第171話 作戦開始



◇◆◇



サイファスの発言通り、その後小一時間ほどして、アラニグラ、カル達、サイファスは、トロールの大群を目視で確認していた。

そこは、“大地の裂け目フォッサマグナ”内の森と森の境目、サイファスら現地住民は『フラッハ平原』と呼んでいた場所だった。


幸いな事に、アラニグラらがトロール達に気付き、すぐに身を潜めたので、今のところ、トロール達はアラニグラらに気付いた様子はなかった。

まぁ、サイファス曰く、トロール達はかなり嗅覚が敏感らしいのだが、アラニグラ達には幸いな事に、トロール達の目の前にうず高く積まれた野生動物や魔獣やモンスターの亡骸、トロール達にとっては餌、に夢中だった為にそれも上手く機能していない様だった。


(幸運だったな。ヤツらは、今のところこちらに気付いた素振りはないぞ。これならば、こちらから先制攻撃を仕掛ける事が出来るだろう。)

(っつか、案外近くで見ると、想像以上にデケぇもんだな・・・。)

(おや、アラニグラ殿はトロールを見たのは初めてかな?)

(あ、ああ。まぁ、一応な。噂ぐらいは聞いていたんだがな・・・。)


トロール達に気付かれない様に、ヒソヒソと小声でそんな会話を交わすサイファスとアラニグラ。


(ふむ。まぁ、それも珍しくはないだろうな。トロールは、基本食糧の豊富な森の奥地に生息する事が主だ。冒険者とは言えど、今まで遭遇した事がない者達も多いだろうな。そもそもトロールは、個体数としてはそう多い種でもないからな。)

(そ、そうなんだよ。)


アラニグラは、サイファスの疑問に一瞬“マズッたかな?”、と思ったのだが、続くサイファスの言葉にホッと胸を撫で下ろした。


『TLW』にも、割とポピュラーなモンスターであるトロールは存在したし、アラニグラも何度となく戦っている。

だが、リアリティーのある世界観とは言え、『TLW』はあくまでゲームであるし、今目の前にいるトロール達は、アラニグラが知っている『TLW』のモンスターであるトロールとは、その大きさが異なっていた。


トロール達の体長は、もちろん個体によってまちまちではあったが、おおよそ5mといったところだ。

これは、向こうの世界地球の今現在の陸上最大生物であると言われているゾウと、ほぼ同じか少し小さいくらいの大きさである。

なおかつそんな生物が、二足歩行で歩いているのである。

アラニグラがこれまで生きてきた中で、当然ながら、そんな生物に遭遇した事は初めてであった。


だが、内心その大きさにビビっていたアラニグラではあったが、不思議と恐怖感は感じていなかった。

もちろん、アラニグラが“レベル500カンスト”の強さを誇ってはいても、以前にも言及した通り、その巨体から繰り出される怪力をマトモに受ければ致命傷は避けられない。

それでも、恐怖感を感じなかったのは、アラニグラにとっては、その程度では脅威に成り得なかったからである。


(うおぉっー!ま、マジでデケぇっ・・・!)

(あ、あんなのとうってのかっ!?)


むしろ、そのトロールの大きさにビビっていたのはカル達の方だった。

思わず大声を出しそうになりながらも、慌てて手で口を塞ぎ、どうにか小声でそんな弱腰な意見を今更言い出す始末である。


(落ち着け、カル、ルーク。確かにトロールは脅威だが、近付かなければ良いだけの話だ。)

(そうだな。まぁ、ここはセオリーに則って、遠距離から攻撃するのが無難だろう。本来ならば、それだけだとジリ貧になってしまうんだが・・・。)

(俺らには、アラニグラさんがついてるからな。俺らが攪乱かくらんしている間に、アラニグラさんが始末をつけてくれるさ。)

(そっかっ!そうだよなっ!?)

(確かに、アラニグラさんの魔法なら一撃だぜっ!!)


それに、レヴァンとレイ、ジョージが努めて冷静な意見を返してカルとルークを落ち着かせた。


(おや、アラニグラ殿は魔法を扱えるのか?)

