第7話 なんでここまで続けられたのか? という疑問に対する簡単な回答、そして公募と小説投稿サイトの雑感
さて、読者の方には、なんでこいつはいつまでも、十年以上もアマチュアで創作活動をしているんだ? という疑問があると思います。カクヨムでも、PV、フォロワー、星、いいね、どれも特別に多いわけではありません。むしろすごく少ないです。
実は、他の利用者と僕が違うのかもしれませんが、僕がカクヨムをいじっているのは、純粋にコンテスト目当てです。それも読者選考のないコンテストです。なので、SNSで宣伝することもなければ、利用者と相互に評価しあうような動きもほとんどしていません。
では、なんでその地獄みたいな場所、何を投稿してもほとんど誰にも読まれない環境に耐えられるのか? という疑問があるとして、自分でもびっくりですが、確信があるから、となります。
あまり情報を詳細に書くといろいろと露見しそうですが、かれこれ十年近く前に、とある公募でいい場所まで自分の作品が進みました。それまでにたまに一次選考を通過していたのですが、この展開は予想外でした。ただ、今、僕がここでグダグダしていることが示す通り、最終的には落選し、本にはなりませんでしたし、僕がプロになることもありませんでした。しかしそういうストーリーを描ける、ということは理解できたわけです。
一番初め、物語を書き始めた時は、たぶん小説家になれるだろう、と考えていました。公募で一次落選を続けている間も、小説家になってやる、それ以外に道はない、みたいに考えていましたね。それでも挫けそうになった時、さすがに見切りをつけるべきか、などと思っていた時に、先述の結果が転がり込んできた。その瞬間から、僕の「物語を書く」という作業は、書いていればいつかは結果が出る、という感覚になりました。だから十年を大幅に過ぎても、書いていられたし、今も書いています。
あの作品以降、一次選考は抜けても、二次選考で落ちたりして、他にもパソコンを買い替えたりして、一時期、書く作業が停止しましたが、不思議と、作家になりたい気持ちは変わらなかったし、なろうと思えばなれると、変な確信だけは消えませんでした。あるいは今も、十代の頃の自分のまま、おめでたいのかもしれませんね。
ただ重要なのは、そのいいところで落選した物語は、書いている最中も、直したりしていても、特別にいい作品だな、とは感じませんでした。なので、その点では、いきなりの評価が、本当に寝耳に水だった。どこがそんなに評価されたのか、よく知りませんが、この疑問を収める答えはひとつしかありません。つまり、作者にはわからない魅力が作品にあった。それも意図せずに、その魅力が生まれてしまった。
いきなりですが、石川智晶さんという方の楽曲で「不完全燃焼」という曲があります。この曲の歌詞の中で、「予想外に際立つ力を、可能性と呼ぶのだけはやめてくれ」というフレーズがある。この曲は好きで聞いていたけど、歌詞のこの部分の意味にはっきり気づいたのは、かなり遅れてからです。
あまり想像できませんが、もし僕があの瞬間、十年前の場面で、賞をとって、本を出版するための作業が始まったとして、それを完璧にこなせたか、自信がない。つまり、僕は自分でも気づかないままに物語を書いて、予想外にそれが際立ってしまった、ということです。そして僕の物語に、出版社は可能性を見ている。でも、僕にその可能性に見合った力が、さて、あっただろうか。そういうことを、落選の結果を知ってから、だいぶ考えました。それからさらに時間が経つと、もっとうまくやれたかもしれない、と思い始めましたが。
公募に小説を送ると、最近では評価シートがもらえる賞もいくつもありますが、基本的に一次選考で落選するのが大半で、自分の作品はダメだった、という感覚が残るだけになります。どこが悪かったのかわからないし、これは評価シートがあってもですが、どこを直したらいいかも、正確にはわからない。おそらく、ここを直せば良い、みたいに簡単に済まないレベルで酷いために一次落選なんでしょうね。そんなわけで、一次選考に残って、自分の作品は最悪ではないんだな、とわかる感じです。しかしネット小説は、その場で数字で自分への評価がわかります。それが投稿サイトの大きな魅力ではあります。ありますが、先述の通り、僕はあまり他の利用者と接近しないようになっています。
これはあまりにも傲慢で、なんで投稿サイトを利用しているのか、疑われそうなものですが、紙の本を買うとき、あなたは何を見て買いますか? タイトルが面白そう、あらすじが面白そう、表紙のデザインがかっこいい、好きな作家だから、好きなジャンルだから、誰かが紹介したから、そんな具合だと思います。では、お友達が書いた本だから買う、ということがありますか? 僕の知り合いにプロのライトノベル作家になった方がいますが、最初こそ、その方の本を買いましたが、結局、買わなくなってしまいました。僕の趣味に合う作品ではないし、反発とかそういう感情はなしに、読みたいものではなかった。あるいは本当にその方のことを思えば、読まずとも本を買うべき、売り上げに貢献するのが人情かもしれませんが、できませんでした。
さて、話をカクヨムの場に戻しますが、フォローされたいからフォローする、星が欲しいから星をつける、いいねが欲しいからいいねをつける、あるいは逆に、フォローされたからフォローする、星を付けてもらえたから星をつける、いいねをもらえたらかいいねをつける、そういう展開が、カクヨムには、どうやら、大なり小なり、ある。これが果たして、作者や作品に対する、正当な評価なのか、僕は疑ってしまう。
仮にですが、小学校のクラスで写生大会で絵を描いたとする。みんな似たような画力で絵を描いているところで、出来上がった絵を前にして、先生が「クラスで一番を決めましょう、投票で」と言い出す。さて、子供たちはめいめいに投票しますが、どこかの五、六人の集団が、集団のリーダー格の児童に組織票を入れれば、その五票なりを確実に集めた児童が、クラスの最優秀賞になってしまうかもしれない。これは果たして正当な評価なのか?
