第32話:知りたくなかった【真相】。
「なんか奈那変じゃなかった?」
「変じゃないよ! アレは当然の反応だと思う!」
なんだかやたらと力の入った返事が返ってきたぞなんなんだこいつ。
駅から出て商店街を歩きながらルキヤの方をチラっと見てみると、なんだかやたらとご機嫌らしくにっこにこしてる。
こうしてると本当に可愛いなぁおい。
男だって事を忘れそうになってしまう。
こいつがこの状態であれやこれな本が出来るって言うんだったら是非見て見たいね。
そこに私がかかわらなければなおの事いいんだけど。
約束してしまった以上仕方ない。
何せお金の為である。
少しばかり背徳感というか罪悪感が無い訳じゃないけど、別に私自身は悪い事してるわけじゃないし?
ただうちの生徒会長がエロ本を書くってだけだしね?
私達をネタにして本を作るっていうんだからそれの分け前をもらうのは当然の権利だからね?
そう、だから何も悪くないのだ。間違いない。
「いやぁ……それにしても絵菜ちゃんはよくやったよ」
……何の話だ? 私何かしたか?
……というかバタバタしていて完全にルキヤとの約束の事を忘れていた……。
今はなんだかご機嫌でその件を忘れてるみたいだからそっとしておこう。
思い出されたら何を言われるか分かったもんじゃ……。
「ボクとの約束守ってくれてありがとね♪ しかも想定よりすごいの見せてくれて……あぁ……思い出すだけでテンションが上がっちゃうよ」
「……は?」
約束を、守った?
「どゆこと?」
「またまた照れちゃって~。良い物見せてもらって嬉しいよボクは」
……本気でどういう事だろう。
私がルキヤとの約束を守ったって事は……。
「私が、奈那にキスしたって事?」
「え、何を改まってそんな事言ってるの? 自分からしといて……変なの」
「待ってくれ……ちょっと考えさせてくれ」
ルキヤは首を傾げて不思議そうな瞳を向けてくる。
私は本気で何を言ってるのか分かってないんだけど……。
もしかしてアレか?
奈那が駅のホームで転びそうになって私が受け止めた時の事か?
「もしかしてルキヤが行ってるのは犬袋の駅で顔面衝突した時の事か?」
「顔面衝突……? ああ、確かにちょっと激しめだったもんね」
やっぱり。アレをキスとして認識してくれたのならありがたい。
全然そんな事なかったっていうのにあのトラブルがあったおかげでこいつにはキスに見えたって事だろう。
「まさか絵菜ちゃんが……ほっぺとか言ってたのに口にキスするなんて思って無かったからさ~ほんとに吃驚しちゃったよ」
「……は?」
「どうかした? 絵菜ちゃんめっちゃ恥ずかしがってたよね……普段あんなに積極的なのにいざキスしたらあんなに恥ずかしがるなんて……尊い……」
「待て」
ルキヤは相変わらずうっとりした顔でぽけーっとしている。
「待て待て待て待て!! 待ってくれ!!」
「何さ。せっかく余韻に浸ってたのに……」
「アレは……口同士、だったのか……?」
「そうだよ? 思いっきり唇と唇だったよ。かなり激しかったから少し痛かったかもしれないけど、ああいうトラブルに見せかけて唇奪いに行くとか流石だよ絵菜ちゃん! ボクは絵菜ちゃんを甘く見てた!」
「……嘘だろ……?」
待て待て。よく思い出せ……。
あの時、奈那を受け止めようとして顔面同士でがちんっておもいっきりぶつかって……。
確かに私は硬い物に口が当たって、唇が切れたかもって心配したくらいだった。
「唇に触れたっていうんだったらあの硬いのは何だったんだよ」
「……は?」
「いや、は? じゃなくてさ……」
「だから歯だってば」
「えっ」
……歯、だと……?
あの時奈那の口と私の口が思い切りぶつかって、お互いの歯が唇越しに衝突したからあんなに痛かったのか……?
やたら硬い物に当たった感じがしたからおかしいとは思ってたんだ……。
「マジかよ……」
「マジだよぐっじょぶ!」
ぐっじょぶじゃあねーんだわ。
「私……明日どんな顔して奈那に会えばいいんだ……」
言われてみればあの接触から奈那の様子がおかしかった。
奈那は私とキスしちゃったって認識がちゃんとあって、それであんな事になっていたって事か?
あれはどういう反応なんだ?
「もしかしてめちゃくちゃ嫌がってたんじゃ……帰り際そっけなかったし……」
「ばかなの?」
「馬鹿ちゃうわ!」
「いいや、馬鹿だね。あの乙女が恥ずかしがってる様子も理解できないなんて馬鹿じゃなかったらアホだよ!」
「そうだよアホだよ! 私はもう何もわからん……」
奈那が恥ずかしがってた?
「仮に本当にキスしちゃったんだとしてもあんなの完全に接触事故じゃないか。それに奈那はいつもふざけて私にくっついてくるんだからあれくらいどうって事ないだろ」
私はかなり気が動転してるけどな!
「やっぱり馬鹿でアホでトンヌラだなぁ」
とんぬらって何。
「普段ふざけて絵菜ちゃんにひっついたりしてるけど一定のラインをこえたりしないでしょ? それは奈那ちゃんだって超えていいかどうか迷ってるラインなんだよ。それを絵菜ちゃんがあっさり超えていきなりキスなんてするから奈那ちゃんは恥ずかしさのあまり……」
おいおい冗談だと言ってくれ。
それがただの見当違いなら構わない。いや、気まずいからあまり良くは無いんだけど、そんな事よりも……。
もしルキヤの言う事が本当だったとしたら、だ。
私は奈那にとってなんなんだ……?
いつもの彼女の発言には、本気の言葉が含まれていたっていうのか……?
家に到着し、ルキヤを着替えさせて解散した後も私はその事ばかり考えていた。
そして、その夜は一睡も出来なかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます