第6話〜桃太郎の出発〜
その後。
おじいさんは桃太郎が鬼ヶ島へ行く事は許したものの、準備だけは万全にしなければならないということで、出発はしばらく待つ様に言いつけました。
それから3ヶ月後ーーー
「おじいさん。あれからもう3ヶ月が経ちました。いつまで山で修行をしなければならないのですか?」
おじいさんは部屋で、団子をこねており、
ふと横を見るといつもの通り、薬草を混ぜ合わせてすり潰したものもあります。
薬を作る傍らで桃太郎の弁当も作っているのでしょう。
おじいさんは団子を作りながら難しい顔をして押し黙っています。
その様子に焦れた桃太郎がまた何かを言おうとした時、おじいさんが良し出来たと言って桃太郎の方へ向き直りました。
「桃太郎や。お前はこの3ヶ月山籠りをして、今や見違えるほどになった。
今なら鬼ヶ島へ行っても鬼どもに不覚は取らんじゃろう。」
その言葉に桃太郎の表情はパッと明るくなります。
そんな桃太郎を見ておじいさんはにこっと微笑んだ後、今しがた作り上げた団子を差し出しました。
「これを持っていけ。ワシが心を込めて作ったきびだんごじゃ。旅の道中で食べると良い。」
桃太郎はきびだんごを受け取ると、早速旅の支度に取り掛かりました。
こうして桃太郎は、ついに出発する事になったのです。
ーーーー
「それではおじいさん。行ってきます。」
朝、家の前。
鎧、刀を身につけた桃太郎は見違えるほどに立派でした。
おじいさんはそんな桃太郎を感心した様に眺めていましたが、ふと思い出した様に
「そうだ、桃太郎や。ワシは村の者に話をつけて、船を用意しておこう。一足先に海岸で船を用意して待っておる故、そこでお前を見送ろうぞ。」
「…おじいさん。何から何まで…本当にありがとうございます。」
こうして桃太郎とおじいさんはひとまず別れたのでした。
桃太郎は旅の道中、おじいさんから貰ったきびだんごを一つ、ポイと口の中に放り込みました。
いつも薬草を採っていたおじいさんが作ったからでしょうか、きびだんごは土臭い薬草の匂いが染み付いていました。
その味に、桃太郎はいつの日か、おじいさんに優しく抱きしめてもらった日のことを思い出しました。
そういえば、あの日もおじいさんからは、このきびだんごと同じ土臭い薬草の匂いがしていたなーーー
このきびだんごは、おじいさんの、味だーーー
そんな事を考えながら歩いていると、桃太郎はだんだんとワクワクした気持ちになってきました。
鬼ヶ島への道のりはまだ少し遠いですが、桃太郎は勇んで歩んでいくのでした。
「よーし!鬼どもよ、覚悟するんだ。
僕が一つ鬼ヶ島へ行って、鬼退治しようじゃないか!」
桃太郎の旅は、まだ始まったばかりです。
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