僕が生きてきた公募という世界は、はっきり言って処刑台に作品を送るようなものでした。大抵はギロチンの一撃で首が飛びます。情け容赦なく。それが嫌な人も大勢いると思いますし、そういう人は投稿サイトで、集団を作って評価し合えば、あるいは満足かもしれない。しかし、それは僕の中にある評価とは、どこか違う、ということをここまで書いてきましたが、僕が十年以上を生き延びれたように、あるいはカクヨムのおかげで十年やそれ以上、生き残るアマチュア作家の方が生まれるかもしれない、とも思います。長く続けるには、とにかく、自分の作品が評価された、という体験ができるかできないか、ということに尽きるし、そこに至る前は、自分を信じられるか、ということになるかと、想像します。
僕が公募に投稿していてよかったな、と思うのは、投稿サイトにありがちな、見てもらえないと評価されない、もっと言えば単純に、見てもらえない、大量の作品の中に埋もれて流れていってしまう、という感覚に、逆に陥らなかったことですね。そもそも公募というものは、見られないという状態に限りなく近いのが、普通だったのです。公募は誰かしらが読んでゴミはゴミとして切って捨てている。投稿を始めて最初の頃は、なんとなく、実は原稿が届いていないのでは? と思ったりしましたが、一次選考に残った時、確かに公募は人が読んでくれている、と実感できました。もちろん、大勢が読んだわけではなく、せいぜい、一人とか二人とかでしょう。それでも一次選考を通過して名前がどこかに出れば、十分な満足がある。もちろん、二次選考では落ちる。ただ、見てもらえたし、評価もしてもらえた、という実感はあります。この数人の読者と、一次通過という結果は、投稿サイトではなかなか味わえない、格別なものがあります。
投稿サイトでは、読者が一人だの五人だと十人だのなんて、いないも同然で、よく読まれるユーザーは一つのエピソードで何百、何千みたいなPV数になっていますが、物語を書き始めて不安を感じている方は、あまり数字を意識しないほうがいいでしょう。見てもらえない、読んでもらえない、評価されない、やっぱり自分はダメなんだ、という発想に陥るのが、一番よくない。その点で、僕は公募が主戦場だったので、読んでもらえているかわからない、評価されない、自分はダメ、が、普通だった。それに考えてみれば、公募なんて数百の原稿が集まって、一次選考を二割が通過するとしても、百をゆうに超える原稿が、まったく見向きもされずに、消えていく。タイトルも、作者の名前も知られずにです。公募はそれくらい残酷で、今でも、よく公募で落ち続けても書き続けたな、と自分に呆れてしまいます。
実際のところ、投稿サイトでは僕はまったく認識されていないですが、その不遇というか、評価されない、自分はダメなのか、という発想を、意識しないというか、その発想そのものから逃げることができている。それは単純に、過去に公募で評価されたから、ネット小説でもいつか、誰かが僕を見つけるだろう、と楽観できるわけです。ものすごく幸運なことに、そういうお守りのようなもの、支えを、公募は僕に与えてくれました。これができる点が、見てもらえない、という泥沼にズブズブとはまりながら、体がほとんど沈んでも、平然としていられる、という、公募で競争したメリット、競争で獲得した、あるいは「自負」とで呼べるものかもしれません。
次は少し、設定の作り方について、考えましょう。
では、次回に続きます。
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