第81話 フリーダムなのは養母譲り



◇◆◇



みなさん、ご無沙汰しております。

アキト・ストレリチアです。

先日、僕もいよいよ『限界突破』を果たしまして、どうやら『神性』の端くれの仲間入りを果たした様なのですよ・・・、大変不本意ではあるのですがね。

別に騙されたとは思いませんけど、どうやら『限界突破』の『試練』とは、『神』に至る一種の『登竜門』だったみたいです。

まぁ、向こうの世界地球における『神話』や『伝承』などにおいても、『英雄』と呼ばれる存在が、人の身から、最終的には『神』に至る話も結構ありますから、今更僕も驚きやしませんけど、ますます僕の第二の人生は大変な状況になったのは実感しております。

ホント、ドウシテコウナッタ・・・。(orz)

ま、まぁ、実際に『神』に成ると言う事ではないので、これに関しては一旦忘れておきましょう。

主に、僕の心の平穏の為に・・・。


さて、以前から言及していますが、この世界アクエラはかなり厳しい『世界』であり、『冒険者』・『旅商人』、あるいはフロレンツ候の例にもある様に、ある日突然、特にドラマチックな展開もなく、実にアッサリこの世界アクエラから姿を消す、なんて事が往々にしてあります。

まぁ、それに関しては向こう地球でも同じ事ですけどね。

実際、僕の『前世』も、実にアッサリ終わりを迎えましたからねぇ~。

『マンガ』・『ゲーム』・『アニメ』・『ドラマ』の様な、家族に看取られながら、あるいは仲間に看取られながら迎える『最期』などと言うモノは、世間でも極稀である、と言う事ですね。


それと同じ様に、アルメリア様も、実にアッサリ姿

僕らが『ノーレン山』から帰還した時には、『シュプール』に彼女の姿は影も形もありませんでしたから。

まぁ、元々、僕らは彼女の“事情”を知っていたので、もっとも、彼女の発言ではもう少し保つ、みたいなニュアンスでしたが、こればかりは仕方ありませんね。

残念だとは思いつつも、それよりも、これからの事で手一杯であった、と言うのが正直なところでした。


アルメリア様がいなくなった影響で、彼女が施していた『領域干渉』も解除され、長らく使用していた『シュプール』も、僕らはともかく、僕らの『協力者』であるリオネリアさん、フィオレッタさんに取っては『安全地帯』ではなくなりました。

まぁ、彼女達に関しては、アルメリア様が姿を消す前に『ルダの街』に避難させていたので特に問題はなかったのですが、そうした“事情”もあって、帰還した僕らは『拠点』の変更を余儀なくされたのでした。


まぁ、これに関しては元々ある程度話し合っていましたが、フロレンツ候が『処刑』された事で、『ロマリア王国』の情勢も一気に変わりました。

『リベラシオン同盟』と『ノヴェール家』(と言うか、ティーネ達『エルフ族』)を介して、『ロマリア王国』と『エルフ族の国』との、まだ非公式ながらも本格的な『外交交渉』が始まったからです。


当然ながら、ある程度『方向性』が固まるまでは、『仲介役』として、『リベラシオン同盟』と『ノヴェール家』(と言うか、ティーネ達『エルフ族』)の『同席』は必須であり、その関係で、僕らの新しい『拠点』を王都『ヘドス』とする事は規定路線となりました。

