第62話
それから、肉巻きおにぎり、フランクフルト、チュロスなどを食べてお腹はかなり満たされた。
「朱里、あれってなんだ?」
黒炎くんの視線を追ってみると、一つの屋台を見つめ不思議そうな顔をしていた。
「え、もしかしてタピオカのこと?」
「タピ、オカ?」
「プッ……ふふっ」
いけない、笑いが込み上げてしまった。
まさか黒炎くんに知らないものがあったなんて。しかも、それが今流行りのものなんて、これは笑わずにはいられない。
「朱里、笑いすぎだろ」
「だって、面白くて……ふふふ」
「ったく。まぁ、朱里が楽しそうなら良いけどな」
笑いすぎたせいで少し不貞腐れちゃった黒炎くん。そんなところを見ると、つい可愛いと思う私もいた。
「今回は私が奢ってあげるから、ここに座って待ってて?」
数分後、私は黒炎くんの前にタピオカドリンクを差し出した。
「王道のタピオカミルクティーってのを買ってきたよ。いろんな種類があるんだけど、まずは基本からかな。飲んでみて?」
「ありがとな。……ん、なんだか初めての食感だ」
タピオカを少し飲むと、黒炎くんはそんな感想を言った。もしかして黒炎くんって流行とかに疎いのかな?
「こういうの飲んだことないの?」
「基本的に紅茶が好きだからな。会長と仕事中に飲んでたりするし。ゲームしてるときはほぼ没頭していて、他は何もしてない」
「……」
うん、たしかに会長さんと一緒にいたら流行とかとは縁遠いよね。あんなに真面目な性格だとタピオカやチーズハッドクなんか食べないだろうし。というか、漫画や小説の家でする仕事なら尚更、外出する機会は減るだろうし。
「だけど甘いけどなかなか悪くないな、美味しかった。ありがとな、朱里」
「どういたしまして。会長さんにも良かったら教えてあげて?」
「こんな時まで会長の話か?」
「それを言うなら黒炎くんから会長さんの話、振ってきたんだよ」
黒炎くんは、墓穴を掘ったといった表情を見せた。会長さんの名前を出すと心が痛くなるって言ってたのは黒炎くんのほうなのに……。
「そういえば……告白されたんだろ、会長に」
「え、なんでそれを知って……」
最近、午後しか顔を見せない黒炎くんが何故そのことを知っているんだろうか。別に隠してたわけじゃないけど、なんとなく気まずくなってしまうのはわかっていた。げんに今がこういう空気なわけで。
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