春と秋の会議

@nakamichiko

第1話増えた参加者


 「会議」と言うものの定義が、多くのものが意見を出し合い、何かを決めることとするならば、例えそうしている者が「人間でない」場合でももちろんこう表現できるはずである。


 ある大陸の海沿いの岩礁地帯に、翼をもつ者たちが集まっていた。彼らはここを中継地点として、この星で子孫を残すという形で生き抜くため、また翼あることを楽しむために。

そして彼らがこの前の春に集まった時の議題と同じことを、今秋も、話し合いせざるを得ず、また早急に結論も出さねばならなかった。


「鳥がそのような事をするわけがない」

と人間が言ったところで、それは彼らが生まれる遥か昔の事、祖先がネズミであった頃の話である。




「困ったことだ、また好きな木の実を付ける樹が無くなってしまった」

「こっちは草だ。たくさんあったから大丈夫だろうと思ったのだが、温かになって子育てする場所に移動したら、そこが全滅だ、雛も一羽しか育たなかった」


 尻尾の長い鳥、短い鳥、比較的小さなものが多かったのだが、そこには大きな体、海の魚を食べるものも、そうして「小鳥」を食べる鳥ですら、何種類かが代表のように集まっていた。

 

 春の会議では、人間が言うところの猛禽の姿はなかった。小鳥たちが「木の実がない、草の実がない」と騒いでいることは知っていたが、自分たちには関係の無いことであろうと思っていたのだ。しかし小鳥だけではない、野ネズミも急激に数を減らし、海の魚も激減してしまった。理由はわかっていた。

植物たちが

「戦争」を始めたからだった。

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