第42話 ニコラウスとジュリアン



◇◆◇



ドニさん一家が、『シュプールウチ』に来てから数週間が経った。

ドニさんとリーゼロッテさんは、アイシャさんの『工房』にもすっかり慣れ、タンリー爺さんからの『下請け仕事』をこなしながら充実した日々を過ごしていた。

と、言っても(二人の子ども達は順応も早かったが)、『シュプール我が家』名物の『ホブゴブリン妖精執事』には今だに慣れない様子で、彼らを見掛ける度に少しビクッするのは致し方ない事ではあるのだが・・・。



タンリー爺さんからの要請は、日用品の製作依頼だった。

パンデミックモンスター災害』以降の『ルダの街』は、人口が増加している。

それ故、以前にも言及したが、日常で使う包丁とか、薪割り用の斧、鉈や鎌などの農業用品から、『冒険者』(だけではないが)御用達の武器・防具類の需要が増加傾向にある。

『鍛治職人』としては嬉しい悲鳴なのだろうが、ピークが過ぎるまでは休む暇もなく、ポールさんなどはブチブチ文句を言っている様が思い浮かぶ様だ。

もちろん、タンリー爺さん達の他にも『鍛治職人』は存在するが、元々『ルダの街』以前の『ルダ村』時代は、人口も5000~6000人程度で、しかもある程度村人達にも道具は行き渡っていた。

と、言っても、当然ながら、そうした道具はなので、修理メンテナンスやら新調、『魔獣の森』目当ての『冒険者』相手に生活が出来る程度には商売が成り立っていた。

つまり、需要と供給のバランスが成り立っていたのだが、これが需要側に一気に傾いた為、生産が追い付かない状態となってしまったのだ。

これが一時的な『復興景気』ならば、まだ何とかなったのだろうが、本格的な『発展』となると、既存の『鍛治職人』達だけでは立ち行かなくなる。

そんな事もあり、タンリー爺さんはダールトンさんに他の『土地』から『鍛治職人』を含めた『技術者』の『移住計画』を『進言』(と言うより『懇願』の方が適切かもしれないが・・・)していた。

こうした事情もあって、ダールトンさんは最近『トラクス領地』内ではあるが、他の『街』や『村』などを訪問しては会合を繰り返す忙しい日々を送っていたのだった。

そんな折、ドニさん一家が現れた。

聞けば『ドワーフ族の国』で修行を納めたと言う。

これ幸いにと、早速タンリー爺さんは溜まっている『仕事』の手伝いを依頼したと言う訳である。

タンリー爺さんも、ドニさんの『作品』を通して、彼の『腕前』をある程度理解している。

と、言っても、それだけで『全幅の信頼』を寄せるにはまだ時期尚早だろうが、少なくとも日用品を製作するには申し分ない『腕前』である事は間違いなかった。

何事においても言える事だが、少しずつ『実績』を重ねる事で、『顧客』や『同業者』からの『信頼』を勝ち取っていかなければならない。

どれだけ優れた『技術』を持っていたとしても、『信用』や『信頼』と言うモノはすぐ手に入るモノではないからだ。

その事を充分に理解しているドニさんは、今は『実績』を重ねる時期だと考え、もしかしたら彼とリーゼロッテさんとしては大して難しくない『仕事』かもしれないが、一切手を抜く事もなく、見事な『製品』をどんどん生産していった。

ちなみに、この世界アクエラにおける一番多い『職業』は、『農業生産者』、すなわち『農民』であり、『地球』においても『ファンタジー作品』においても多少軽んじられる傾向にあるが、『農民彼ら』がいないと、そもそも『生活』が成り立たなくなってしまう。

当然ながら、人が生きていくには『食』は必要不可欠であり、『農耕技術』が成立する以前は『狩猟』・『採集』で飢えをしのいでいたが、何時でも『成果』がある訳ではない。

『釣り』をされる人なら分かると思うが、一日粘っても『ボウズ』なんて事も往々にしてある。

もちろん、『農業』においても、天候の影響や自然災害などもあり、絶対と言う訳ではないが、それでもある程度安定的に食糧を確保する事が可能となったのはやはり大きな変化だろう。

『地球』においても、『農耕技術』が成立する以前と以後では、明確に『文明』レベルが引き上がっている『歴史』がある。

人は腹が満たされて初めて『文明人』となりうるのかもしれない。

ま、それはともかく。

『農民』は『絶対数』が多い為、『鍛治職人』にとっては一番のお得意様である。

特に、『ルダの街』における『農民』の生活水準はかなり高く、より良い『製品』に買い換えて使う事で、更に生産性がアップしていくと言う『好循環』となっていた。

まぁ、それ故にタンリー爺さん達が涙目になる訳なのだが・・・。

一応ドニさん達は武器・防具類作成を目的として『スカウト』した僕だったが、『ルダの街』の事情も理解しているので、少し落ち着いてから改めて依頼する予定だ。

ドニさんとリーゼロッテさんには、もうその旨は伝えてある。

それに、今は僕も結構忙しい。

と、言うのも、『鍛治』に必要な『鉱石類』も当然ながら不足しているからだ。

もちろん、フロレンツ侯が切り開かせた鉱山もあるし、そこで働く『炭鉱夫』達もいるのだが、そうした場所は、『村』や『街』からは離れている事が多い。

そうした環境もあって、『炭鉱夫』達はかなりの強者が多いし、護衛もそれ相応の者達で構成されているが、だからこそ、増産しようにも人手が足りてないのだ。

単純な『人海戦術』で済むほど世の中簡単じゃない。

ある程度の腕っぷしを持ち、ある程度の専門知識を有し、身体も頑強で精神も頑丈タフでなければならない。

そうでなければ、過酷な『鉱山』での作業に従事出来ず、一日も持たず『リタイア』が関の山だし、『モンスター』・『魔獣』の襲撃からも生き延びれないだろう。

そんな訳もあり、『魔獣の森』内で僕が独自に発見した『鉱脈』から、不足している『鉱石類』を採掘しては『ルダの街』に(ついでにドニさん達の依頼品なども一緒に)持って行く日々を過ごしていた。

もちろん、僕が持ち込む量など微々たるモノだが、『鉱山』から送られてくる『鉱石類』は効率の問題から、ある程度まとまった量にならないと入荷しない。

通常ならそれでも全く問題ないのだが、今の現状を鑑みると、ストックしている『素材』はあっと言う間に使いきってしまうので、その合間を埋める意味でも結構重宝するそうだ。

と、こんな状況が『鍛治職人』だけでなく各所で起きている『ルダの街』であるが、それも今がピークで、もう少し踏ん張れば緩やかに落ち着きを取り戻して行く事だろうとは、ダールトンさんの談。

どうやら、時間は掛かったが、上手く『技術者』の『移住計画』の目処が立った様だ。

やはり、『ノヴェール家領主家』の後ろ楯を得られると様々な事で有利である。

そう言えば、『掃除人ワーカー』の件で『警告』を受けていたが、今の所、それらしい影は確認出来てない。

まぁ、忙しくてぶっちゃけ忘れてはいたのだが・・・。



◇◆◇



『ライアド教・ハイドラス派』から派遣された『監視者』・ニコラウスは、この『任務』に飽き飽きしていた。

『監視対象』であるアキト・ストレリチアは、『ハイドラス派』の、特に『血の盟約ブラッドコンパクト』のメンバーからしたら『ライアド教』や『至高神ハイドラス』にとって大きな障害になりうる存在として認識されているが、ニコラウスの様な『末端』の者にとっては、ただの年端のいかない子どもであった。

もちろん、ニコラウスもアキトが『普通の子ども』ではない事はある程度理解している。

しかし、ニコラウスはそもそも熱心な『ライアド教』の『信者』ではなかった。

『ライアド教・ハイドラス派』に属しているのも、彼に取って都合が良かった、ただそれだけの理由である。



『ライアド教・ハイドラス派』は、根底に根深い『選民思想』が息づいている。

ここで言う『選民思想』とは、『人間族』・『他種族』を問わず、優れた身体・精神・知識を備えた者達(『選ばれた民』)こそが、人々を導くべきであると言う考え方である。

これ自体は、特段間違った考え方ではない。

人々を導く、あるいは纏める『指導者』であるならば、それ相応の『努力』をし、人々の上に立つに足る『叡知』・『人格』を備えよと言う意味だからだ。

つまり、『リーダー』であるなら優秀な人材たれと言うのが本来の意味である。

しかし、とかくこういう『思想』は、曲解されたり、拡大解釈されたりする事が非常に多い。

『ライアド教』こそ『選ばれた民』であると『定義』し、他の『宗教』を『邪教』として扱ったり、『他種族』を『劣等種』であると『定義』し、優れた種である『人間族』こそが『他種族彼ら』を『』すべきであると主張したり、と、様々である。