(ああ、まぁな。もっとも、俺の魔法は少々だがね。)

(ふむ・・・。)


そんなカル達の言葉が聞こえたのか、サイファスはアラニグラにそう確認して、しばし思案顔をした。

その後、ややあって言葉を続けた。


(本来ならば、それは非常に心強い事なのだが、今回については魔法の使用は控えた方が良いだろうな。)

(な、なんでっすかっ!?)


サイファスがそんな提案をすると、戸惑った様な表情でカルがサイファスにそう疑問を呈した。


(俺も、魔法については聞いた事しかないのだが、魔法それが非常に強力である事は知っている。故に、本来ならばトロール討伐に魔法それが大きく貢献する事となるだろうが、しかし、それも場所を選ぶと聞く。アラニグラ殿がどの様な魔法を使われるかは知らないが、ヤツらが今いる場所が平原とは言え、周囲は森に囲まれた地形だ。故に、下手に強力な魔法を使ってしまった結果、自然破壊は、まぁ、この際脇に置いておくとしても、いや、“大地の裂け目フォッサマグナ”に住む者としてはもちろん止めて貰いたいが、そうでなくともその影響を受けてしまう事になる。)

((あっ・・・!))

(・・・確かに。)

(それ故に、仮にアラニグラ殿の魔法がトロールのみに影響を与える魔法でない限り、その使用を控えて貰いたいのだ。)


以前から言及しているが、この世界アクエラの魔法技術はあくまで物理現象であるから、ゲームなんかとは異なり、その影響はモロに味方にも及んでしまう。

仮にこの場で火系の魔法を使ったとしたら、下手したら周りの森に燃え移ってしまい、大規模な森林火災を誘発してしまう恐れがある。

そうなれば当然、アラニグラ達もその熱波や高熱、煙に巻かれて、下手したら命を落とす事もありうる。

また、その他、水系、風系、地系の魔法でも、大規模な水害や土砂災害、木々をなぎ倒してしまうなどの足場や地形の変化によって、逃げ場所をなくしてしまう恐れもあるのである。


トロールと刺し違える覚悟で一か八かそれをするならばともかく、そうでなければ自分達の身の安全はしっかりと確保しておくべきだろう。

その事を、サイファスは指摘していた訳である。


もっとも、アラニグラの使う魔法の中には、指向性の高い魔法もあるので、その問題点を解決する事も可能ではあったが、それを十全に操れるかと言われれば疑問が残る。

何せ、アラニグラが扱う魔法は、アラニグラが研鑽を積んで手に入れたチカラではないので、彼には魔法の制御に関する知識がないのである。

故に、アラニグラはただ単純にぶっぱなすだけならばともかく、魔法のに関してはあまり自信が持てずにいたのであった。


(OK、理解したよ、サイファスさん。の魔法は控えた方が良さそうだな。)


アラニグラも、その点は自覚していたので、サイファスの発言を素直に受け入れた。


(だが、自分で言っておいて何だが、そうなると戦力が大幅に落ちる事となる訳だが・・・。)


サイファスは、アラニグラが理解を示した事にコクリと頷きながら、新たに生じた問題点をどうするか思考していた。


確かに、アラニグラの『TLW』時の最終的な職業は『暗黒魔道士ダークウィザード』であり、主に魔法攻撃をメインのダメージソースとする『魔法アタッカー』タイプであったし、この世界アクエラにおける“魔法使い”や“魔術師”も、後方から強力なチカラによって、敵対する相手を殲滅する役割を担っている。

だが、その反面、物理攻撃力や物理防御力に劣っており、つまりは“力”や“耐久”のステイタスが低いのが一般的であり、魔法という攻撃手段を制限された中では、『魔法アタッカー』タイプは言わばパーティーのお荷物になってしまうのである。

サイファスは、その点を懸念していたのである。


(いや、それでも問題ありませんよ。アラニグラさんに我々の常識は通用しません。彼は、戦士としても一流の使い手なのですよ、サイファスさん。)

(なっ・・・!?そ、それは本当かっ!!??)

