　色々あって、行為予定日が1日ずれ、今度こそ本当に行為予定日の3日前となった今日、俺と彼女は、ノマシロに来ていた。

「脱げないとなると、やっぱり薄手のものが良いわよね...」

どうやら、朝の彼女の説明通り、行為予定日に俺が着る服を選んでくれているようだ。

　20分程かけて、彼女は、柔らかい素材のズボンと、薄い素材のシャツを手に取り、俺に試着するよう言った。試着してみると、確かに服を着たままでも相手を感じることができそうだった。いや、知らないけどね。試着した姿を見せると、彼女も納得したようで、その2点を買った。

　てっきり彼女も服を買うと思っていたのだが、そのまま店を出たため、彼女の服は買わなくていいのかと思い、

「先生は、服買わなくていいの?」

と聞くと、

「今日から私もターゲットと接触するでしょ?そしたら、公園に遊びにくるようなわんぱくな5歳女児を演じなきゃいけないじゃない?役作りは外見からなのよ。こういう服でもいけないことはないけど、もっと自然に見せるために、子どもっぽい服が売っている店に行くわ」

と言って歩き出した。ロリ顔とロリ声が作れてしまうのに、更に服装まで子どもっぽくしてしまうなんて...!女優顔負けだなこりゃ。

　そんなことを考えながら歩くこと約10分、子ども服の王道「東梅屋」に着いた。看板に描かれた、こちらを向く白猫と目が合う...って、ん?!

「と、東梅屋?!」

「そ、そうよ?い、いき、行きましょう?」

あの彼女が、東梅屋の服を着るのか?!想像付かないんだけど?!って、本人もかなりテンパってるみたいだけど。

「いや、先生めっちゃテンパってるじゃん!」

「テンパってなんかないわよ!か、覚悟を決めてるだけよ。そう、これも計画成功のため...プライドを捨てるのよ、私...!」

そう言って覚悟を決める彼女と入店した俺が見たのは、懐かしいあの光景だった。もちろん俺の行っていた店舗ではないし、さすがにあの頃とは少し違っているが、そこは確かに、俺が幼い頃、親と一緒に来ていたあの場所だった。どこの東梅屋に行っても、懐かしい感じがするなんて、不思議だなぁ。

「やっぱり無理!」

　そう言って彼女が店を飛び出したのは、入店してからおよそ3分後のことだった。

「まだちょっとしか見てないじゃん」

と俺が言うと、

「ちょっと見ただけでも無理って悟るぐらい無理だったのよ!しかも最近の子ってちっちゃい内からオシャレとかしてるわよね?!だったら普段の私の服装で良くない?って考えも出てきたから!とにかく、もう一回ノマシロに行くわよ」

そう彼女は早口で捲し立て、歩いてきた方向を戻る。

　結局彼女はノマシロで、バッグを含む合計5点を買った。店を出た後、歩きながら彼女は、

「やっぱりノマシロは子どもサイズでもザ·子どもって感じじゃない物も多いし、何よりデザインがシンプルで一番良いわ」

と、満足げな顔で言った。そんな彼女を見て、俺は

(確かに彼女は、こういう子どもっぽくない服の方が似合うかもな。子どもっぽい服を着ても可愛いんだろうけど!)

なんてことを考えながら歩いた。ちなみに、ロリ顔を作った彼女が、もしさっき東梅屋で見た服を着たら...という妄想をして、ニヤニヤしていたことは、彼女には絶対秘密だ。

　その後、「ばつまつ」で昼食を摂ったが、また彼女に触発されてサラダを追加注文してしまったので、次からは最初から頼もうと心に誓う。

　20分程かけて家に帰った後は、彼女とひたすら今日の授業の打ち合わせを行う。ジョギングを始めた日から約2週間、セリフを記憶してきたものを、確認しなおす。原稿を見ずに言えるか、彼女に確認してもらう。何せ今日は、彼女から指示をもらわず、事前に彼女に考えてもらった言葉を、1人で喋らなければいけないのだ。そして約2週間、今日のために練習しておいた凄ワザも、彼女と確認しなおす。何せ今日は、彼女のターゲットとの初コンタクトの日なのだから。