第48話 『伝道師』の誤算 2
◇◆◇
「そ、そんなバカなっ!?父上がそんな事をする筈が・・・!?」
「・・・これに関しては『
『リベラシオン同盟』から提供された『資料』を示しながら、
『ノヴェール家』と『リベラシオン同盟』が『協力関係』を結ぶ事となった背景として、この問題を避けては通れない。
ジュリアンも、感情では否定しつつも、頭ではこれが『事実』なのだと理解していた。
この葛藤と衝撃は、ジュリアンに施されていた『催眠効果』を吹き飛ばす一助となるのだった。
世間一般に知られているフロレンツの『功績』は、特に『政治』に関わる者としては、称賛に値するモノであろう。
鉱山開拓、特産品の開発・流通に新たな販路の開拓、治水などの『インフラ整備』、『領民』への税収の還元などなど、彼が遺した『功績』は計り知れない。
しかし、当然ながら『人』は完璧ではないから、『偉人』と呼ばれる『人』にも『裏の顔』がある。
(『地球』でも、『神話』から始まり、『伝説』・『伝記』に至るまで様々な『英雄譚』・『偉人伝』があるが、その『功績』ばかり『フューチャー』されて、その『人となり』までは示していない事もままある。
だが、少し調べれば一人の『人間』として見た場合、決して誉められた『人格者』では無い事も往々にしてあるのだ。
浮気癖があり方々で子供を残しているとか、金遣いが荒く、『パトロン』からの『資金援助』を酒・女・博打に注ぎ込み一晩で遣いきるとか、まぁ、『功績』が無ければただのクズなんて事もザラである。
もっとも、意外とそういう所もある種の『人間性』として好意的に受け入れられる面もあるが、結果として後世に様々な『問題』を遺しているケースも多いのであった。)
もちろん、中には素晴らしい『人格者』もいるだろうが、既存の『何か』を変えた者達であるから、そうした既存の『範囲』から逸脱する事もあるのだろうし、遺した『功績』は素晴らしいので、今日まで語り継がれた結果として、何となく『素晴らしい人』だったんだろうなぁと言う『イメージ』に引っ張られるのはある意味仕方の無い事であった。
しかし、大抵の場合は、本当の『
まぁ、それはともかく。
フロレンツの場合はもっと単純で、彼の遺した『功績』も、突き詰めて言ってしまえば全て『自分自身』の為の結果に過ぎず、たまたまそれが他者にも恩恵をもたらすモノだっただけである。
と、言うのも、フロレンツは『大貴族』の『地位』では満足しておらず、その『野望』は『ノヴェール家』が『
ただ、フロレンツも、流石に自分の代でそれが叶うとも思っておらず、『力』を蓄える為に『領地経営』に励み、中央政治で『貴族派閥』の『権力』を増大させ、その『下地』を作っていたのだった。
フロレンツは、ある種の『功名心』と言うか、『承認欲求』とか『自尊心』の大きい男で、『歴史』に名を遺したいと言った『欲求』が強く、しかもタチが悪い事に、それだけの『能力』があった。
『ノヴェール家』としても、『権力』の『簒奪』はともかく、『ノヴェール家』の『発言力』が増大するのは歓迎すべき事態だった事もあり、それを黙認していたのである。
『組織』を運営していくのは、綺麗事だけではなく、常に進化・発展していかねばならない側面があるからだ。
一番不幸なのは、そうした『思惑』に踊らされる『
もっとも、ある意味フロレンツの『操り人形』として育て上げる予定だったジュリアンだったが、その『印象操作』が裏目に出て、
もちろん、所謂フロレンツと『ノヴェール家』の『印象操作』のせめぎ合いもあったのだが、子どもが親の思惑通りに成長するとは限らないと言う結構単純な話でもある。
さて、こうしてジュリアンは理想的な『貴族』、王家に仕え、また王家が暴走・迷走する様ならこれを正し、『市民』を導き、寄り添い、共に生きる、清廉潔白で心優しい『
こうなると面白くないのがフロレンツや『貴族派閥』の老人連中だが、フロレンツはジュリアンの『矯正』をする前に、ニルと『ハイドラス派』に関わった事で歴史の表舞台から姿を消し、フロレンツが消えた事で『貴族派閥』は『ノヴェール家』が『王派閥』に鞍替えしたのではないかと疑心暗鬼になり、以前述べた通りジュリアンに対する風当たりを強くしていった。
しかし、若い世代が前の世代に反発する事はよくある事で、そうした者達の『受け皿』・『旗印』として、ジュリアンと『若手貴族派閥』は台頭していったのである。