(あ、ああ、まぁな。もちろん、本職には敵わないんだけど・・・。)

(いえいえ、ご謙遜を。それでも俺達よりかは遥かに強いじゃないですか。)

(な、なんとっ・・・!!!)


しかし、続くレヴァンの発言に、今度はサイファスが大声を挙げそうになって、慌てて口を塞いだ。

それもその筈、多くのゲームと同様にこの世界アクエラの常識では、“魔法使い”や“魔術師”は、先程述べた通り、物理攻撃力や物理防御力は非常に低いのである。

故に、所謂『タンク』役である戦士、剣士、重戦士などが前衛で物理攻撃や防御、回避などで相手を引き付けている隙に、強力な魔法によって相手を殲滅するのが一般的なセオリーなのである。

逆を返すと、魔法が使えない“魔法使い”や“魔術師”は、攻撃手段もなく、防御力にも劣る為、先程述べた通り完全にパーティーのお荷物になってしまうのだ。


だが、どんな事にも例外があるもので、アキトなんかは物理も魔法も一流どころか超一流である、もはや訳の分からない存在ではあるが、そうでなくとも、『血の盟約ブラッドコンパクト』のメンバー(ニルなど)にも見られる様に、“魔法使い”でありながらも、戦士としても一流の腕も持っている者達も確かに存在したりするのである。

もっとも、そうなる為には、長い年月を掛けた技術の研鑽とバランスの取れたレベリングが必要となってくるので、当然ながらその数は極めて少ない。


一方のアラニグラは、そうしたこの世界アクエラのルールとは異なり、この世界アクエラに飛ばされた時点で、“レベル500カンスト”を果たしており、なおかつ『TLW』時の魔法やスキルなどを使用出来るという異能力によって、そうした常識から逸脱した存在なのである。

もっとも、アラニグラの発言通り、同じ条件でこちらの世界アクエラに飛ばされた仲間達のタリスマンやアーロスといった純粋な『タンク』役や『物理アタッカー』タイプの本職にはステイタス上ではやはり劣るのだが、それでも、この世界アクエラのS級冒険者以上の物理攻撃力や頑強タフさを有しているのである。

実際に、アラニグラは『テポルヴァ事変』の折に、魔法を用いない物理攻撃のみで、カウコネス人の戦士達を葬り去る芸当をやってのけている。


(し、しかし、それが事実ならば、話は良い方に変わってくるな・・・。では、アラニグラ殿以外のアンタらの普段の役割を聞いておきたい。)


しばし驚いた表情を浮かべていたサイファスは、その後すぐに気を取り直して、即席のプランを練り直していた。


事前の打ち合わせが重要なのは今更議論するまでもないが、アラニグラとカル達のみだった場合は、もはやパーティーとしての歴も長いので、その場でアドリブで対応する事が出来るが、ここにイレギュラーであるサイファスがいるとなると、話は少々変わってくる。

先程の別働隊云々ではないが、連携が上手くいかないと、戦力の大幅ダウンならまだマシだが、お互いに足を引っ張りあってしまって、普段の実力を発揮出来ぬまま部隊が壊滅する事も有り得るからだ。

スポーツなんかにおいても、特にチームスポーツにおいては、チームメイトの力量や癖なんかを把握しておく事がしばしばある。

当然ながら、それ故に即席のチームよりも長くチームを組んでいた方がより有利である事は言うまでもないだろう。


だが、特に冒険者の間では時に別チーム(パーティー)の者達と組まなければならない事も往々にしてある。

普段チーム(パーティー)を組んでいる者達とはぐれたり、あるいは壊滅したりなどのイレギュラーな事態や、他のチーム(パーティー)と合同で依頼をこなすなどの例だ。

そうした場合は、先程述べた通り、そのチーム(パーティー)がそれなりに交流のあるチーム(パーティー)ならばともかく、普通は連携は期待出来ないので、お互いに干渉しない様に行動するのがもっともベターだ。

