第50話
「会長さん、私は……!」
「明日、時間があれば出掛けませんか」
「え……」
予想外の言葉に私はびっくりした。確かに返事は急いでないみたいな感じではあったけど、本当にこれは意外すぎる。
「自分のことをもっと知ってほしいと思ってのことです。もちろん僕と貴方の二人きりで」
「……」
なんかデジャブといいますか……それは私が黒炎くんにしようと思っていたことで、やっぱり考えることは誰しも同じということか。
「もしかしたら、これが最後になるかもしれないので」
「最後って?」
「柊黒炎と貴方が交際したら、自分と二人きりでどこかに行くのは出来ないという意味です」
それは最もな意見だけど、今のは私の恋を応援してるという意味にとらえて良いんだろうか。仮にも会長さんは私が好きなわけで……。会長さんはあくまでもそうなった場合の話をしてるのかな。
私だってそうなりたいとは思うけど、なかなか上手くいかないのが現状で……そもそも告白が成功したとしても黒炎くんが私のことを異性として好きじゃないと付き合うことは出来ないわけで。
というか、会長さんは普通にいい先輩だし相談だって乗ってくれたし、出来ることなら友達として出かけたいんだけど……黒炎くんに会長と二人きりのとこを見られるとどういい訳していいかわからないし! って、なんでいい訳前提なの、私は。
「出掛けることを考える気持ちは十分理解しています。その上で自分は貴方に僕のことを知ってほしい……そう思って誘っているんです」
「うっ……」
電話越しなのに伝わってくる愛がやけに痛い。
すごく断りづらい……自分のことを知ってほしいとか、その気持ちも共感できる。
「別に強制しているつもりはありません。不快にしたのなら断っていただいても構いません」
うー、どうしよう。確かに明日は家にいる予定だったから空いてるけれど。
「会長さんの気持ちも痛いほどわかります。だから誘いは受けます。だけど、私はあくまでも友人として接したいと思います」
「それで構いません。……先輩ではなく、友人というのは実に貴方らしい。他の生徒なら自分のことをそんな風には、けして言いませんから」
「それは会長さんのこと誤解してるだけだと思います。私も最初は怖い人だって思ってたくらいですから」
入学式の挨拶で会長さんを見たときはこんな風になるなんて思いもしなかったなぁ〜と思い出しながら、ふと笑みがこぼれてしまった。
「そうやって自分のことを褒めるのは逆効果だって理解してますか」
「あ、すみません。じゃあ明日は何時に集合です?」
「自分が貴方の家まで迎えに……と思いましたが流石に家は知らないので学校の前で待ち合わせでどうですか」
「はい、それで大丈夫です!」
さすがに私の家までは知らないのか。そうして電話を切り終える。
会長さんには言わなかったけど、私は決めていたのだ。今回のお出かけで会長さんのことを何とも思わないなら、しっかりと告白の返事を断ろうと。
ただ、このことを本人を言ってしまうと気分を悪くさせてしまいそうで申し訳なかったから。それに、いつまでも待たせるのも変に相手を期待させてるみたいだし。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます