第43話 『悪意』の『伝道師』



◇◆◇



「初めまして、ニコラウスさん。さて、『ライアド教』の方が私の様な若輩者に何のご用でしょうか?」

「お初にお目に掛かります、ジュリアン卿。若輩者などとご謙遜を。『ライアド教私ども』にもジュリアン卿の『雷名』は轟ろいておりますよ。『ロマリア王国この国』の次世代を担う『中心人物』である、とね。」


王都『ヘドス』の『ノヴェール家』の別宅にて、ジュリアンは『ライアド教』の『伝導師』を名乗るニコラウスと面会していた。

ニコラウスは、本来はアキトの『監視』が『任務』であるが、ニコラウスに与えられた『』の為、それにそもそも彼にはアキトの『監視』は出来ても『対応』は取れないので、彼の行動は『ハイドラス派』からも容認されている。

さて、ではジュリアンの方だが、『ノヴェール家』の『総意』としては、『ライアド教』とは少し『距離』を置いている。

『宗教』を『国』・『政治』・『経済』と分けて考えるのは、特段珍しい考え方ではない(逆もまた然り。『宗教』を積極的に『利用』して『国』を纏め上げる例も、枚挙に暇がない)。

もちろん、他の『名門貴族』の中には、『親・ライアド教』もいるが、『ノヴェール家』としては、特にジュリアンとしては、『ライアド教彼ら』の『威光』を借りようなどとは一切思っていなかった。

とは言え、『個人』としては、その『影響』を受ける者達も当然いる。

ジュリアンはこの時点では知らなかったが、フロレンツの『貴族主義思想』や『エルフ族奴隷』の件も、もとを正せば、『ライアド教・ハイドラス派』の『選民思想』の『影響』を受けていたからであった。

つまり、それほどの『影響力』を持つ『宗教団体』の『関係者』に対して、ジュリアンとしても『面会拒否』や『門前払い』する訳にも行かず、あまり気は進まないが、ニコラウスとの面会に応じた、と言う状況だった。


「いやいや、私などまだまだですよ。父の『威光』故に、渦分にそう言われているだけに過ぎません。もちろん、私もこのままで良いとは思っていませんが、父を簡単に越えられるとも思っておりません。せめて、父と肩を並べるくらいには努力していくつもりですが・・・。」

「そう、正にその事なのですよ、ジュリアン卿っ!」


表面的な会話でやり過ごそうとしていたジュリアンに、芝居じみた仕草でニコラウスは迫った。

既に、ジュリアンはニコラウスの『』に嵌められかけている。

ジュリアンは、『性格的』に見ると、優秀で真面目で努力を惜しまないカリスマ性に溢れた『指導者リーダー』の器を持つ青年だが、裏を返せば、融通が効かず『固定観念』に囚われたやや潔癖気味な若者でもあった。

当然ながら、人は『完璧』などではないからそれも致し方ない事であるし、こうしたジュリアンの『欠点』も、優秀な部下達のサポートがあれば特に問題はない。

むしろそうした『欠点』は、『人間性』に富んでいて好感を持たれる『個性』ともなりうるだろう。

しかし、ニコラウスは、『扇動者アジテーター』としてその『部分』を強く刺激し、ジュリアンの『思考』を『操作』していった。

ニコラウスの『魔眼』の『能力』と、ジュリアンがこれまで受けてきた『貴族派閥』からのストレスも大きく『影響』してはいるのだが・・・。


「フロレンツ侯は、『ライアド教私ども』にもその『名声』が届くほどの『大人物』ですが、それ故に『政敵』も多い。当然フロレンツ侯ほどの『大人物』に『ライアド教我々』の『協力』など必要ないのでしょうが、今回は、彼としても非常に危機を迎えられているのですよ・・・。」

「・・・と、申しますと?」


』するフロレンツの名を出されて、ジュリアンも少なからず動揺した。

普段なら、ここにはジュリアンの秘書兼執事の部下がおり、ある種のジュリアンの『心の防波堤』となるのだが、先程も述べた通り、『ライアド教』の『影響力』はかなりのモノである。

