第37話

「朱里ちゃん。お、思ったよりも暗いね」


「確かに昼間なのに洞窟だと夜みたい。というか、よりにもよって最後とか」


私たちはビクビクしながら、奥へ奥へと進んでいった。遥ちゃんも私と同じで怖がりなんだろうなぁ。さっきから掴まれている腕の力が徐々に強くなっているのがわかる。


正直、私も暗い場所や怖いのは苦手だから遥ちゃんを安心させるような言葉をかける余裕すらない。


しかも私たちの組が最後で他のグループは終わったのか、さっきから誰ともすれ違わないのが妙に怖さを増幅させる原因の一つなんだけど。


「ごめんね、私が引いたくじのせいで」


遥ちゃんは申し訳なさそうに謝る。今にも泣きそうな遥ちゃんを見て、「全然気にしてないから大丈夫だよ」というものの内心は心臓が飛び出しそうなほどバクバクしていた。


洞窟ってなんでこんなにも怖いんだろう。ぽちゃん……と水滴が落ちる。


「!?」


ビクッ! と背筋が跳ねる。水滴の音ですら驚いて足がすくむ。


「い、一番奥に行った場所にお札を置いてるって行ってたけどなかなか着かないね。遥ちゃん、ちゃんとついてきてる? ……って、あれ?」


さっきまでいたはずの遥ちゃんがいない? これって、もしかしてはぐれたとか……いやいや、そんなはずない。


「遥ちゃん、どこ行っちゃったの? いたら返事して!」


私は、はぐれてしまった遥ちゃんを探すために当てもなく走り回った。


「っ!?」


足元とまわりが暗いせいで、私は何かにつまづき転んでしまった。


「痛い……」


一人だと思うと途端に痛みと恐怖は増していき、その場に座り込んでしまった。遥ちゃんのことも心配だから探しに行かないといけないんだけど、怖くて前に進めない。どうしよう。


(黒炎くん、私を見つけて)


私は心の中で黒炎くんの名前を呼んだ。当の本人は恐らく洞窟からはとっくに出てるだろうけど、それでも呼ばずにはいられなかった。


この状況が少しでも緩和されるようにと自分を慰めていた。そんなことしても現状は変わらないけど。


ガサッ! と近くで聞こえた。


「ヒッ! いやっ……」


正体のわからない音に、私は泣きそうになった。


「朱里! 大丈夫か!?」


「黒、炎……くん?」


そこには、私が助けてほしいと願った黒炎がいた。予想外すぎて一瞬、現実なのか疑ってしまう。どうして、いるはずのない黒炎くんが洞窟に?


「星空と朱里が時間がかなり経ってるのに戻って来ないって先生に聞いてさ。心配になって探しに来たんだ。そしたら案の定……あ、朱里?」


「黒炎くん、怖かったよ……っ」


ガバッと黒炎くんに抱きつく私。黒炎くんの言葉は半分も耳には入ってこなかった。

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