もっとも、このジュリアンのフロレンツに対するある種の『盲信』と、『貴族派閥』から受けた『精神的ストレス』をニコラウスに利用され、ジュリアンは『リベラシオン同盟』と、ひいては『ロマリア王国』に混乱をもたらす火種となる可能性もあった。
形は違えど、フロレンツの『操り人形』から、ニコラウスの『操り人形』に姿を変えていたからである。
まぁ、しかし、ニコラウス、あるいは『ハイドラス派』は『
「嘘だ、ウソだ、ウソダ・・・。」
ジュリアンはフロレンツの『裏切り』に混乱し、頭を抱えてブツブツと呟いていた。
ジュリアンにしてみたら、信じていたモノが土台から覆ったのだ。
取り乱すのも無理からぬ事であった。
オレリーヌとライルは、それを痛ましい表情で見ていたが、ふと、オレリーヌは以前アキトから贈られた『アイテム』の存在を思い出した。
「・・・まさかっ!?あの少年はこうなる事を見越してっ!?」
その存在を思い出して、オレリーヌは驚愕の表情を浮かべた。
まぁ、結論から言うと、それは全くの偶然なのだが、アキトの持つ神秘的な容姿、神々しい『
やはり『イメージ』に人は左右されるモノである。
◇◆◇
※『
その『職業柄』、『冒険者ギルド』には常に誰かしら常駐している。
と、言うのも、『緊急事態』はいつ起こるか分からないからである。
『
それは『ギルド長』たるドロテオも例外ではなく、その日は、宿直明けで通常の業務をこなし、業務終了と共に家路に着くのだった。
『冒険者ギルド』の通常業務時間は、前述の『インフラ整備』や『魔獣』・『モンスター』の生態から、日の出から日の入り前であり、これは季節によっても変化するが、雑務を終えてドロテオがギルドを出たのは夕方である。
『
ドゥクサスが襲撃するにあたって、ドロテオが宿直明けだったのは全くの偶然であった。
ギールの決定で襲撃を決行する日が、たまたま今日だっただけである。
それならば、アルファーと同じくドゥクサスも夜間に同時多発的に襲撃をすれば良いのだが、生憎ドゥクサスの得意分野はむしろ所謂『普通』の戦闘の方で、アルファーほど『暗殺術』は得意分野ではなかった。
その為、ドロテオの家に襲撃をすると、高確率で家族に気付かれる恐れがある。
これは、『ターゲット』が『
もちろん、ドゥクサスも高い『隠密技術』や『気配遮断技術』を持っているが、『元・上級冒険者』の『経験値』は侮れない。
『上級冒険者』ともなると、『村』や『街』の外で夜を明かす機会も多くなり、必然的に『危機察知能力』も高くなる。
そうした『環境』で生き残ってきた者は、『直感』も鋭いので、前述の通り『
もちろん、ドゥクサスとしては皆殺しする事に何ら抵抗はないが、『
ギールも言及していた通り、撤退を困難なモノとするからである。
そんな訳で、ドゥクサスは『
「・・・。」
「(・・・。)」
夕暮れ時は、別名『黄昏時』とも言い、「誰そ彼」から来ているそうだ。
「誰そ彼」とは、もう薄暗く目が慣れていない事もあり、近付かないと相手が誰か分からない=「貴方は誰ですか?」と言う意味だ。
つまり、視界が悪くなる事もあり、『
もちろん、夜間の方が全てに置いて都合が良いのは言うまでもないが。
しばらく『尾行』を続けていたドゥクサスだったが、ふとドロテオがどんどん人気のない裏路地に突き進んでいる事に気が付いた。
こりゃ、都合が良いな。
ドゥクサスはそう思った。
もちろん、『
しかし、ドゥクサスとしては都合が良い状況である事には変わりない。
ドゥクサスは、ここらで決行すると決めた。
後は、そのタイミングを見計らうだけだった。
「ふぅ、やれやれ。何も
「っ!」
が、機先を制して、ドロテオがそう呟いたのを聞いて、
「何だ、バレていたのかい・・・。」
「まぁな。これでも、俺ぁ『元・上級冒険者』なんでね。面倒事にもそれなりにあってるから、まぁ、そん時の勘みたいなモンよ。んで、何か用かい?」
「やっぱ、『元・上級冒険者』様は伊達じゃねぇな。しかし、わざわざ人気のない所に来たのは自信の表れかい?大通りの方に行けば良いのによぉ。ま、俺としては都合が良いんだけどな。アンタに恨みはねぇが、『仕事』なんでね。ここで死んでくれやっ!」
「っ!」
ドゥクサスはセリフを言い終わる前に、一気に間合いを詰めて、右ストレートの拳をドロテオに叩き込んだ。