そのニコラウスから、面会は二人で行いたいと申し出られては、ジュリアン側も断れなかった。

もちろん、ジュリアンの身の安全を守るべく、『セキュリティ私兵』は近くに待機しているが、ニコラウスはジュリアンにを加えている訳ではないので、それもある意味機能していなかった。


「ジュリアン卿は、『リベラシオン同盟』と言う『組織』を御存知ですか?」

「・・・『リベラシオン同盟』?」

「そうです。最近『台頭』してきた『組織』なのですが、こう評するのはあまりよろしくはないのでしょうが、少し胡散臭い『集団』でして・・・。」


『含み』を持たせながら、『虚実』を混ぜながら語るニコラウス。

そもそも、『リベラシオン同盟アキト達』と『ノヴェール家』の『交渉成立』から、ジュリアンに『情報』が届くまでには、ジュリアンが王都『ヘドス』にいる関係上、多少の『タイムラグ』があるのは当然である。

しかも、その『機密性』と『重要性』から、ジュリアンに『情報』をもたらす『使者』は厳選しなければならない。

『文書』だけでやり取りをするなどもってのほかである。

それこそ、ジュリアンの母であるオレリーヌ侯爵夫人が直接赴く程度には、『ノヴェール家』に取っては『重要度』が非常に高い。

下手に間違った『情報』がジュリアンに渡り、彼の若い『正義感』故の『暴走』で、『リベラシオン同盟』との『協定』が反古になってしまっては、フロレンツだけでなく、『ノヴェール家』と、それに関わる家人、その家族にまで『影響』が出てしまうからだ。

そうした事情を逆手に取って、ニコラウスは先手を打ち、あることないことジュリアンに吹き込んで、『監視対象アキト・ストレリチア』と『ノヴェール家』を『罠』に嵌めてやろうと画策しているのだった。

ニコラウスの『悪意イタズラ心』は、それほどまでには歪んでいた。


「あくまで『噂』なのですが、


ロマリア王国この国』の腐敗の根絶、

『人身売買』の根絶、


を掲げて活動する『集団』でして、それ自体は大変素晴らしい事なのですが、そのが些か行き過ぎている感がありましてねぇ。『暴力』や『脅し』と言うを平然と使うとか・・・。いえ、あくまで『噂』なんですがね?」

「なんと・・・!?」


ニコラウスは、非常に『詐欺師』としての才能に溢れた男であった。

『嘘』ではないが『本当』でもない事を、あたかも『真実』であるかの様に語る。

そもそも『大前提』として、『リベラシオン同盟』の『相手』に関する『情報』はあまり語らない。

その『相手』は、『ロマリア王国この国』の、特に『平民』からしたら、『癌』でしかない存在なのだが、そんな事は一切言わないのだ。

そして、一方では『リベラシオン同盟』に『ヘイト』を集める様に『誘導』する。

この『印象操作』は、意外と誰にでも可能だったりする。

『地球』における、『報道』や『ニュース』でもしばしば見られる『側面』なのだが、例えば、『失言』をした『有名人』がいたとしよう。

こうした『報道』や『ニュース』は、『インパクト』・『見出し』が大事だったりするので、『印象的』な『言葉ワード』を一番目立つ場所に置く。

そうすると、特に『センセーショナル』な事態の場合は、非常に『ネガティブ』な『言葉ワード』か多い為、『悪い印象』に『誘導』されてしまいがちである。

それを少し離れた『視点』や『心持ち』で見ていた場合は、その『発言』の、前後の『文脈』も見て判断するので、まぁ、確かに『言い過ぎ』かもしれないが、『全体的』には『悪いモノ』ではないと理解する事が出来たりする。

しかし、その一方でろくに調べもせずに『悪い印象』を『鵜呑み』にしてしまう人々も結構な数存在する。

それ故に、特に『日本』に置いては、各所の『忖度』や『イメージ』低下を恐れて、仕事を干される、退職に追い込まれると言った事態にもなりうる。

そして、それを『』に『』する者達も一定数存在する。

そう、このニコラウスの様に。


「それ故『ライアド教我々』としても『リベラシオン同盟彼ら』の動向には注視していたのですが、最近良くない『噂』を聞き付けてジュリアン卿のお耳にも入れておかなければと思い、こうして参上した次第です・・・。」

