3. マイケルの洞察

 キテクレテアリガトゴザイマース! とマイケルは言った。


「なぜまだ下手なふりをするんです?」


「誰もがいつまでも初心者でありたいものです。叶うことならば」


 叶わない、ということを知っている者の口ぶりだった。そう、僕たちは日常に追い立てられ、なりたくもないのに大人になってしまう。


「今日はいったい?」


「日本の婚姻制度について、秀、あなたの意見を聞きたいのです」


 罠だ。直感的に理解した。この男は、真梨香の結婚式のことを聞き出そうとしている。


 何でもお見通しだ、とマイケルは笑った。


「そう警戒しなくてもいい。ただ、気になっただけです。マリカの結婚式に行ったことを後悔しているのではないかとね」


 後悔? 後悔なんて。あのキスさえなければ、いや、僕は――。


「あなたたちを引き合わせたのは他ならぬ私です。咄嗟の思い付き、軽いジョーク、そんなつもりでした。あなたは面白い人だ。だからパーティに参加してほしかったのです」


 ふう、と息をついたのは、僕かマイケルか分からなかった。


「そこで2人は出会ってしまった。そして、お互いを苦しめている」


 決して抱いてはいけない感情に、苛まれている。


 「恋愛という概念は、西洋から持ち込まれたものです」 

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