第99話

「そうだ。朱里、こっちに来てくれないか?」


「なに?」


黒炎くんは窓のほうに近づいて、手招きをする。


「ここは最上階のすぐ下の階だから、夜景が綺麗だぞ」


そういってカーテンを開ける黒炎くん。そこには、黒炎くんが言っていたとおり、とても綺麗な夜景が広がっていた。キラキラと光っている。こんな贅沢をして良いのかな。


「朱里……メリークリスマス。クリスマス当日には少しだけ早いが、これは俺からのクリスマスプレゼントだ」


黒炎くんは私の前に小さな紙袋を差し出した。それは可愛くラッピングされている。


「え!? わ、どうしよう……! 私、なにも用意出来てない」


すっかり忘れていた。今日がイブだってことは覚えていたんだけど、プレゼントのことは頭になかった。昨日まで署名活動やら学校とかで忙しかったから。って、そんなの言い訳にしかならない。


だって、げんに黒炎くんはこうしてクリスマスプレゼントを用意しているから。


「そんなの気にしなくていい。俺がしたくてしてるだけだ。……それより開けてみてくれないか?」


「うん」


なんて優しい言葉をかけてくれるんだろう。黒炎くんのその言葉だけでも私にとっては十分すぎる。


紙袋を開けると、そこに入っていたのは……銀色の王冠クラウンのネックレス。王冠の中には、ハート型の赤色の宝石が入っていた。


「これって……」


「王道だってわかってるんだけどな。指輪だったり、高いものだったり色々考えていたんだが、結局こんなものになってしまった」


「ううん、すっごく嬉しい。ありがとう、黒炎くん」


「ああ、喜んでくれてるなら良かった。王冠はお守りで、ハートは永遠の愛って意味が込められているらしい。って、買ってから調べたんだぞ? そしたら、そんな意味だったんだ」


耳まで真っ赤な黒炎くん。真剣に選んでくれたんだよね。それで、このネックレスに込められた意味を知った黒炎くんの表情を見てみたかったな。そのことを思い出して今も赤くなっているし。なんだか可愛いなぁ。


「私はてっきり赤だから黒炎くん色なのかなって思ってたよ」


「俺色ってなんだよ」


「黒炎くんって炎の名前でしょ? これも赤色だから」


「それも気付かなかった」


無自覚でコレを選んでくれたっていうの? どうしよう。私まで、急に恥ずかしくなってきた。

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