「その、良くない『噂』とは・・・?」


食い付いたな。

ニコラウスは、そう確信した。

後は、ニコラウスの『虚言』と『魔眼』の『効果』を使って、『悪意』・『敵意』を『増幅』させていけば良かった。


「どうやら、フロレンツ侯を貶めて、『罪』をでっち上げて、さらに『ノヴェール家』をそれを『ネタ』に『脅し』ている様なのですよ。もちろん、フロレンツ侯も『ノヴェール家』もそうした事態には毅然とした態度で『拒否』を貫いているのですが、『リベラシオン同盟』は、『ノヴェール家』の家人やその家族の『話』を持ち出して・・・。」

「なんたる下劣な・・・!」


もちろん嘘である。

さらに、ジュリアンも本来ならそんな『話』を『鵜呑み』にするほど愚かな青年ではない。

もたらされた『情報』は、しっかり『検証』して、『裏を取って』から『判断』する。

しかし、今現在は、『貴族派閥』からの妨害行為のストレスで心身共に知らず知らずの内に疲弊しているし、ニコラウスの『魔眼』の『効果』により、意識レベルはかなり低下していた。

つまり、『無意識』に『洗脳』に掛かりやすい『状態』になっているのだ。

とは言え、この状態でも『生命』に関わる事柄や、意に沿わぬ事柄ならまだ『拒絶』は出来るのだが、ニコラウスはさらに『心理的』な『罠』を仕掛けていた。


「そんな訳で、『』なフロレンツ侯や『ノヴェール家』の方々は、家人やその家族の『安全』を守るべく、不本意ながら『リベラシオン同盟』に『協力』する事にした様なのですよ。流石の『』かと存じます。しかし、そんな『組織』の言いなりとなっていては、それこそ、『ロマリア王国この国』の『未来』に陰を落とすのではないか?そう考え、私は『宗教家』としてではなく、一人の『人間ひと』として、貴方様に『忠告』すべく馳せ参じました。」

「っ・・・!!」

「とは申しましても、『ライアド教私ども』も貴方様も、『暴力』に対する対処は専門外ですし、中途半端な対応をすれば、それこそフロレンツ侯や『ノヴェール家』、家人の皆様やその家族にまで迷惑を掛けてしまいます。」

「確かに・・・。」

「そこで私は無い知恵を搾りました。もちろん、『ライアド教私ども』としましても貴方様としましても、大変不本意な事なのですが、世の中『綺麗事』ばかりではありません。しかし、貴方様がその事で心を痛める事も、その手を汚す事も、『ロマリア王国この国』の『未来』においてはマイナスでしかない。ならば、同じ『土俵』の者達をぶつければよいのではないか、と。」

「ふむ・・・。」


既にニコラウスの『独壇場』であった。

ジュリアンの頭の中には、その『リベラシオン同盟』の『排除』の文字しか浮かばないし、『リベラシオン同盟』に対する『不信感』・『怒り』・『憤り』と言った『悪感情』が『増幅』している。

その様に『』されているし、『判断力』は低下し、それをフォローする者も傍らにはいない。

さらに、『監視』している『セキュリティ私兵』達にもニコラウスの『魔眼』は『有効』だ。

少なくとも、何かがオカシイと感じ、飛び出して行けない程度には、彼らも『魔眼』の『影響』を受けていた。


「ジュリアン卿は、『掃除人ワーカー』と言う者達の存在を御存知でしょうか?」

「・・・『掃除人ワーカー』?」


こくり、大袈裟なジェスチャーでニコラウスは頷いた。


「簡単に申しますと、『冒険者』の更に『暗部』寄りの者達の事です。『金銭』さえ支払えば、何でもする、まぁ、『何でも屋』と言った所ですね。」

「その者達を雇い、『リベラシオン同盟』にぶつけると?」

「如何にも。」

「しかしっ・・・!!」

「いえ、仰りたい事は分かります。それでこそ、『』なフロレンツ侯の『後継者』であるジュリアン卿ですとも。しかし、『リベラシオン同盟相手』は『手段』を選んでいて『排除』出来る『組織』ではありません。お父上を、お母上を、『ノヴェール家』を『守る』為なのですっ!」

「『ノヴェール家』を『守る』・・・。」


後ひと押しと言った所か?

