第3話 ロリ先生の来訪と野菜の知識

 早足で歩いて行く彼女に何とか追い付くと、家まで案内し、中に入れてあげた。


「なぁんだ、ちゃんとした家じゃない。テントだったらどうしようかと思ったわ。しかも片付いてるし。もしかして意外にそういう感じ?」


「いや、この家は俺を助けてくれた人が住んでた家だから立派なんだよ。今は亡くなってるけどね。片付いてるのは、俺がほとんど家を使ってないから」


ふむふむそういうことかと頷く彼女に、


「そうだ、夜ご飯。家に帰んないなら食べてく?そろそろお腹空いたよね」


と言うと、


「いや、まだ4時よ?」


と言われたので、


「俺はいつも公園で4時に夕飯にするんだ。5時になると、子ども達が帰っちゃうからね」 


と言った。すると彼女は、少し考えてから、


「私は平気だけど、あなたがお腹空きすぎて倒れても困るから、いいわ、ご飯にしましょう」


と言ったので、


「待ってて、コンビニでおにぎり買ってくるから」


と言って、出掛けようとした。すると、


「待って、あなたおそらく毎日おにぎりでしょ。偏った食事は体に悪いわよ?」


と彼女に言われ、確かにと思った。すると彼女は続けて、


「コンビニじゃなくてスーパーに行きましょう。その方が沢山食べ物がある。お金はあるわよね?」


と言ったので、


「お金はあるけど、スーパーなんて近くにあるの?」


と聞くと、


「この辺り、意外に色々あるのよ?スーパーも、歩いて10分ぐらいで着くわ。行きましょ」


と、彼女は上着を着て早々に玄関へ行ってしまう。俺が急いであとから家を出て、ドアに鍵をかける。するといきなり、


「手を握って」


と言われた。一気に心臓が早くなる。


「手を繋いでないと、本当に誘拐犯だと思われるわよ?親子感出すために、これくらいしておかないと」


と言って差し出された手には、きちんと手袋がはめられていた。いや素手じゃないんかい。しかも、ピンク色の可愛いやつ。俺はちょっぴり残念に思いながらも、優しく手を握った。彼女の手は、温かかった。

 その後、本当に10分ぐらいでスーパーに着いた。かなり人が多い。夕食作りのために、主婦たちが大勢買い物に来ているのだ。


「いい?いざという時は、あなたをお父さん役にするから。驚かずに、自然に反応してよ?」


と彼女が小声で言った。


「わ、分かった。頑張る」


とは言ったものの、正直自信は無かった。独身男性に急にとんでもなく可愛い娘が出来たなんて、脳が追い付かないだろう。俺はカートに買い物かごを入れ、カートをおす。


「私が進む方向を決めるから」


と彼女は言って、カートを掴んだ。傍から見れば、女の子がカートに手を添えているだけのように見えるだろうが、彼女はかなりの力でカートの方向を変える。俺はその動きに合わせるのに精一杯だ。すると彼女は、野菜コーナーでカートを止めさせ、


「にんじん」


と呟いた。俺が何のことかさっぱり分からず混乱していると、


「に·ん·じ·ん!早く取って!」


と彼女は小声で言った。俺が言われた通りにんじんを取ると、


「違う!もっと赤色が濃いやつで、表面の凹凸が少ないやつ!あと、茎の切り口の軸が小さいやつね!」


何を言ってるか分からないなりにできるだけ彼女の言っているものに近いと思われるものを取ると、彼女は、いいんじゃない、と言って、再びカートを掴んだ。俺がカートを進め始めると、


「子どもが商品選ぶより、大人が選ぶ方が自然でしょ?だから、私が言ったものを、あなたが取って」


と彼女は言って、またカートを止めた。


「玉ねぎ」


と言われたので、俺が玉ねぎを見ると、


「硬めで太ってて、首はシュッとなってるやつ。表面の皮が乾燥していて、傷が無いやつ。できるだけ重みがある方がいいわ」


と言われた。そんな調子で買い物を進め、こんにゃくコーナーに来た。


「しらたきと糸こん。どちらがお好き?」


「違いがわからん」

と、苦笑いしながら答えると、


「まあ物自体はどちらも同じよ。ただ、一般に、しらたきの方が細いことが多いわ。ってことでしらたき」


と彼女は言った。そして彼女が再びカートを掴もうとすると、

(ドンッ)

60歳ぐらいのおばさんが彼女にぶつかり、彼女は膝をついた。


「あらら、ごめんなさいお嬢ちゃん。膝痛くなかった?...って、あら、ずいぶん可愛いわね~。お父さんとお買い物?」


とおばさんが彼女の膝をさすりながら聞くと、


「うん!」


と彼女は答えたのだが、その瞬間、俺は彼女を抱きしめたい!と思った...だって...声が...声が...!可愛すぎる!!マジで!!彼女は普通の子どもと思わせるため、ロリ声をつくっていたのだが、その声が最高に可愛い!!


「お父さんがご飯作るの?」


とおばさんが聞くと、彼女は、


「うん。とってもおいしいご飯作ってくれるんだよ。ねぇ~パパ?」


と、振り向いた彼女を見て驚いた。なんと彼女は、ロリ顔まで作っていたのだ!

(その顔と声で「パパ?」とか言わないで~!!可愛すぎる~!!死ぬ~!!!)


「う、う、うん。そ、そうだよ?」


と俺が何とか答えると、おばさんは、


「すみませんね。周りを見てなくて。」


と言った。


「いえいえ、大丈夫です」


と俺が答えると、おばさんはにっこり笑って、じゃあね、と彼女に手を振った。彼女は笑みを浮かべ、控えめに手を振り返した。すると以前の顔と声に戻った彼女が、


「お見苦しいものを見せて失礼。気持ち悪くなかった?」


と聞いたので、


「気持ち悪い?!逆!最高だった。マジで可愛かった」


と俺が言うと、彼女は、


「気持ち悪いのはあなたの方だったわね。それなら良かった。あなたがロリコンで助かったわ」


と言った。頬が少し赤い。


「ロリコンじゃなくてもあれは可愛いってなると思うよ?」


と俺は言ったのだが、お得意の無視が発動され、レジまでカートを引っ張られた。


「お金はあるのよね?」


「うん。千円。」


すると彼女は、


「それでこの量が買えるとでも思った?本当、もう少し勉強しなさいよ。色々と」


と言って、肩に掛けていた小さな白いバックを開けた。彼女は周りに見えないよう隠していたが、俺は見てしまった。大量の一万円札の札束を。


「これ使って。」


と、そのうち1枚の一万円札が渡された。


「いや、でも...」


と俺が言うと、


「いいから。これは私の食費でもあるの」


と言われ、会計が次だったこともあって、俺はやむなく受け取った。

 会計を済ませ、店から出ると、俺は右手に買い物袋を持ち、左手で彼女の手を握った。正確には、彼女の「手袋」を握った。


「さっき、お金ごめん。家にならいくらでもあるから、後で返すね」


「その必要は無いわ。さっきの買い物は、私が買いたいものを強要して買わせたんだから、支払いの義務は本来私にあるの。それに、お金なら沢山あるし」


「そうはいかないよ。大体、いくら持ってるんだ?」


「基本的にいつも100万は持つようにしてるわ」


「そ、そんな大金、持ち歩いちゃダメだよ!てか、どこのお嬢様だよ!」


「あまり大きな声出さないで!金目当ての輩が来るかも知れないでしょ!」


「確かに!ごめん!」


なんて話をしている内に、無事家に着いた。

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