、動かないで! ちゃんと、じっとシテいてっ! そっちが動いたらベッドの振動で、こっちの足にも響くんだからッ、もうっ!」
……筋肉痛でッッッ!!!!
「いや……おれも一応……、筋肉痛なんだけどさ?」
小学校の頃よりも格段に登校距離が伸びた中学校の通学路……。それはそれは簡単に……足の筋肉痛にもなってしまう距離でも当然あった……。
よく見れば、ダブルベッドの周囲に散らばっていた服は学生服……パジャマもちゃんとベッドの中でも着ていた二人で勿論の事。
床に落ちていた四角い小包装は昨夜、キッチンからくすねて頂いていたキャンデーの包装が忘れ去られて、そのままのだけ。
……と、そこでおや? なぜ? パジャマは着ているのに、壁に立て掛けてあった筈の学生服は散らばっているのか?
それはまた次回での種明かし……。
今は、きっとこの少年少女以外の顛末を目の当たりにした第三者たちの心境とは……隣の部屋で興奮しながら聞き耳を
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