5章 遊園地で急接近!?

第27話

「朱里―! スマホが鳴りっぱなしよ。いい加減、起きなさい」



「う~ん……」



とある土曜日。お母さんから起きなさいコールを食らってしまった。



私は重たい身体を起こしつつ、「目覚ましなんか設定したっけ?」と思いながらスマホを見るとそこには黒炎くんからの着信だった。



「も、もしもし?」



まさか寝起きに黒炎くんの電話をとることになるなんて。寝ぼけてるせいで、ちゃんと喋れるか不安だ。



「おはよう朱里。今日は休日だし良かったら出掛けないか?」



「え? う、うん?」



一瞬、聞き間違いかな? と思って疑問形になった。



「今日は新作ゲームの発売もないし、たまにはな。朱里が行きたい所があれば一緒に行こうかと思って……って、朱里?」



「ゆ、遊園地に行きたい! あと甘い物とか食べたいな」



夢かと思った。けど、これは現実で……まさか黒炎くんとお出かけ出来る日が来るなんて。幼馴染としてでも、これはかなり嬉しい。



「ん、遊園地な。寝起きだろうから昼頃、朱里の家に迎えに行くから」



「わかった。楽しみにしてるね」



そういって着信を終える。今日は黒炎くんとお出かけです。

って、着ていく服どうしよう……! と朝から頭を抱える私であった。



「これにしよう!」



クローゼットの中から取り出したのは一番のお気に入り。


「これで完璧♪」



大きな姿見でクルッと回ってみたけど、おかしなところはどこもない。



私は赤いリボンに膝丈まであるピンクのセーラーワンピースを着て、玄関を開けた。



すると、「用意出来たみたいだな」と黒炎くんの姿があった。



「う、うん。着替えてたら遅くなっちゃった。ごめんね、怒ってる?」



私は身長が平均より低いほうだから、自然と黒炎くんを見上げる形になる。

不安そうに黒炎くんの表情をうかがうと「なんで怒るんだ?」と逆に聞かれてしまった。



「その服、可愛いな。似合ってるぞ、朱里。それじゃあ、いくか」



「ありがとう」



私たちは遊園地行きの高速バスに乗り込んだ。遊園地はバスで1時間ほど。



服を褒められたのが嬉しくて舞い上がってた私はバスの中でずっとアホな顔をしていたと思う。それこそ、前のように口が開きっぱなしで。



「1時間あるから寝ててもいいか?」



「あ、大丈夫だよ。ついたら起こすから」



そういって、すぐさま夢の中に入る黒炎くん。



(昨日も遅くまでゲームしてたのかな?)



なんて考えながら、黒炎くんの寝顔を見ていた。まつ毛が長くて、やっぱり近くで見ると凄くカッコいい……と見惚れていると、コテンと黒炎くんの頭が私の肩に乗った。



だけど、黒炎くんは全く起きる様子はなく、むしろ気持ちよさそうに静かな寝息をたててぐっすり眠っている。



(こんなの心臓がいくらあっても足りない!)



恥ずかしさのあまり黒炎くんを退かそうと思ったけど、私の力じゃビクともしなかった。



結局、バスが目的地につくまでの間、私は茹でダコのように顔を真っ赤に染めながら、ただこの恥ずかしい状況を耐えるしかなかった。

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