9章 ハロウィンはドキドキがいっぱいで
第67話
今でも時々、信じられない。実は夢なんじゃないかってそう思う。
黒炎くんの彼女になってから一週間が経った。
彼女になってから手を繋いだり、キスをしたり、イチャイチャラブラブなリア充ライフが待ってると思うじゃん、普通は。だけど、それはあくまでも他人の話。
黒炎くんにはその“普通”ってのが通用しないわけで……。
『最初はゲームのアカリが好きだった。だけど、だんだんと現実の朱里と話したり、触れ合う度に気持ちが揺れ動いたんだ』
って、言ってくれたはずなのに。なのに……。
「朱里。このシーンのアカリの笑顔めっちゃ可愛くないか!?」
どうして、こんな状態なんでしょうか。
「なんで!? どうして休日の朝からゲームなの!?」
そう、今は黒炎くんのお家にてアカリちゃんを鑑賞中。せっかくの休日だから俺の家に来ないか? とイケメンセリフで誘われ、私はまんまとそれに引っかかり、ドキドキで胸を弾ませて、いざ家に来てみたものの……私が馬鹿だったと今は後悔している。
「なんでって……そりゃあ休日くらいしか、ゆっくりゲームする時間なんてないだろ」
「そうじゃないでしょ。先週のこと覚えてないの? あのイケメンだった黒炎くんはどこに行ったの……」
私はあからさまにしょぼんと落ち込んだ。
「イケメンだった覚えはないんだが。……朱里、さっきから様子が変だぞ」
「ゲームより現実の私が好きなんじゃないの?」
プクーっと頬を膨らませ不貞腐れる私。もうヤキモチは妬かないって思ってた矢先、黒炎くんにこんなことをされたら流石の私でも多少は怒ってしまうのは当たり前で。
「それは言った。けど、アカリの話をする俺のことも好きなんじゃないのか」
「うっ」
それはたしかに言ったけど。付き合ってから私は今まで黒炎くんに対する思いを全て伝えた。
けど、それを言われると何も反論できずにいるのがなんだか悔しい。
しかも、問題はその顔。欲しいおもちゃを買ってもらえない子供のような瞳でこっちを見られると、私もどうしていいかわからなくなる。
「じゃあ、少しだけならしてもいいよ」
うぅ、本当は彼女になって初めてのお家デートだから2人きりでイチャイチャ出来ると思ったのに。
「ありがとな、朱里! なら、とりあえず1時間はするとして……」
私がゲームの許可を出した途端、黒炎の表情が明るくなる。それはもうわかりやすいくらいの笑顔で。
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