『エルフ族の国』の『使節団』を受け入れる『拠点』が必要ですからね。

『リベラシオン同盟』や『ノヴェール家』を信頼していない訳ではありませんが、“事情”が“事情”だけに、『使節団』を彼らに預ける訳にもいきません。

まだまだ『信頼関係』の構築を模索している段階ですから、『歴史的』にも『エルフ族』側も、『ロマリア王国』側の『人間』を心の底から信頼出来ないでしょうからね。

その点、『同胞』であるティーネ達のいる場所なら安心でしょう。

場合によっては、その『拠点』を、そのまま『大使館』にしてもらっても良いのですが、まぁ、そこら辺は今後の『交渉』次第ですね。


そんな折り、『ハレシオン大陸この大陸』を駆け巡る、一大事件の『情報』が舞い込みました。

それが、『テポルヴァ事変』でした。


この世界アクエラの大半の人々にとっては、それは『政治事変』であり、それを即座に鎮圧して、『カウコネス人』達を実質的に支配下に置いた『ロンベルダム帝国』と、その周辺諸国の『力関係』や『勢力図』が大きく変わった事を意味すると思います。

もちろん、これは非常に重要な事案で、さとい者なら、『ハレシオン大陸この大陸』の情勢が少しずつ緊迫してきた事を悟る事でしょう。

しかし、僕らにとっては、それよりも聞き逃せない『情報』が耳に入って来ました。

そう、『神の代行者アバター』の『噂』が・・・。


』。

その『単語』を聞いて、僕はすぐに悟りました。

』達が本格的に動き始めたのだ、と。


“事情”を知っている僕らとしては、『地球人』達彼らが表立って動き始めた事は、もはやのんびりと構えている状況ではなくなりました。

もちろん、正面切って『地球人』達彼らと今すぐ対決する、と言う訳ではありませんが、同時進行で、様々な事を行う必要性が出た事は事実です。

レベル500カンスト”である『地球人』達彼らに対抗出来るのは残念ながら、現状僕らだけですし、『地球人』達彼らと『至高神ハイドラス』の『縁』をどうにか出来るのは、僕とセレウス様だけですからね。


それ故、『ロマリア王国』と『エルフ族の国』の『外交交渉』と平行して、『トロニア共和国』と『ヒーバラエウス公国』との『関係』の『下地作り』の為に、僕らも何組かに分けて独自に動く事としたのです。

もっとも、『トロニア共和国』に関しては、『リベラシオン同盟』の活動を通して、『エルフ族』以外の『他種族』の受け入れを行ってもらっていた経緯もあり、ある程度の“繋がり”はすでに出来ていました。

それ故、『ロマリア王国』と『エルフ族の国』との『外交交渉』がおおやけに本格化し、進捗すれば、『ロマリア王国』と『トロニア共和国』との『国交回復』も、比較的早期に実現が可能となるでしょう。


問題なのは、『ヒーバラエウス公国』の方です。

こちらは、『歴史的』にも、『ロマリア王家』と『ヒーバラエウス大公家』との確執が根深い問題として残っていますし、より切迫した問題としての『食糧問題』も抱えていますので、それをどうにかしない事には、マトモな『外交交渉』など不可能です。

単純な話、自分達が食べるのにも必死なのに、「ちょっと『力』貸してくれよ。」、「そんな余裕なんかねぇ~よっ!!!」、ってのが『本音』でしょうからね。


しかし、『ロンベルダム帝国』に対抗、あるいはある程度の『抑止力』とする為には、まずは『隣国』である『トロニア共和国』・『ヒーバラエウス公国』(と、『エルフ族の国』や『鬼人族』の『部族連合』)との協力は必要不可欠であり、そこの“足並み”が揃わないのは、正直不安要素でしかありません。

ならば、単純な話、『ヒーバラエウス公国』のその『食糧問題』を解決してしまえば良いのです。


もちろん、僕一人だけなら不可能な話だったのですが、頼れる仲間達を得て、『限界突破』を果たし、『竜語魔法ドラゴンロアー』すら体得し、セレウス様の助力も得られた今の僕なら何とかなると思います。

それに、ヴィアーナさんを介して『魔術師ギルド』とも『技術提携』をしていますから、試験的に『冷蔵技術』を導入する事も可能でしょう。

『食糧問題』をどうにかする、と言っても、『開拓』やらはどうにか出来ても、肝心の農作物はすぐには育ちませんからね。


それと、これは僕としては一番重要な理由であり、また、『ロンベルダム帝国』、『ライアド教・ハイドラス派』や『地球人』達との争いの上での『キーワード』になってくる『古代魔道文明』に関する『遺跡類』が、『ヒーバラエウス公国』には多数発見されているそうですから、僕としては行かない理由がありません。