ドロテオは、それを咄嗟に体捌きと防御でいなし、回避したが、ドゥクサスの拳は、逸れて建物の壁に深々と突き刺さっていた。
「うひょー。とんでもねぇ、
「よく避けたなぁ。それでこそ仕留め甲斐があるってモンだぜっ!」
『スイッチ』の入ったドゥクサスは、不気味に微笑み悦びの声を上げた。
「しかも、『
「セイッ!」
一度『スイッチ』が入ると、それまでの慎重さは鳴りを潜め、『
ドゥクサスには、そうした悪癖があった。
まぁ、もっとも、仲裁に入った者や目撃者なども、『スイッチ』が入った状態だとまとめて『肉塊』に変えてきたので、これまではそれで問題無かった。
そう、
一撃一撃が、『必殺』の威力を秘めた攻撃をラッシュで打ち込んでくるドゥクサス。
一方のドロテオは、『街中』である事もあり、『得物』は腰に差した『短剣』だけであった。
本来、ドロテオの得意な『スタイル』は所謂『盾役』、『A級冒険者パーティー』、『
それ故、一番の得意分野は『斧術』と『盾術』を組み合わせた『戦闘技術』である。
もちろん、『上級冒険者』ともなると、複数の『武術』に精通している為、ドロテオは見事な『体術』、『剣術』で応戦していた。
また、これはドロテオの『経験』にも由来するモノだが、所謂『ゲリラ戦術』も駆使して、ドゥクサスと互角以上に渡り合っていた。
ドゥクサスを裏路地にわざわざ
「どうした、どうしたっ!アンタの『力』はこんなモンかっ!?」
「言ってろっ!」
アドレナリン全開のドゥクサスは、ドロテオのそのコソコソとした『戦術』にそう煽ってくるが、ドロテオは相手にしなかった。
お互い致命傷になるダメージを与えられてはいないが、『戦術』と『経験』で勝るドロテオの方がやや優勢だ。
とは言え、本来ならドロテオはドゥクサスと真っ向勝負で戦り合っても勝てる『使い手』なのだが、
まぁ、それをカバーする『経験』と『知識』がドロテオにはあるが、
「俺も『護衛』を付けねぇともうキツイかね~。」
と考えるくらいには、宿直明けでのこの襲撃はドロテオにとっても堪えるモノだった。
まぁ、しかし、このまま何事もなければ、ドロテオの『戦術』勝ちで幕を閉じる。
「・・・ヒッ!こ、ここで何をしているんですかっ!?」
「あんっ!?」
「何っ!?」
そこに、『
◇◆◇
ダールトンに張り付いていたジークと同様に、アキトの指示で、ドロテオにもハンスが張り付いていた。
もっとも、ジークも言及していた様に、ドロテオとドゥクサスが戦闘状態に入っても、ハンスは『伏兵』の存在を警戒し、迂闊に介入には入らなかった。
もちろん、ドロテオが危機的状況ならその限りではないが、ハンスの目から見ても、ドロテオの方が優勢である。
まず間違いなく、ドロテオの『勝利』で決着が着くと見ていたハンスは、その勝敗の行方を見守っているのだった。
しかし、戦況が膠着状態になった時、ふと見ると、フラフラとまるで
辺りはすでに薄暗く、『
確かに、『街中』は『外』の世界よりかは治安が良いが、
薄暗く、人気のない路地裏で、争う様な喧騒がしていれば、普通の人ならわざわざ近寄らない。
『危険地帯』の渦中に、わざわざ飛び込んで行くのはただの自殺行為だからである。
自分の身は自分で守る。
それが、
まぁ、中には野次馬根性で覗きに行く者などもいるのは
とは言え、この『闖入者』はどうも様子がおかしいとハンスは感じていた。
喧騒に怯えて慌てて踵を返すでもなく、こっそり様子を窺うでもなく、本当にボーッと『渦中』に向かっているのだ。
それ故、ハンスは何かしらの『罠』を警戒して、より一層周囲の索敵に意識を持っていった。
しかし、これが一瞬のタイムラグを生む出す結果となったのだった。
「・・・ヒッ!こ、ここで何をしているんですかっ!?」
「あんっ!?」
「何っ!?」
突然現れた『
しかし、『スイッチ』の入っている状態のドゥクサスは、即座にこの
「チッ、結構いい女で勿体ねぇけど、見られた以上は仕方ねぇ。死になっ!!」
「キャアァァァァァッ!!!」
「くそぅっ!!」
位置関係上、ドゥクサスの方がリオネリアに近かった事もあり、ドロテオは咄嗟に彼女を引っ張って逃げる事が出来なかった。
出来た事と言えば、『必殺』の一撃をリオネリアに喰らわせ様としていたドゥクサスとの間に、身体を滑り込ませる事だけである。
ドゴォッ!
