第2話 二十年に一度の『合』のとき……

「それなのに、二十年に一度の『合』のときを逃してしまったのだ」

 クラレンスは、イライラと、召喚室内をうろついた。かがり火がじじっと燃えている。薄暗い部屋の中で、魔方陣がうっすらと光っている。

 二十年に一度の『合』のとき。木星と土星の重なるその時に、異世界への魔法の扉が開かれる。それをねらって、魔法使いが勇者召喚を試みたのである。

 結果は、まるで期待外れに終わった。魔方陣の中には、だれも現れなかったのである。

「こうしている間にも、無辜の民が人食い鬼に食われてしまう」

 クラレンスは、あごひげの先っぽを口にくわえた。

「国王に知られたら、わしとおまえも、命はないぞ」

「……それは困るなぁ」

 トイレの場所がわからない、みたいなのんびりした口調のロークス。クラレンスは、胃が痛くなったようだった。

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