そんな訳もあり、何だかんだで意外と僕としては初めてのこの世界アクエラでの『ヒーバラエウス公国外国』訪問は、こうして実現したと言う訳でした。

まぁ、ある程度は予測していましたが、『ヒーバラエウス公国ここ』でも、面倒くさい『政治闘争』やら『謀略』・『策略』などの『政治問題』に巻き込まれる事となった訳ですけどねぇ~・・・。



◇◆◇



「バッ、バカなっ!!??ありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないっ・・・!」


目の前で高級そうな身形をした、おそらく『ヒーバラエウス公国』の『貴族』だろうオッサンを拘束した僕達。

彼は何だかよく分からない事をブツブツと呟きながら、頭を抱えて震えていた。

いや、別にそんなにビビらんでも、取って食いやしませんけど。

まぁ、そんな彼の周囲には、彼の部下だろう連中が転がっているから、怯えるのも無理はないんだけどさ。

何か『悪者』だったみたいだから、とりあえず無力化しておいたのだ。

まぁ、詳しい“事情”は知らんけども、こんな人気のない場所で女性達を襲っていた以上、どちらにせよ、『善良』な連中ではない事は間違いないからな。

ま、一応手加減はしておいたけど、骨の1、2本くらいはイっていても文句言わないよーに。

それに、ここに来るまでにも、変な連中がここら辺をうろついていたからなぁ。(もちろん、そちらも掃除済みである)

何だか、厄介事に首を突っ込んだ気がしないでもないが、ま、それも今更である。

僕らは、そうした事には、すっかり慣れきっているからね。


「うぅ~む。最近の若いヤツらはなってねぇ~なぁ。俺とマトモに戦り合う事も出来んとはっ!」

「いやいや、セレウス様。貴方とマトモに戦り合ってもらっても、僕としては困るんすけど。少なくとも、『伝説』クラスの『使い手』が、そこら辺にゴロゴロしているって事になりますからねぇ~。」

「いや、それもそうなんだが、どうも歯応えがなくていかんのだっ!!最近常々感じていたのだが、昔に比べ、『レベル』に対して『技術』が低いと言うか何と言うか・・・。これも時代の変化、と言う事だろうかねぇ~?」

「ふむ。面白い見解ですね。“レベリング”の『画一化』の弊害、でしょうか?言うなれば『教育問題』の一種かもしれませんね。」

「ほう、それはあるかもしれんな。全体としてのレベルは上がっている様だが、突出した者達が出にくい環境になってるのかもしれんなぁ。『日本』の『教育』においても問題視されていた点だな。」

「まぁ、“管理する側”としては、突出したレベルの『天才』よりも、ある程度のレベルの『秀才』の方が使い勝手が良いですからねぇ~。」

「うぅ~む。それも良し悪しなんだけどなぁ~。まぁ、お前の周囲の様に、活きの良いのもいるし、“平和”ならば“戦う術”など必要ない、と言う考え方も分からんではないけどな。ま、もっとも、残念ながら俺も長く存在しているが、そんな“平和モン”を見た事はなかったがな。」

「うぅ~ん。僕も、今考えてみれば日本もそれほど“平和”ではなかった様な気がしますよ。まぁ、“治安が良かった”と言う事までは否定しませんけど、そこら辺の意識も、環境によって変わるのかもしれませんよ?実際僕も、地球時代には“戦う術”など身に付けていませんでしたからね。」

「ふむ、確かに。しかし、“戦う術”と言うから分かりにくいのだろう。“生き抜く術”と置き換えれば、それは絶対に必要な事だと思わんか?実際お前も、その“術”を地球時代にも身に付けていたではないか。当然、己の『人生』を『他者』が勝手切り開いてくれる訳ではないからな。」