だが、少なくとも、お互いの戦闘スタイルや何が出来て、何が出来ないのかの情報をお互いにある程度把握しておけば、お互いの役割を割り振る事もある程度は可能なのである。


(元々俺達は、アラニグラさんとは別のパーティーだったんですけど、その時はカル、ルークが前衛、俺(レヴァン)が中衛(遊撃)、レイとジョージが後衛を務めていました。とは言え、俺達は魔法を扱えないので、剣や弓矢による物理攻撃専門でありましたがね。アラニグラさんが加入してからも、一応そのスタイルは健在だったんですけど、アラニグラさんが前衛も中衛(遊撃)も後衛もこなせるので、ほとんどアラニグラさんだけで終わってしまっていましたが。)

(ふむ、なるほどな。まぁ、一般的なパーティーと言えるだろう。ならば、今回も基本はその構成で良いだろうな。まぁ、アラニグラ殿を中心に多少配置の転換は必要かもしれないが。)

(そうですね。)


その後、魔法を制限されたアラニグラが先陣を切る形で、カルとルークがその後に、後はレヴァンが中衛(遊撃)、レイとジョージが後衛というフォーメーションが決まった。


(ところで、サイファスさんはどうするんだ?)


そのフォーメーションの中に、サイファスがいない事をアラニグラは疑問に思った。


(いきなりアンタらの中に俺が入ったら、連携に問題が生じてしまう可能性がある。故に、俺は単独で行動する事にするよ。もちろん、安全を考慮して一撃離脱の戦法を採用するつもりだ。これならば、ヤツらの注意をこちらにも引き付ける事が可能だろう?)

(ふむ・・・。)


息の合わない連携は、先程述べた通り、むしろお互いの足を引っ張る事がある。

故に、サイファスは単独での行動を主張し、若干アラニグラはその事に不安があったものの、自信満々のサイファスの様子や、“大地の裂け目フォッサマグナ”に入ってからのサイファスの機動力を目の当たりにしていただけに、これが一番ベターだと納得した。


(OK、サイファスさん。だが、あくまで攪乱かくらんに徹してくれよ?無理して深追いする事だけは止めてくれ。)

(フッ、もちろんだとも。)


アラニグラのお節介が通じたのか、ニヤリと笑いながらサイファスはコクリと頷いた。


(じゃ、始めますか。)



◇◆◇



トロール達の総数は、おおよそ数十体といったところだった。

大群と呼ぶには若干大袈裟な様な感じもあるが、以前にアキトらも言及していた通り、魔獣やモンスターの討伐には、それら一体につき、10倍の戦力、つまり10人が必要となると言われている。

実際、旧・ルダ村を襲った『パンデミックモンスター災害』時は、おおよそ1000体を越える魔獣やモンスターが出現して暴れまわっており、そのセオリーからダールトンやドロテオは、それらを食い止める為には一万人規模の兵力が必要であるとしていた。


もっとも、それはあくまで理想的な数字であって、実際にはそうした兵力を集める事が難しい事も往々にしてある。

旧・ルダ村を襲った『パンデミックモンスター災害』時は、旧・ルダ村の人口が五~六千人ほどしか存在せず、なおかつその中で戦える者達となると更に人数は制限される。

その事から、いかに旧・ルダ村を襲った『パンデミックモンスター災害』が絶望的な事態かが察する事が出来るだろう。


そうでなくとも、冒険者の場合、報酬の兼ね合いから、人数を制限する事が往々にしてある。

人数が多ければ多いほど、より安全な活動は可能になるが、そうなると一人一人の取り分は少なくなってしまうし、数を減らせば減らすほど、一人一人の取り分は多くなるが、当然安全性は下がってしまうのだ。

そこら辺のバランスは難しく、なおかつ、1体につき10人というのは、あくまで試算であって、一般人よりも遥かに高いレベルを持ち、パーティーの練度や連携が高いレベルで構築されている冒険者間では、1体につき、一人、ないしは二人で事足りる事も往々にしてあるので、そこら辺も一概には言えないのであるが。


更には、一言に魔獣やモンスターと言っても、その種類によってはその危険度や脅威の度合いが違う。

比較的弱い種類もいるし、逆に1体だけでとてつもない強さを持つ種類も存在する。


そしてトロールは、その巨体と怪力、驚異的な再生能力から、冒険者ギルドが設定している危険度や脅威度と呼ばれる一種の指標では、かなり高い位置に置かれていたのである。

故に、数十体とは言えど全然少ないなんて事はなく、むしろカランの街くらいの集落ならば、余裕で壊滅に追い込めるほどの戦力なのであった。

だが・・・。


ヒュンッヒュンッヒュンッ!!!