鈍い音が響き渡り、ドゥクサスの一撃はモロにドロテオを捉えた。
「ゴボォッ、ガハッゴホッ、こりゃ、まずったぜぇ・・・。」
数メートル吹き飛ばされ、何とか体勢を起こすも、口から血ヘドを吐き、荒い呼吸を吐くドロテオ。
あまりに咄嗟の事だったので、流石のドロテオもガードが間に合わず、かなり深刻なダメージを負ってしまった。
しかも、状況は全く改善していない。
人が吹き飛ばされる恐ろしい光景と、ドゥクサスの『殺気』にあてられたリオネリアは、その場でへたりと腰を抜かしている。
一方のドゥクサスは、『
「マズイッ!」
周囲の索敵に気を取られ、一瞬目を離した隙に最悪の状況になっている事に気付いたハンスは、全速力で現場に急行した。
ドゥクサスは、ドロテオのダメージを確認し、まず始末するべきはこの
ドロテオは、荒い呼吸をしてマトモに立ち上がれもしない状況だ。
一方のこの
万が一逃げられるとしたら、可能性としては彼女の方が高い。
『
場違いなほどの歪んだ笑みを浮かべるドゥクサスに、リオネリアはただガクガクと震える事しか出来なかった。
「に、逃げろーっ・・・!」
掠れた声で何とかそう叫ぶドロテオだったが、一般人であるリオネリアには無理な相談だった。
「死ねっ!」
「いやあぁぁぁぁぁぁっ!!!」
ドロテオをほぼ行動不能に陥らせたドゥクサスの一撃が自分に振るわれる。
リオネリアの『耐久力』ではとても耐えられないだろう。
リオネリアは、恐怖のあまり絶叫しながら思わず目を閉じてしまったのだった。
・・・しかし、いくら待っても一向に痛みも衝撃もない。
自分は、痛みも感じる事もなく死んだのだろうか?
恐る恐る目を開いて見ると、そこには、かつて『
「ば、バカなっ!」
「いやぁ~、危なかったぁ~。
「・・・えっ?」
「ハ、ハンス、さん・・・?」
場違いなほど明るい声に、リオネリアもドロテオも呆然としていた。
ただ、一番ショックを受けていたのはドゥクサスだろう。
『
ドゥクサスは身長が180cmを超える男で、
一方のハンスは、『エルフ族』の特性上バランスの良いしなやかな肉体を持っているが、ドゥクサスに比べれば小柄であるし、どちらかと言うとスラッとした印象さえ受ける青年である。
しかし、『高レベル』かつ
アキトの『仲間達』は、アキトに関わる様になってから、確実に(一般人から見たら)化け物染みた『力量』を持つに至っていた。
「は、はなせぇいっ!!」
「とりあえず、悪いが眠っていて貰おうかっ!」
慌てて捕まれた拳を振りほどこうとするドゥクサスに、ハンスはその腕を軽く
所謂、『かかとおとし』である。
「はれっ?」
ぐるんっと、いつの間にか仰向けに転ばされたドゥクサスの腹に、その足技がモロに直撃した。
「ぐはぁぁぁぁっ!!!」
ハンスの見た目に似合わぬ『パワー』と地面との間に挟まれたドゥクサスは、その衝撃を他へと逃す事が叶わず、何ともアッサリと撃沈したのだった。
「助けるのが遅くなってしまい申し訳ありません、御婦人。お怪我はありませんか?」
「は、はい・・・。あ、あの、ありがとうございました。」
「いえいえ。」
地面に
恐ろしい事に、この状態でもハンスとしては『手加減』をしており、その証拠にドゥクサスは、半死半生ながらもかすかに息があった。
フラつくリオネリアを支えながら、次いでハンスはドロテオに近付いた。
「ドロテオ殿、大丈夫ですか?これ、『シュプール』特製の『ポーション』です。服用すれば、大分楽になりますよ。」
「・・・ああ、すまない、ハンスさん。」
以前にも言及した通り『魔獣の森』は『薬草の宝庫』であり、さらにその深部には非常に貴重な薬草も多く自生している。
