第24話 ロリ先生よりあなたへ 1

 みなさん、こんにちは!!ロリ先生こと、愛菜美です。

 今回は、私の過去の中で、特に深く話したいことを、今読んでくれている、あなた!あなたに、お話しさせていただこうと思うわ。と、その前に、第22話「ロリ先生の過去」をまだ読んでいない人は、まずそちらを読んでからにしてね。

 まず話したいのは...あの、パンを毎日くれたっていう彼女のこと。彼女は、隣の家に住んでいて、私の部屋と彼女の部屋の距離は、1mぐらいだったと思う。プライバシー的にはどうなのかしらと思うけど、私たちにとってはラッキーだったわ。

 事実聴取が終わった翌々日、その日も勉強をしていたんだけど、始めたばかりで、集中力が続かなかったの。それで、外でも見ようと思って顔を上げたら、彼女と目があった。それが、彼女との出会いよ。

 彼女は私よりも5歳年上だけど、人見知りだったから、慌てて顔を伏せたの。でもそのとき3歳だった私は、好奇心から、窓を開けて、彼女に手を振り続けた。しばらく振り続けたら、彼女も観念して、窓を開けてくれたの。そして、こんな会話をしたわ。


「お名前なんていうの?私はまなみだよ!!」


「えっと...ち、ちほ」


「ちほちゃん!!何歳なの?」


「8歳...だよ」


「うわぁ!お姉ちゃんだ!まなみまだ3歳だもん!よろしくね!」


「よろしく...お家、大丈夫なの?」


「ん?」


「なんか、パトカー、とか、色々、来てたけど...」


「うん!大丈夫だよ!」


「お母さんは、お家にいるの?」


「うん、いるよ。でもね、お父さんはいないの」


「あ、そっか、そうなんだ...ご飯、ちゃんと食べてる?」


「ううん、食べてないよ」


「え?!もらえないの?」


「ううん、まなみがいらないって言ったの」


「どうして?」


「んー...」


「と、とにかく!ご飯は食べなきゃダメだよ!私、お母さんから毎日パンを2個もらうんだけど、1個しか食べないから、あげる!」


そう言って彼女は、窓から私のいる部屋にパンを投げたの。まだ3歳だったからキャッチはできなかったけど、デスクまできちんと届いたパンを見て、すごく嬉しくなったの。


「ありがとう!!」


そう言って、彼女からの目も気にせずに、勢いよく食べたわ。久しぶりの食事って、なんであんなにおいしいのかしらね。涙が出そうになるくらいおいしかったのを覚えているわ。


「すっごくおいしい!!」


って言ったら彼女、


「良かった。じゃあ、明日からも毎日あげるね」


って言ってくれて、私は遠慮もなく頷いて。そこから毎日、お昼の12時に彼女からパンをもらって、30分間食べながら2人で話した。彼女はとにかく本を読むことが好きで、その話でほぼ毎日盛り上がってたんだけど、ある日、こんな会話をしたの。


「まなみちゃん」


「ん?」


「私ね、今日誕生日なの」


「そうなの?!何歳になったの?」


「9歳だよ」


「9歳か~...あれ、そういえば小学校のお年だよね?小学校って、午前中だけなの?それとも、午後遅い時間からなの?」


「...私、学校行ってないの」


「え!ダメだよちゃんと行かなきゃ!どうして行かないの?」


「...いじめ、られたから」


「いじめ??...ごめんね、私まだその言葉知らないわ。どういう意味か、教えて?」


「...んーと、学校とかで、何人かの人たちに、無視されたり、悪口言われたり、机に落書きされたり、靴をゴミ箱に入れられたり、暴力をふるわれたりすることだよ」


「え、そんなひどいことをする人たちがいるの?信じられない。たしかに、そんなことをされたら、私も学校に行きたくなくなると思うわ。ダメなんて言ってごめんなさい。やっぱりちほちゃんは正しいわ!」


「ふふ、ありがとう。...正しくは、ないんだけどね」


そう、彼女が人見知りになったのは、いじめによって人間不信に近い感情があったからなの。だからこの時、私は幼いなりに、何があっても彼女に優しくしようって決めたわ。


 その後、私がバイトを始めて、自分でパンを買うようになってからも、毎日彼女と話してた。

 そんなある日、私はパンを持って彼女を待っていたんだけど、12時を過ぎても、彼女が出てこなかったの。先に食べてしまおうかしらと思い始めた時、やっと彼女が出てきた。すぐに声を掛けようと思ったんだけど、彼女の顔を見たから、それはできなかった。

 彼女、泣いていたの。

彼女の泣いている姿なんて初めて見たし、何より心配だった私は、


「大丈夫?」


って声をかけた。そしたら彼女が、首を振って、


「違うの。悲しいんじゃないの」


って言って、幸せそうな顔で微笑んだから、その時初めて、彼女の涙は嬉し涙なんだって気付けた。それから、こんな会話をしたの。


「理由は詳しく言えないけど、なんで、お母さんがパンを毎日2個くれるか...その理由がわかったから...。それで、私、もう一度、午前中だけ、学校に行ってみようと思うの...」


「いじめは、大丈夫なの?」


「...うん、少しだけ不安だけど、もう怖くない気がする」


「...良かった。なぜか分からないけど、私、すごく嬉しい」


彼女の中で、何かが変わったのね。私は彼女が学校に行くことに、もちろん賛成したわ。彼女が、自分の殻から抜け出そうとする姿を見て、とても嬉しくなったから。

 その後、彼女は学校に行くようになったけど、午前中だけだから、お昼ご飯は毎日私と食べてくれた。私があの家から出ていくときまで。それもとても嬉しかった。


 彼女からは本当に多くのことを学んだし、これからも学ばせてもらうつもりよ。それに、彼女みたいな話し相手がいなかったら、今頃私、あの部屋で死んでいただろうから、彼女に救われたって、本当に、心から、そう思ってる。あぁ、沢山の人が、彼女の良さに気付いてくれたらいいなぁ。

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