114:反撃
「ジェノサイダーは最強の生物兵器だ。あの強化したアビスウォーカーを倒した真紅の魔剣士フリックが手も足も出せないでいるぞ。いいぞ、もっとやれ!」
一番奥で白いローブを着て、マスクをつけた男が大きな声をあげて怪物たちをけしかけていた。
あの姿からすると、白いローブの男は鉱山の連中の仲間だよな。
アビスウォーカーを操る謎の異国の集団。
大襲来後、インバハネスの南部の鉱山に姿を見せ始め、近衛騎士団やラドクリフ家と繋がっているかもしれないとか言ってた連中だ。
仲間の敵討ちとして俺たちを追ってきてたのだろうか?
怪物たちは男の声に反応するように、俺への攻撃の密度を上げてくる。
反応速度、攻撃の正確さ、身のこなし、全部一級品でその上硬い。
さらに凶悪な武器も持ってるとなると、こんなのがアビスウォーカーみたいに国中に溢れたら、大襲来どころの騒ぎじゃなくなっちまう。
怪物たちの鋭い攻撃に晒されながらも、俺はなんとか回避を続け、攻撃できる隙を探っていく。
別の一体が再び右腕を構えて、攻撃をしようとするのが目に飛び込んできた。
この距離だと、分身たちでも狙いを外させるのは厳しい。
だったら、地面ごと相手を転がすしかないよな。
右腕の筒から発せられていた青白い光がおさまる瞬間を狙い、俺は魔法を詠唱する。
「石の壁となりて、我が指が示す先に発現せよ。
右腕が煌めいた瞬間、地面から石の壁が勢いよく盛り上がり怪物の足元をすくって転倒させていた。
撃ち出された飛来物は狙いが逸れると、近くの木々を貫通してなぎ倒し山肌に命中したようで、暗い中でも盛大な土煙が上がっているのが見えた。
『マスター、チャンスです! ディーレが囮を出します! ■▲〇※■▲〇※』
ディーレが高速詠唱をすると、土の塊が盛り上がり、普通のゴーレムたちが生成されていく。
動きも形もまだまだだけど、相手の行動を留めるくらいの足止めはできるはずか。
動き出したディーレのゴーレムと、俺の分身を倒れていない他の二体の足止めに使う。
分身とゴーレムにまとわりつかれた怪物は、本体である俺に近寄れなくなっていた。
「よし! あの倒れた奴からまずは武器を潰す! 大地に茂る蔦草よ、
詠唱した魔法が発動すると、送り込んだ
怪物は必死になって蔦草を引きちぎろうとするが、柔軟性を持つ蔦草は相手を拘束して放さないままであった。
おし、動きを止めた。
このまま、あいつの右腕の武器を壊す!
俺は一気に駆け寄ると、蔦草に絡まりもがく怪物の右腕に付いた筒状の物に触れ、魔法を詠唱した。
「炎と大気の競演よ、輝ける炎と成りて、わが敵を燃やし尽くせ!
「ガァアアアアアアアアア!!!」
怪物の右腕で発動した魔法は、眩しい光とともに輝く炎を吹き上げて、筒状の武器に膨大な熱を送り込んでいく。
超高熱を送り込まれた筒状の武器は赤熱して真っ赤に染まると、変形を始め、膨らんだかと思うと爆発した。
「――っ!?」
状況を見ていた俺は壊せるとは思っていたが、まさか爆発するとは思わず、爆発の衝撃波で怪物の上から吹き飛ばされていた。
「あぶねー、あの武器を燃やすと爆発するのか。
『でも、武器は壊せました! けど――ピンピンしてますっ!』
武器を破壊された怪物は、拘束していた蔦草を引きちぎると、俺に対して怒りをぶつけるように大きな口を開いて吠えた。
と同時に、例の赤い光が俺の胸に灯る。
うっそだろっ! あんなところに武器を!?
アビスウォーカーたちが持ってたのは筒状の物だったのに!?
赤い光は、耳元まで大きく裂けた口を開いた怪物の喉から出ていた。
避けないと――。
けど、この位置は場所が悪い。
避けたら村に着弾してしまう。
胸もとに注がれた赤い光を見て、回避するかどうか俺の中で迷いが生じていた。
かわせば避難活動を支援しているスザーナや消火活動をしているノエリアたちなどがいる村に当たりかねない。
「フリック様! 消火と救援活動は完了しました。すぐに援護しますっ!」
迷っていた俺に声をかけてきたのは、ディモルに乗ったノエリアだった。
「熱く燃えたる炎よ、あらゆる物を焼き尽くす極炎と成りてわが敵を消し去れ!
ディモルに乗ったまま詠唱を始めたノエリアの杖先に小さな炎が灯ったかと思うと、次の瞬間には爆発的に巨大な火球となってゆっくりと落ちてきた。
「ちょっ! ノエリア! それって、炎の最上位魔法だろ!?」
「ディモルが相手の怪物がすごく強いと教えてくれたので、魔力を惜しんでいる状況ではないはずです」
「いやだけど――」
ノエリアの放った
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