第66話

今、なんて言ったの? 黒炎くんの顔を見ようと思ったけど、何故か目がかすんで見えない。

もしかして私……泣いてるの?


「俺、わかったんだ。自分の本当の気持ちが。最初はゲームのアカリが好きだった。だけど、だんだんと現実の朱里と話したり、触れ合う度に気持ちが揺れ動いたんだ。心があたたかい気持ちになった」


最近、ゲームのアカリちゃんのこと聞かないと思ったらそういうことだったんだね。……良かった。触れ合うたびにドキドキしてるのが私だけじゃなかったんだ……黒炎くんも私と同じ気持ちで今、私はそれだけで嬉しい。


「会長と仲良くしてるのを見たり、口説かれてるのを見たら嫉妬もした。誰にも渡したくない……いつからか、そう思うようになった。だけど、それは幼なじみとしてだと、ずっと自分の心に言い聞かせてた。だけど、ゲームのアカリが言った気がしたんだ。本当の幸せはすぐそこにあるよって」


「っ……」


本当の幸せが私と付き合うこと? そんなこと言われたら、今までアカリちゃんにヤキモチ妬いてた私がバカらしくなるじゃん。でも、幼なじみじゃなくて一人の異性として嫉妬もしてくれるなんて、私は黒炎くんの幼なじみとして本当に幸せ者だな。


「だから、改めて言わせてもらう。朱里、俺と付き合ってくれないか?」


私の答えは当然決まっている。


「もちろんだよ。これからは彼女としてよろしくね」


泣いてた涙を拭き、微笑む私。多分、泣きじゃったあとだから目が赤いと思う。


「やっぱりお前の笑顔はすごく綺麗だ」


そういって褒めてくれる黒炎くん。そっと手を私の頬に添え、優しいキスを落とした。


「こ、黒炎……くん!?」


私は驚きのあまり、バッと口をおさえた。一瞬のことすぎて何が起こったのかわからなかったけど、私、今……キスされたんだよね?


「もう恋人なんだからキスくらい当然だろ? それにしても反応が可愛いな」


「ちょ……。今の発言だと、黒炎くんはキス慣れてるみたいな言い方だよ!?」


「ファーストキスは観覧車だったな、朱里と遊園地行ったとき。あのときは俺も驚いた。だから、今のは恋人としての初めてのキスだ」


「っ……!」


なんだか黒炎くんのイケメン度に磨きがかかった気がするのは勘違いではないようで。


「俺に告白したとき、付き合うとかは言ってなかっただろ? だから俺から言ってみたんだが、迷惑だったか?」


「い、いいえ」


「……?」


なんで敬語なんだと言わんばかりの眼差しを向けてくるのはやめてもらいたい。


私は晴れて、黒炎くんの彼女になりました。


小さい頃からの夢が叶って良かったと心から喜んでいた。が、この先、最大の困難が待ち受けていることはこのときの私は知る由もなかった。

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