こうした『思想』は、『政治』にもよくされ、『他国』に対する『侵略』を『正当化』しようとしたり、『他民族』・『他種族』を『支配』する『口実』ともなるうる。

ニコラウスも、自身の『享楽的』・『嗜虐的』嗜好を満たす為に、『ライアド教・ハイドラス派』に属しているのだった。

もちろん、この世界アクエラには、『地球』と違い明確に『アストラル体』としての『神々』が存在するので、そうした存在が『歪んだ』考え方を正す事も出来るのだが、『神々』はそうした事には関与しない。

そこには様々な『思惑』があるのだが、まぁ、それはまた別の話。

さて、そんな『不真面目な信者』・ニコラウスであるが、『ハイドラス派』としては、彼を派遣したのは『人選ミス』と思われるかもしれないが、これにも歴とした『思惑』が存在する。

アキト・ストレリチアの『監視』。

これももちろん重要だが、裏に隠された一番の『目的』はアキトの活動を妨害させる事であった。

血の盟約ブラッドコンパクト』・ニルの『目』を通して、『至高神ハイドラス』は、アキトに対抗出来る『駒』を持っていない事を理解した。

それ故、ニルを始めとした『ハイドラス派』の『主勢力』を、その『本拠地』にして『ハレシオン大陸』でも屈指の『強国』・『ロンベリダム帝国』に引き上げさせ、『失われし神器ロストテクノロジー』・『召喚者の軍勢』の『再使用』までの時間を稼ごうとしていた。

以前、アルメリアとアキトの話題にも上がった、『召喚者の軍勢』の『効果』を十全に引き出せれば、アキトに対抗出来る『人材』を配下に加える事が可能だと理解した上で、だ。

もちろん、『帝国』の協力の下、他の『失われし神器ロストテクノロジー』の捜索や、『信仰』の『獲得』にも精力的に活動している。

しかし、その間にアキトも更に『力』を付けるのは想像に難くない。

事実、アキトは『リベラシオン同盟』を設立し、順調に『ハイドラス派』に対する『対抗勢力』を築きつつあった。

それを阻止する事は、『ハイドラス派』には今現在は難しい。

しかし、その足を引っ張る事・状況を引っ掻き回す事は可能である。

それが、正にニコラウスを起用した『理由』だった。

実はニコラウスは、本人は知らないが『血の盟約ブラッドコンパクト』の『』メンバーとして名を連ねている。

他の『血の盟約ブラッドコンパクト』の『正式』メンバー達は、その『人格』はともかく、『能力』は非常に優れている。

ニルを例にとってみると、『元・貴族』としての高い『教養』に『魔法技術』、『魔法使い』としての常識を逸脱した『暗殺者』としての高い『近接戦闘技術』と『隠密技術』。

この世界アクエラでは『生ける伝説』とさえ呼ばれる『S級冒険者』に匹敵する『使い手』である。

他のメンバーも、ニルと同じ様な『レベル』の者達で構成され、かつ、『至高神ハイドラス』を『狂信的』に信奉している集団、それが『血の盟約ブラッドコンパクト』であった。