心の中でほくそ笑むニコラウス。


「間違った活動を正すのも『上』に立つ者の『責務』ですよ、ジュリアン卿?貴方様には、『正義』と『愛』を持ってその者達を教え導く『義務』があるのです。『暴力』は誉められた『手段』ではありませんが、『ロマリア王国この国』にも『軍隊』は存在します。『民』を『守る』為には、時には『暴力』も『必要』なのです。ようは、その『力』をどう使うかですよ?」

「『力』をどう使うか・・・。」

「『ライアド教私ども』としましても、『暴力』を容認してる訳ではありませんが、貴方様ならそれを悪しき事には用いないと『確信』しております。後は、貴方様の『決断』次第です。万が一の場合は、『ライアド教私ども』が『擁護』致しますし、『皆様』理解して下さる事でしょう。ジュリアン卿は、『悪』を『断罪』する『高潔』な『貴族』なのだとっ!」

「・・・。」


ニコラウスが仕掛けた『罠』とは、『思考の放棄』と、『責任の細分化』であった。

『ミルグラム実験』を御存知だろうか?

『ミルグラム実験』とは、簡単に言うと『閉鎖的な環境下』で、『権威者』の『指示』に従ってしまう人間の心理状況を実験したものである。

結論から言うと、『平凡な人』でも、こういう状況下に置かれると、高確率で人は『殺人者』になりうるとの実験結果が出た。

類似した身近な『事例』だと、『家庭内暴力』や『虐待』、『いじめ』なども、『思考の放棄』と『責任の細分化』に該当するだろう。

逆にこれを応用した『健全』な『事例』も存在する。

『作業の細分化』。

特に『工場』などで広く取り入られている『手法』である。

『大量生産』を可能にする上で、『(作業の)効率化』と『(作業の)簡略化』は必要不可欠である。

最初から最後までの『行程』を理解し、細部まで『作業』を出来る、所謂『職人』はすぐには育たないからである。

『職人』の『絶対数』が少なければ、当然『大量生産』は不可能だ。

ならば『発想を逆転』させ、複数の『素人』が簡単な『流れ作業』を『分担』する事で、完成度の近い類似した『製品』を作れば良いと言うのが『作業の細分化』である。

これにより、高い『技術』を必要としない『大量生産』が可能となった。

しかし、これには『落とし穴』もあり、ある種の『思考の放棄』を『誘発』するので、例えば『製品』に不備があった場合は、その『責任』も『細分化』している故に、『責任』の擦り付け合いと言う事態にもなりうる。

つまり、(極端な話)『作業員』一人一人は『完成品全体像』を把握していない、と言うのが一つの『ポイント』である。

これを『心理学』として応用したのが、『責任の細分化』である。

いくら『催眠』・『洗脳』と言えど、普通の『精神』を持つ者は、に「『相手』を殴れ、『相手』を殺せ」と『命令』されても『拒絶』する。

「『催眠術』を掛けられたので『殺人』を犯しました」、と主張しても、それは『催眠』のせいではなく、そういう『因子』・『精神疾患』を元々持っていたに過ぎない。

しかし、これが『細分化』されると、人は簡単に『スイッチ』を押す。

先程の『ミルグラム実験』の『事例』も、「命じられたから」、「自分には『責任』は無い」などと、『思考の放棄』と『権威者』に『責任を分散』する事により起こった『現象』と言える。