「あぁ~、なるほど。つまり、ある程度の“何か”を修めたら、後は勝手に『人生』が決まるとって事ですか?かつての日本の『学歴社会』と同じですね。それ故に、『思考停止』に陥ってしまい、突発的な出来事に対処出来ない、と。」

「そうそう。基本的に『戦い』も『人生』も同じだ。決まった事が起こる、なんて事は普通に考えればありえないから事だからなぁ~。自分が持ってるモンで、如何いかに目の前の事に対処するか。柔軟な『思考』や『応用力』が欠落してる、って事だな。それ故、想定外の事態が起こると何も出来なくなるのさ。」

「ふぅ~む、なるほど。」

「あのぉ~、アキトぉ~、セレウス様ぁ~。」

「「んっ??」」

「彼女達も困っている様なので、とりあえずお話を聞きませんか?」

「一応、ここ“修羅場”だからね?まぁ、ボクらにとっては、すでに何て事はない状況だけどさ。」


アイシャさん、ティーネ、リサさんが、呆れた様に僕とセレウス様を見る。

その横には、戸惑った様な表情の保護した3人の女性もいる。


「おおっ!?すまんすまん。」

「ついつい議論が白熱しちゃいましたね。」


そう言って、僕とセレウス様は、下敷きにしていた連中の上から退くのだったーーー。(無慈悲)



◇◆◇



あっという間の出来事でしたーーー。

わたくしの慢心が招いたわたくしの『暗殺計画』。

おそらく、モルゴナガル卿も、慎重に慎重を重ね、幾重にも『保険』を掛けていた事でしょう。

実際、わたくし達の『生命いのち』は風前の灯でした。

それは、おそらく『冒険者』だろう、この方達が介入したとて、たかだか数名程度で覆されるモノではなかった筈です。


ところが。

蓋を開けてみれば、圧倒的でした。

一応、『大公家』の“第三公女”として、一通りの『学問』をわたくしは修めています。

その中には、“戦う術”としての『武術』や『魔法技術』もありました。

もちろん、『魔法士ウィザードナイト』の『称号』を持つレティシアほどの『力量』は有しておりませんが、そんなわたくしでもこの方達の『強さ』は、次元が違う事は分かります。

それは、『戦い』ですらなかったのですから。


「す、すごいっ・・・!!!」


レティシアがポツリッと呟きました。

それにわたくしは首を傾げ、リリはポカーンッとしておりましたが、彼女には“何か”わたくし達には見えないモノが見えたのかもしれませんね。


わたくしが気が付いた時には、わたくしから見ても美しい3人の女性がわたくし達を庇う様に前に立っており、積み重なったモルゴナガル卿の配下達、そしてモルゴナガル卿をアッサリ拘束する2人の男性がいました。


一人の方は、わたくしの目の錯覚でしょうか?

少し透けている様に見えますが、長い黒髪を結わえた凛々しい顔立ちをした青年で、不思議と圧倒的な安心感のある力強さを感じさせ、その存在感や雰囲気もあいまって、神々しくすら感じるほどでした。


もう一人の方は、おそらくわたくしより年下であろう少年でした。

しかし、その堂々たる“立ち居振舞い”は、それを感じさせないほどで、その青年と同じく長い髪を結わえ、それも含めてその青年に似た雰囲気の持ち主でしたが、こちらは、もちろんその年頃特有のモノでしょうが、男性とも女性とも言い難い中性的な顔立ちをした美しい少年でした。