では、ニコラウスはどうかと言うと、彼は所謂『平民』の出で、高い『レベル』も『身体能力』も『教養』も有してはいない。

しかし、彼にはある特別な『能力』が生来備わっていた。

それが『魔眼』と呼ばれる厄介な代物だったーーー。



『魔眼』と言っても、その正体は単純な『催眠術』の一種であり、本当にその『眼』に特殊な『能力』が備わっている訳ではない。

以前に言及したが、『魔素』は微弱ながらもこの世界アクエラの『生物』達に『影響』を与えている。

この『魔素』を『技術』として用いるのが『魔法使い』であり、『魔闘気使い』である。

さて、ではニコラウスだが、彼は『平民』故に『魔法技術』を学んだ機会はないし、もちろん『魔闘気使い』でもない。

しかし、『魔素感受性』だけは非常に高い数値を有しており、アキトが得意としている『幻術系魔法』を、それと意識出来ない『無意識』レベルで発動する事が可能だった。

こうしたニコラウスの様な、『魔素』の『影響』を強く受け、『物質世界』にまで(『魔法使い』・『魔闘気使い』ほどではないが)『無意識的』に『影響力』を発現してしまう者を、『魔眼の持ち主』と呼んでいた。

つまり、元来『魔眼の持ち主』は高い『魔素感受性』を有している故に『魔法』との親和性が非常に高く、『歴史』に名を残すほどの(もちろん、それ相応の『努力』は必要不可欠だが)優秀な『魔法使い』、あるいは『魔闘気使い』となれる素養を持っている者達の事を指す。

その為、かつての『魔法使い』達からは、『魔眼の持ち主』は一種の『バロメーター』として、『スカウト』の対象であったのだった(『魔眼の持ち主』の高い『魔素感受性』は潜在的なモノなので、所謂『隠しステイタス』として、数値に現れない事も多かった為である)。

しかし、以前にも言及したが、今現在のこの世界アクエラでは、かつての『魔法技術』が一度失われてから復興した経緯があり、その過程で失われた『技術』や『伝承』も多数存在する。

『魔眼』に関する『伝承』も、その一つであり、今日では『魔眼の持ち主』は、不可思議・不気味な『力』を持つ者として、『社会』から弾かれるケースが多い(もっとも、『魔眼の持ち主』自体が非常にまれな存在ではあるが)。

当然、失われた『伝承』故、『魔術師ギルド』も『魔眼の持ち主』の『希少性』を理解しておらず、結果『魔眼の持ち主』が『魔術師ギルド』に保護される事もなかった。

そうした末に、その『力』は出来るとニコラウスは『ライアド教・ハイドラス派』に拾われたのだった。

一般的に『催眠術』と聞くと、「相手に何でも言う事を聞かせられる便利な能力」と誤解される事が多いが、むしろ出来ない事の方が多かったりする。

それ故に、相手の生命に関わる事だったり、意に沿わない『命令』は基本的に無効となる。

まぁ、それさえクリアしている『失われし神器ロストテクノロジー』・『隷属の首輪』はそれだけ恐るべき代物であるのだが。

それはともかく。

しかし、それも使い様である。

もちろん、ニコラウス本人は、自身が『魔眼の持ち主』である事や『催眠術』の事を完全に理解している訳ではないが、自身には何か特殊な『能力』がある事は自覚しており、それを『享楽的』・『嗜虐的』嗜好故、状況を掻き回すのを好む『トリックスター』・『扇動者アジテーター』としてしていた。

ようするに、ニコラウスは』が大好きなのであった。

今回の、アキト達『リベラシオン同盟』に差し向けられた『掃除人ワーカー』チームの件も、もとを正せば、『任務』をしようと、ニコラウスがジュリアンを唆した事が切っ掛けであった。



◇◆◇



ジュリアンはフロレンツとオレリーヌの実子で、『ノヴェール家』の『後継者』である。

それ故、幼い頃より『ノヴェール家』を継ぐべく、英才教育を施されてきた。

また、彼自身も、『』な父の背中を尊敬を持って見て育ってきた為、当のフロレンツとは違い、誇り高く、誰よりも自らを律し、『貴族』・『平民』分け隔てなく接する理想的でカリスマ性に溢れた『指導者』としての器を持つ青年へと成長していった。

これには、当のフロレンツ自身や、ガスパール、オレリーヌらによる『情報操作』・『印象操作』も大いに関係するのだが。

十三歳になると同時に、王都『ヘドス』にある『ロマリア王立魔法学院』に進学し、『魔法技術』を学び(と、言っても、この『ロマリア王立魔法学院』の主な目的は、純粋な学門研究の場としてではなく、『王侯貴族』の子弟達、いわば次世代の『ロマリア王国この国』の中核を担う少年・少女達の交流の場としての意味合いが強いが)、ここでもトップクラスの『成績』を納めていた。

