第26話
「それって、アカリちゃんだよね?」
「ああ、勿論それもあるけどな!」
それ“ も”とは一体どういう意味なんだろう?
もしかして私のこと、なのかな?
黒炎くん、昔の話をするとやっぱり悲しそうな表情をしてる。そういえば、黒炎くんから家族の話聞いたことなかったな。
すると、いきなりガタッ! と洋室から音がした。
「黒炎くん、大丈夫? なにか落ちたみたいだけど」
「驚かせて悪い。たんなるマンガだ、気にしなくていい」
そう言いながら、洋室の部屋に入り漫画を拾う黒炎くん。
ドアは空いたままで、私は洋室の部屋も気になった。もしかしてアカリちゃんのコレクション部屋なのかな? 寝室だけに収まらなかったとか?
だけど、勝手に入るのもなんだか悪いし……私はリビングで食事を食べながら待っていた。
「……そんなに気になるなら、こっちも入っていいぞ」
「え?」
「そんなに痛いくらいの視線向けられたら流石の俺でも気付く」
だったら、私が黒炎くんを好きっていうのも気付いてよ! と内心、不貞腐れていた。
私はひょこっと洋室の部屋を見た。
すると、そこには巻ごとに綺麗に並べられた本が大きな本棚にギッシリ。それと作業机? のようなものがあった。
本を見る限り、同じタイトルのほうが何冊もあった。それはラノベと漫画本ばかりで、本棚だけでも黒炎くんらしいなと感じた。
『神崎紅』と書かれた作品ばかりが揃っている。どの本にも付箋が貼られていて大量のメモが……どれだけ読み込んでるんだろう。
『神崎紅』先生といえば中高生に人気で今をトキめく有名な作家だ。ただし、少女向けだけど。
私も多少読んだことはあるけど、まさか少女漫画が黒炎くんの部屋に置いてあるなんて意外だった。
「神崎紅先生のファンなの?」
「あー……まぁな」
なんだか歯切れの悪い返事。こんなに大量にあるから好きなのは明白なのに。なんで隠すんだろ。
家族のことといい、重要なことは秘密にされてる気がする。
「オムライスも食い終わったし、寝室でゲームでもしないか?」
「うん、そうだね」
まただ、話を逸らされた。わかってはいても、こういうのつらいなぁ。黒炎くんの知らない一面を見るたび、今の黒炎くんのことを知らないんだと実感する。私、幼馴染としてもまだまだだ。
「もしかしてゲームって」
「ああ、朱里が想像してる通りだ!」
ドンッと積み上げられたのはアカリちゃんシリーズのギャルゲー。
「最初のメインヒロインはアカリじゃないけどな! でも、アカリが出てるところは全部見るべきだ。でも、他のヒロインの攻略も感動するシーンがいくつもあったぞ。とりあえず今からやるか!」
「う、うん」
黒炎くんのこと知るって言った以上、どんなことも受け入れるつもり、ではいたんだけど…まさか高校になって初めてのお泊まり会がこれって。
その日、私たちはオールでギャルゲーをした。
翌日の私が寝不足になったのはいうまでもない。
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