全てを包み込む様な優しさを感じさせ、一方で、全てを魅了する様な妖しさも持ち合わせている様にも感じます。


あっという間に状況をひっくり返したその方々は、呆気にとられたわたくし達を余所に、何やら『世間話』を繰り広げておりました。

もちろん、その“内容”が全て耳に入ってきた訳ではありませんが、かなり専門的なお話の様でした、が、今“この場”でする事でもありませんでした。

何とも反応に困っていると、見かねた女性達が男性達に声を掛けられました。


「あのぉ~、アキトぉ~、セレウス様ぁ~。」

「「んっ??」」

「彼女達も困っている様なので、とりあえずお話を聞きませんか?」

「一応、ここ“修羅場”だからね?まぁ、ボクらにとっては、すでに何て事はない状況だけどさ。」

「おおっ!?すまんすまん。」

「ついつい議論が白熱しちゃいましたね。」


ポリポリと頭を掻きながら、ブツブツと放心状態のモルゴナガル卿を引き連れて、お2人はわたくし達の目の前まで


「お怪我はありませんか?」

「ええ、ありがとうございました。おかげで命拾いしましたわ。レティシア、下がって良いわ。」

「ハッ!」


少年が代表してわたくしに話し掛けられました。

立ち位置や状況から、その少年がこのパーティーのリーダーなのでしょう。

年齢的な問題で、少し不思議な感じはしましたが、わたくしには分からない“事情”があるのでしょう。

それに、彼のお仲間達は、その事に特に違和感を感じていない様なので、これはおそらく確定でしょう。

わたくしは、一応警戒してわたくしとリリの前に立ちはだかっていたレティシアを後ろに下げさせました。

もちろん、彼女の本来の『主人』はリリ、引いては『グーディメル家』ですから、わたくしが彼女に対する『命令権』を有している訳ではありませんが、便宜上、この“場”で代表を務めるのは『公女』たるわたくしの『役目』ですからね。

レティシアも、それは分かっているので、即座に対応してくれました。

出来た『魔法士ウィザードナイト』です。

リリが羨ましいわ。


わたくしは『ヒーバラエウス公国』の“第三公女”、ディアーナ・ヒーバラエウスです。改めまして、この度は危ない所をお助け頂きまして、まことに有り難う御座いました。」


そのわたくしの言葉に、リリとレティシアが息を飲み込んだ音がわたくしの耳にも伝わりました。

もちろん、わたくしも自分が『ヒーバラエウス公国この国』の『要人』である事は自覚しております。

とは言え、命の恩人に対して自分の『正体』を明かさないのは失礼と感じ、あえて本当の事を伝えました。

直感的に、この方々なら、少なくとも悪い様にはされないと感じていましたし、嫌らしい話、その事を明かす事で、ある種のプレッシャーや緊張感を与え、上手くすればこの方々の庇護を期待出来るかも知れない、との計算もあっての事でした。

残念ながら、モルゴナガル卿の『裏切り』を受けた今現在のわたくしは、『ヒーバラエウス公国この国』においては、非常に微妙な『立場』に立たされてしまった状況です。

ヒーバラエウス公国この国』の者達は、すでにわたくしの『味方』ではないかも知れません。

ならば、一人でも多く信頼出来る方々を『味方』につける事は、わたくしにとっては急務でした。

ですが、その方々は、わたくしの予想を遥かに越えた反応を示しました。


「ほう、公女殿下でしたか。これは、手間が省けたのか何なのか・・・。」

「渡りに船じゃねぇ~か、アキト。」

「今更ながら、アキトの『力』は凄いよねぇ~。」

「本当は、知っていらしたのではないですか、主様あるじさま?」

「頑なに、“まずは『遺跡類』を探索するんだ”って言って聞かなかったモンねぇ~。まぁ、本当に何時ものなんだろーけど。」


特に身構えた様子もなく、緊張感もなく、彼らはごく自然にその『事実』を受け入れた様子でした。

むしろ、「ちょうど良かった」くらいの気安さで。

この方々には、『政治的』な話は通用しないのでしょうか?