この後は、『家』によって『進路』が異なるが、


例えば、『軍人』を多く輩出してきた『家』では、『武官』・『幹部候補』として『ロマリア王立士官学校』に進むし、『文官』、所謂『政治家』を多く輩出してきた『家』では、『ロマリア王立大学』に進学する(と、言っても、『貴族』は非常時の際は『私兵』を率いる事もあるので、『武官』・『文官』の違いは結構曖昧であるが)。

また、『貴族』の御令嬢達は、生まれた時から『婚約者』がいる事も珍しくなく(所謂『政略結婚』である)、大半の御令嬢達は『ロマリア王立魔法学院』を卒業すると、花嫁修行(ここで言う花嫁修行とは、世間一般的な炊事や家事に関する事などではなく、『貴族』の『奥方』としての立ち居振舞い・教養などを学ぶ事である)に入ったり、早ければそのまま『婚姻』を結ぶ事もあった。


ジュリアンは『家』の意向により、『ロマリア王立大学』に進学し、政治・経済に関する事を学んだ。

『ロマリア王立大学』卒業後は、フロレンツの『後継者』として、フロレンツの補佐をしながら『ロマリア王国この国』の『中央政治』に関与し、順調にそのキャリアを伸ばしていた。

そして、『家督』こそフロレンツからは、まだ譲り受けてはいないが(彼自身は、これも『』な父からの『最後の試練』であるとポジティブに捉えているが)、『中央政治』に関しては完全にフロレンツから引き継ぎ、『貴族派閥』の若手筆頭として頭角を現していった。

ただ、ジュリアンとフロレンツや他の『貴族派閥』の者達との間には、『貴族派閥』の有り様に対する認識に齟齬があり、


健全な『政治体制下』としての、『政権与党』と『野党』の関係を例に取ってみよう。

ここで言う『政権与党』=『王派閥』、『野党』=『貴族派閥』とするならば、ジュリアンの認識では、『王派閥』を補佐し、暴走や腐敗する様な事があればそれを正す・諌める『監査役』としての『貴族派閥』の有り様を理想としているのに対し、フロレンツや他の『貴族派閥』の者達は、『王派閥』の『影響力』を低下させ、あるいは奪い取り、自らの『影響力』を高める、あるいは、『権力』の簒奪、『政権』の奪取を最終目標に掲げている、と言う違いがあった。


そんな事もあり、ジュリアン自身は、彼の中での『理想』の『フロレンツ像父親像』を参考に、『高潔』で『清廉潔白』な『政治家』として躍進していったのだが、そうなると面白くないのは『古参』の『貴族派閥』の老人達である。

フロレンツ自身も、そんなジュリアンにはある種失望し、ジュリアンの『思想』を『修正』しようとした矢先に、ニルやアキトとの『案件』が起こり、『表舞台』から姿を消した。

それ故、『古参』の『貴族派閥』の老人達は、『ノヴェール家』が自分達を裏切り、『王派閥』に鞍替えしたのではないかと疑心暗鬼になり、明確にジュリアンに対する妨害工作が頻発する様になっていったのである。

足の引っ張り合いは、『政治』の世界、だけではないが、よくある話である。

しかし、ジュリアンはそんな事には屈せず、『若手』を中心に支持を集め、『ロマリア王国この国』の『政治』の若返りを図る『中心人物』として台頭していった。

だが、ある種『偽者』のフロレンツに対し、ジュリアンは『本物』ではあったが、人々の『悪意・害意』による『ストレス』は多大なモノとなって蓄積していった。

そうした意味では、人々の『思惑』に対する対処はフロレンツの方が得意としていたが、(『貴族』としては珍しく真っ直ぐで、真面目な性格故)ジュリアンには苦手な分野だった。

もちろん、ジュリアンにも清濁併せ呑む優秀な部下達は存在するが、『海千山千』の『狸親父』達を相手にするには、まだ力不足なのは否めない。

そうした事で、生じた『心の隙間』をジュリアンはニコラウスにされ、ニコラウスが『演出』する趣味の悪い『』の『主要人物』としてされる事となったのだったーーー。


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