フラッハ平原でプチ宴状態で餌に食らい付いていたトロール目掛けて、突然無数の矢が打ち込まれる。


「「「「「ウガッ!?」」」」」


それは、数体のトロールに命中するが、その程度のダメージではトロールにとっては致命傷どころか足止めにもならない。

彼らの楽しい時間を奪った外敵に、瞬時にトロール達も異変を察してドデカイ棍棒を構える。

そして、辺りをキョロキョロと眺めるトロール達だったが、そこには敵影は見当たらなかった。

どうやら敵は、平原に出てくる事はなく、あくまで森の中に身を潜めて遠距離攻撃に徹するつもりの様だ。


ならばと、トロール達は弓矢を打ち込まれた辺りに進行して、敵をなぎ払うまでである。

その巨体に見合って、自重が重い事によるものなのか、動きはかなり緩慢ではあるものの、逆に巨体故に、その一歩一歩は恐ろしく大きい。

もちろん、弓矢を仕掛けたのはカル達であり、彼らの役割はアラニグラのフォローと攪乱かくらんであるから、すぐにその位置を移動するが、通常ならばこの戦法は、手傷を負わせて体力を奪えたり、あるいは失血死などによってその数を減らせる有効な戦術なのだが、残念ながら驚異の再生能力を有するトロールにはあまり効果はなかった。


逆に、先程レイが言及していた通り、相手に有効打を与えられずにいたずらに矢のストックを失い続けるだけであり、このままならばジリ貧なのである。

・・・そう、このままならば。


「さ、いくぜ、デカブツ共っ!!!」

「「「「「ウガッ!!!???」」」」」


しかし、カル達には、アラニグラというとんでもない存在が仲間にいる。

いつの間にか、トロールの前に姿を現した(トロール達からしたら)小柄な男がそう呟くのを聞き、トロール達は怪訝そうな表情をしながらも、その男目掛けて棍棒を振り下ろした。


ドゴォーーーンッ!!!!


単純な棍棒の振り下ろしである。

そこには何の技術も知性を感じられないが、しかしその威力はバカには出来ない。

まるでミサイルの着弾の如く、その一撃で地面が抉れてしまったからである。

なるほど、そのトロールの怪力から繰り出される一撃を食らってしまえば、いくら強いと言えど、人など即死してしまうほどの威力である。


だが、それも当たれば、ではあるが。


「「「「「ギャギャギャギャッ!!!!」」」」」


何が面白いのか、人にとっては不快な声を上げながら愉快そうに笑うトロール達。

今見えた人影が、ペシャンコになったのが彼らにとっては面白くて仕方なかったのかもしれない。


「何してんだ、お前ら?っつか、自分の攻撃で自分の視界を奪うとか、意味分かんねぇ~ぞ?」


しかし、当然ながらアラニグラはその攻撃をさっさと躱していた。


「「「「ウガッ!?」」」」

「ギャアァァァァッーーー!!!」

「「「「ウガッ!?」」」」


いや、それどころか、その隙にトロールの一体の首を刈り取る早業を見せるほどだ。

流石のトロールの再生能力とは言え、首と胴体が切り離されてしまえば、絶命するしかなかった。


「「「「グルルルッ!!!」」」」


仲間の死を理解したのか、トロール達は憤怒の表情と声色を浮かべながら、アラニグラを見やる。

どうやら、不意打ちはもう出来ない様だ。


だが、例えトロール達が本気になったとは言えど、アラニグラにとっては何ら脅威ではなかった。

ブンブンとドデカイ棍棒を振り回すトロールの軍団の合間を縫って、アラニグラは素早く、そして確実に彼らを葬っていったのだったーーー。


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