「えっと、反応が思っていたのと違うんですけれど、本当にお分かり頂けていますか?わたくしは、『ヒーバラエウス公国この国』の『要人』で、今さっき『ヒーバラエウス公国この国』の『貴族』から命を狙われていた状況なのですが・・・。」

「あ、ハイ。大丈夫です。とんだ災難でしたねぇ~。ですが、ご心配には及びません。微力ながら僕らがお力をお貸ししますから。元々、その予定で『ヒーバラエウス公国この国』に来ましたからねぇ~。」

「「「っ!!!」」」


その少年の言葉に、わたくし達は息を飲みました。

モルゴナガル卿の『企み』を事前に察知していた、と言う事でしょうか?

もしや、『他国』の『間諜スパイ』かも知れません。


「それは、どういう・・・。」

「ああ、もちろん、貴女の『暗殺計画』など知る由もありませんでしたが、『ヒーバラエウス公国この国』の『要人』の方とは、その内接触するつもりだったのですよ。『食糧問題』や『鉱石類』の取引についてや、『ヒーバラエウス公国この国』の特殊な『魔法技術』との『技術提携』を求めて、ね。」


ドキンッ。

わたくしは、その少年の言葉に再び今度は種類の違う緊張感が走りました。

わたくしが夢想していた『理想』。

それが、思わぬ形で向こうからやって来たのですから。


「ああ、申し遅れました。僕は、『リベラシオン同盟』の『独立部隊』にして、『冒険者』パーティー・『アレーテイア』を率いるアキト・ストレリチアと申します。以後お見知りおきを。」


それが、『英雄』、アキト・ストレリチア様との運命の邂逅でしたーーー。



~~~



「アキトさん達遅いっスねぇ~。」


アキトの『心の中』、正確にはアキトの『個人的無意識』と『世界』の『普遍的無意識』の『狭間』にあるアキトの『精神世界』。

そこにあるセレウスの『』に、最近新たなる『』が居座り始めていた。

誰あろう、アルメリア・ストレリチアその人であった。


アキトの『導き手』としての『役割』を終え、正確には、この世界アクエラに顕現していられる『神霊力しんれいりょく』を使い果たし、彼らの前から姿を消したのではあるが、とは言え、自立型スタンドアローンの『生体端末』とは言え、『分霊わけみたま』であるアルメリアは、『一級管理神アルメリア』とはの部分ではがあった。

それ故、『物質界』からそのが消えたとしても、別にそのが消えた訳ではないのである。


本来は、そのまま『一級管理神アルメリア』のもとに還る筈だったのだが、アキトが『限界突破』を果たし『神性』の端くれに仲間入りを果たした事によって、彼の『魂の器たましいのうつわ』も大きくなり、彼の『心の中』に(勝手に)宿事に成功していた。


一応、『名目建前』としては、これからのアキトの『精神修養』と、セレウスの『神霊力しんれいりょく』を取り戻す為の『サポート役』なのだが、『本音』は、また別の所にあった。


「あっ!!!なかなかつうっスねぇ~、セレウス様ぁ~。初代『プリンセ〇メーカー』とは・・・。ワタシ的には『2』を推したいところですが、初代も良いっスよねぇ~。まぁ、アキトさんもある意味『育成シミュレーションゲーム』要素がありましたが、やはり『娘』は良いモノっス。お二人がまで、久々に遊び倒すとするっスかねぇ~。」


勝手にセレウスの『私物』を漁り、あまつさえ勝手に自分の『私室』までし、オタクライフを満喫するアルメリア。

以前にも言及したが、『神様』と呼ばれるは理不尽かつ自分勝手マイペースで、道理が通用しないモノなのである。

まして、『役割』から解放されて、もちろん『制約』はあるものの、今現在のアルメリアは絶賛フリーダム中なのである(まぁ、今更ではあるのだが)。


セレウスはすでにアルメリアのに気付き、黙認していたが、当の『宿主』であるアキトがアルメリアのに気付くのは、もう少し後の話であったーーー。


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