　家に着くと、授業は終了したのだが、夕食作りまではまだまだ時間があったので、彼女が筋トレのメニューを教えてくれた。腹筋、背筋、腕立て伏せ、スクワットの4種類なのだが、回数は、最初からいきなり多いと身体を痛めてしまうということで、最初は1日5回を3セットずつ、最終的には1日30回を3セットずつにまで増やす予定だそうだ。ちなみに今日は、ジョギングで疲れてしまったことと、この後の作業のためというのを理由に、やらなくて良いことになった。

　そして、その作業というのが、子ども部屋づくりである。折角おもちゃを買っても、遊ぶ部屋がなければ意味がない、ということで俺は、使えそうな2階の部屋をひとつ、彼女に紹介した。

「ここ、一応物置部屋なんだけど、そんなに物が多い訳じゃないから、片付けも楽だし、使わないから」

と俺が言うと、彼女は、

「あら、良い部屋があるじゃない。良かったわ。ここにしましょう」

と言って、物の片付けを始めた。俺は、その家具等を各部屋に運ぶよう指示されたので、移動させ、ついでに大量のおもちゃを2階に全て運ばせる。

　そして元物置部屋を見てみると、30分ほどしか経っていないのに、10年以上放置され、埃を被っていた部屋が、ピカピカになっていた。唯一子ども部屋の家具として採用された収納棚も、きれいに拭かれている。そう、彼女は、この30分間で、部屋の掃除機掛けと雑巾掛けを一人で終わらせたのだ。思わず、

「はやっ」

と言うと、

「私、汚れていれば汚れているほど、掃除のスイッチが入る人なのよ」

と彼女は言った。そんな彼女を、俺はやっぱりすごいと思う。

　その後、いつ持ってきたのかわからない壁紙を二人で貼り、いつ持ってきたのかわからないカーペットを二人で敷き、買ってきたおもちゃを収納棚や周辺に良い感じに配置すると、あっという間に女の子の憧れが詰まった部屋(多分)が完成した。

　すると彼女は、

「あとはテーブルね」

と言って、元々この部屋に置かれ、彼女が保留にしていた、薄いベージュ色をしたテーブルを部屋の中心に配置した。こうして、本当に部屋が完成した。テーブルが、結構部屋の雰囲気に馴染んでいたので、ちょうど良いのがあって良かったなぁと思った。

　その後も、平凡で異常な日々が続いた。授業も毎日続き、俺の体力はどんどん向上し、あの子との仲もどんどん深まった。実は、あの子に公園で会う際、お菓子をあげたら良いんじゃないかと彼女に聞いたのだが、彼女に、

「あ～、男の人ってすぐ子どもにお菓子あげてなついてもらおうとするわよね。でもそれ、逆効果だから。確かにあげればあげるほど、寄ってくるようにはなるけど、それはお菓子目当て。つまり、お菓子をあげればあげるほど、子どもはお菓子に興味をもち、くれる人への興味をなくすのよ。興味をもってもらいたいのはお菓子じゃなくて、あくまであなたなんだから、何かで釣ろうなんて考えちゃダメよ」

と言われ、かなり驚いた。授業というだけあって、学ぶことは多く、この他にも沢山のことを学んだ。

　このまま良い方向に向かうと思われた彼女との同居生活だったが、あの子との行為予定日まであと3日という日、ある事件が起こった。