アキトは、その環境柄、またアルメリアの指導により『薬師』としても研鑽を積んでいるし、それプラス『森の民』たる『エルフ族』の独自の知識や、『鬼人族』・『ドワーフ族』の持つ知識が集結する『シュプール』は、ある意味
特に、『白狼』との関係により深部に入り放題であるアキト達は、通常ではありえない効果の各種薬草を取り扱う事が可能だ。
もちろん、中には『麻薬』とか『猛毒』に匹敵する危険な薬草も存在するし、比較的慎重派なアキトがこの知識を開示する事はないが、『ルダの街』の住人や『リベラシオン同盟』の者達なら、この『シュプール』特製の『ポーション』が何やらとんでもない代物だと言う事を理解している。
ハンスに手渡された『ポーション』を一気に飲み干したドロテオは、この『ポーション』の効能を体感していた。
「こいつは、すげえなっ・・・!」
『ライアド教』が独占している『回復魔法』ほどの効果は見込めないが、しかし、こちらの方が色々な意味で優秀である。
材料を必要としない、外傷や内傷に対して絶大な効果を発揮する『回復魔法』だが、当然デメリットも存在する。
まず、その
その為、知識のない者が使用するには非常に危険な『魔法』なのである。
『ライアド教』が独占しているのも、様々な思惑もあるだろうが、そうした面では理にかなってもいるのだった。
さて、では一方の『ポーション』だが、『薬物治療』は
流石に『ゲーム』の様に、瞬時に『完全回復』とまではいかないが、貴重な薬草が必要である、高度な知識が必要である点を除けば、『回復魔法』に迫る効果、かつ『回復魔法』のデメリットも一切無いのである。
まぁ、いずれにせよ本当に『全快』するには、栄養のある物を摂取して、安静にするのが一番なのは『地球』でも
立ち上がるのもおぼつかなかったドロテオは、数分後には自身の力で立ち上がる事が可能になっていた。
ドゥクサスに貰ったダメージも引いていて、身体がポカポカとする以外は、健常の状態に近い感覚であった。
「いやぁ~、すみません。どうやらこっそり『護衛』に付いていてくれた様ですな?」
「ええ、まぁ。こちらこそすいません。
「いや、正直助かりました。俺もまだまだ若いつもりでしたが、今回の事でやっぱり『護衛』の必要性を感じましたよ。アキトがどういう思惑で『口止め』していたかは知りませんが、助かったとお伝え下さい。」
「はい、承りました。ドロテオ殿の立ち回りはお見事でしたが、流石に無関係な女性が狙われると、お一人では分が悪かったですよね。ああ、そう言えば、御婦人は、ええと、確かこの間『リベラシオン同盟』で保護した方でしたね?なぜこの様な場所に?」
ドロテオの『回復』を確認して言葉を交わすハンス。
その時、ふと先程のリオネリアの様子が気に掛かり、そう質問した。
リオネリアは、ハンスに支えられている事に恥ずかしげに顔を赤らめながらも、その質問には表情を曇らせてこう応えた。
「私はリオネリアも申します、ハンス様、ドロテオ様。先日の件といい、今回の件といい、助けられてばかりですわね。重ね重ねお礼申し上げます。ただ、今回の事は私にも何が何だか・・・。そもそも私は『リベラシオン同盟』の施設に居りました筈ですのに、気が付いた時にはそちらの男性が暴れている所でしたし・・・。頭の中に霧が立ち込めた様に記憶がハッキリしませんわ。色々あって疲れているのでしょうか?」
「ふ~む。」
「気になりますね・・・。」
ドロテオとハンスは、リオネリアの言葉に顔を見合わせるのだった。
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