しかも恐ろしい事に、この『現象』は、『専門的知識』がなくとも、『魔眼』がなくとも、どこにでも起こりうる『現象』である事である。

例えば、『世界』で一番『最小』で『閉鎖的な社会』は、『家庭』である。

そこで起こりうる『家庭内暴力』や『虐待』の『構図』は、『権威者』からの『肉体的』、あるいは『精神的』プレッシャーでも引き起こされる。

そこに、『催眠』や『洗脳』(細かく言うと、これも一種の『催眠』や『洗脳』ではあるが)はいらない。

一番分かりやすいのが、『権威者父親』が、『被害者子供』に『暴力』を奮う事だろう。

では『第三者母親』は何をしているのかと言うと、『権威者父親』からの『肉体的』・『精神的』プレッシャーで何も出来ずにいる事も多い。

さらに最悪なのは、『権威者父親』から『強要』され、『第三者母親』も一緒になって『暴力』に『加担』していたりする事である。

その末で、『被害者子供』が命を落とす痛ましい『事件ケース』もある。

そうした『事件』の後、様々な『意見』の中には、「どうして逃げ出さなかったのか?」、「どうして周りに相談しなかったのか?」と言うモノがあるが、『被害者子供』や『第三者母親』は『精神的支配』を受けているし、長期のストレスで『思考の放棄』・意識の低下・『責任の細分化』故に、そんな事すら頭に浮かばないほどの『精神状態』なのだそうだ。

そうした『現象』は、『学校』でも、『職場』でも、どこにでも起こりうるのである。

それは、『地球』でも『この世界アクエラ』でも変わらない。


「・・・ニコラウスさんには、そうしたツテはおありなのですか?」


掛かったっ!

ニコラウスは笑いを必死に堪えながら、ジュリアンに答えた。


「いいえ、ジュリアン卿。これでも私は敬虔な『ライアド教信者』ですから、そうした者達には通じておりません。しかし、貴方様の部下に頼めば、すぐに見つかると思いますよ?」

「そう、ですか・・・。」

「何、ご心配する事はありません。『掃除人ワーカー』達もプロです。しかも、『ギルド』の後ろ楯もありませんから、秘密も守ります。多少『』者達も多いですが、自身が『破滅』したい訳ではありませんからね。貴方様は、ただ『掃除人彼ら』に『リベラシオン同盟』を『排除』する様に『お願い』するだけの事ですよ。」

「・・・分かりました。・・・貴重なご意見、ありがとうございました。」

「いいえ。しゅの御導きがある様、祈っております。」


今回の『事例』でいくと、『権威者』とは『ライアド教』が該当する。

その『権威者ライアド教』からの『免罪符』もあり、当然、ニコラウスの『魔眼』の『効果』がかなり大きな割合を占めているが、『貴族派閥』からの度重なるストレス、『妄信的』に『』するフロレンツの危機、そして、『リベラシオン同盟』への『怒り』など様々な『条件』が噛み合ってしまい、ジュリアンは、『悪魔の契約』に『サイン』をしてしまったのだったーーー。



◇◆◇



「ふ、ふはははははっ!チョロい、チョロすぎるぜ、御坊っちゃんよぉ~。」


『密会』した事が周囲に知られると、ジュリアンに『迷惑』が掛かる。

などと、適当な事を言い、ニコラウスはこの事は『内密』に、とジュリアンやその部下達に『暗示』を掛けた。


「さてはて、どんな『見世物ショー』になるのかねぇ~。どっちにしても、クソつまんねぇ『任務』よりは、おもしれぇ事になるだろうが・・・。」


ゲラゲラと底意地の悪い笑みを浮かべて、ニコラウスは、、その『光景』に想いを馳せていた。



故に、ジュリアンとその部下達の行動は早かった。

ジュリアンはニコラウスとの面会が終わると、既にニコラウスの事は、フロレンツと『ノヴェール家』を『守る』べく、『リベラシオン同盟』の『排除』を決定した。

当然、ジュリアンの部下達は彼を諌めたし、先走らない様苦言を呈したが、ジュリアンは頑なだった。

そうなれば、『主従関係』から部下達はジュリアンに従う他はなかった。

彼らにも、(『魔眼』の『影響』ももちろんあるが)『自己保身』だと言われ様とも自分達の『生活』があるし、『家族』を守らなければならないからだ。

むしろ、それでもジュリアンに対して苦言を呈したり、諌めたり出来る事が、(本来の)ジュリアンの器の大きさを物語っているし、部下達の有能さ優秀さの現れでもあったのだが・・・。

ここでも、『思考の放棄』と『責任の細分化』は『蔓延』していた。

さて、そうした訳で、ジュリアン達は『掃除人ワーカー』チーム・『ノクティス・フィーリウス』に『依頼』をする事となった。

ドニ一家とリーゼロッテが、アキト達と邂逅する少し前の話である。


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