a2 湯船の幼馴染み



 入学式と昼食を無事に終えた、その日の夜。脱衣所で服を脱いで、浴室に入った。わざわざ、この時のためにリフォームした幼馴染みの家のバスルーム。大の大人が三人集まり入っても伸び伸びと体を拡げられるほどの広さがある大きなバスタブに改装された浴室。


 そのダブルベッド並みの大浴槽に張られた風呂の湯を手桶で掬いとって体を慣らすと、ゆっくりと体を沈めて、肩まで湯船につかり今日一日の疲れを癒した。


「……っ~~~~~あ~~~~~~~~……」


 とってつかえていた声が漏れた。腕も足も存分に伸ばして、芯まで湯温が染み込んでいく心の洗濯を満喫する。一番風呂だ。この家の住人達には悪いと思ったが、構わないと言うので先に失礼させて貰った。いや、むしろ薦められたと言った方がいいのかもしれない


「……どう? 湯加減は……?」


 浴室の締め切ったガラス戸越しから幼馴染みのそんな声がかかってきた。


「……うん。いいよ」

「そう。じゃあ、わたしも入ろっと……」

「……ぇへ……?」


 間抜けな声と同時に服を脱いでいく音がする……。


「……おい、ちょ。まて。ちょっと待て。せめてオレが出るまで待っ……っ」


 言い終わる前にガラリと開いた。細い腕で胸を隠し、全裸のまま少女が入ってきた。気持ち前かがみになったまま、何も気にせずシャワーの蛇口を捻る。


「ちょおっ、お前なにやってっ……!」


 慌てて体を屈めて湯面にまで口を浸けて顔を俯けた。


「なにって、わたしもお風呂に入ろうかなって思ったの。ここはわたしの家でしょ?」

「そ、そうだけど。……そりゃそうだけどっ! さっきおれに風呂に入れって言ったじゃないかっ!」

「だから、ヒャッくんが入ってるから、ついでにわたしも入ろうって思ったの。そういう話だったでしょ? その為にお風呂こんなに大きくしたんだし……」


 如雨露シャワーの温かい降雨に目を瞑り、慣れたように顎を上げてそそがれる温雨を首筋に当てていく。右に左に交互にまだ幼い頸動脈を見せて、手でもなぞりながらみそいでいく。

 少女の裸体……。つい最近までランドセルを背負って小学校に通学していたばかりの、まだ12歳の少女……。


「あ、もしかして、おチンチンっちゃった?」


 蛇口を止めて、濡れた視線で覗きこんできた。咄嗟に浴槽の底で伸ばしていた足を引っ込めて、端の一番カドに身を寄せて縮こまる。


「変なヒャッくん……」


 笑って、同じ湯船に入ってきた。同じ温度、同じ風呂、そして同じ液体の中……。


「ね……ここでシちゃう?」

「いい加減にしろ」

「……でもデキるよ? この広さだと……」


 チャプンと液体の音をさせた。


「ほら、こんな感じで……」


 チャプ、チャプ、チャプンと手の指先で風呂の水面を叩いていく。


「……お風呂の中で、いっぱい腰で叩かれる音……」


 さらに激しく……リズムを早くして……。


「わたしのお尻に……ヒャッくんの腰が何度も当たってくる音……」

「……詩織しおりっ」

「それとも太モモかな?」

「詩織!」


 ザバリと、立ち上がる前に立ち上がられてしまった。目の前に現われた少女の裸。いつも見ていた筈なのに……いま初めて見てしまった身体。今度は胸も隠していない。あられもない姿。


「ちゃんと見えてる? わたしのカラダ……?」


 冷たい視線に熱が帯びる。


「別に……? 変わらないでしょ? オッパイも、お股も……。もう見たでしょ? 保育園の時には一緒におフロに入って、触りいっこだってしたじゃない? 一緒に洗い合って。胸も……お股も……。思い出して……? 今と何が変わらないの?」


 少女のこえで、熱くなっていく息が……粗くなる……。すぐにでも一つになりたくなるほどの雄と雌の……吐息……。


「わたし……覚えてるよ? ヒャッくんのおチンチンを初めて触った時の感触……。柔らかかったもの。お風呂で、「こんなカタチしてるんだー」って……。そうしたら、すぐ大きくカタくなっちゃって……、驚いちゃった。あんな小さな歳でもカタくなるんだね? あの時……、今のこの知識があれば……保育園児あそこで、もうシちゃってたのかな? わたしたち……?」


 欲望から一歩、チャプンと美脚が近づいた。


「ヒャッくんだって、わたしの体を触ったでしょ? 覚えてない? お風呂でわたしの体を、おばさんだと思って好き放題に触ってきたでしょ? ヒャッくんのお母さんとわたしとを比べて……。ううん。わたしだけじゃない。わたしはその中の一人だった。だってヒャッくんにはわたし以外にも一緒にお風呂に入る女の子が他にも……」

「詩織ッ!」

「……。これは……R18?」


 全てを見せて、見下げ果てて尋ねてくる少女の言葉に、湯船に視線を落とす少年は首を振った。


「じゃあR15?」


 それにも……首を振る。


「へぇえ? R15でもないんだ? ここまで、ヤッておいて? お風呂の中で女の子と男の子が裸同士でいるのに? しかも保育園の時じゃなくて、生理が始まった中学生の女の子と? ヒャッくんは精子は?」


 問い掛けてくる声には……答えたくない。


「……でもオチンチンが勃てば同じか。やってることは保育園の時と全然、変わらないのに? なんで中学生同士わたしたちになったらダメなんだろう?」

「……だから……この状態までならまだR15じゃないって言ってるだろっ」

「……でも大人から見たらR15かもよ?」

「その大人であるこの家のおじさんとおばさんは、まだ何も言ってきてない」

「わたしの保護者であるお父さんとお母さんは、わたしとヒャッくんがここでハジメちゃったとしても大歓迎だけど?」

「……オレはまだお前の体には触ってない」

「見るのはいいんだ?」


「……肝心な所は……湯気で隠れてるからな?」


 都合よく……、漫画のラブコメの一コマのように、今回の話の最初から最後まで、胸も下も、実は一番肝心な場所は白い湯煙で隠されていた未成年の女子の裸姿……でした!


「保育園の時は触ってたッ!」

「だから、二次性徴にデッカくなっちまった中学になってからは触ってないだろうッ!」

「触ればいいじゃないッ! この意気地ナシッ!」

「触っちまったら、そこでBになってR15だ! つってんだろ! このバカ女っ!」

「あ……、バ、バカって言ったぁッ!」


 顔を歪ませ、ヒステリックに風呂のお湯をバシャバシャと掛けてくる(全裸で)。


「オッパイ……揺れてるぞ」

乳首チクビは湯気で隠れて見えなくなってるから大丈夫なんでしょ? このムッツリスケベ!」


 あられもない少女の剣幕に押されて、風呂の湯を浴びて濡れていく前髪が垂れ下がっていく感触を全面で受けたまま、少年はさっさと反抗を諦めると、されるがままになっている。


「夜……ちゃんと襲ってよ?」

「我慢するから大丈夫だ。問題ない」


 プールでは一緒に授業を受ける12歳の未成年の少女と少年の精子を懸けた戦いは続く……。



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