第11話

昼休み、クラスメイトに囲まれている黒炎くんを「一緒にお昼どうかな?」と誘うことにした。


「ああ、別にいいぞ」


「ホントに!? ありがとう、黒炎くん!」


昨日の気まずいこともあったから、断られる覚悟もしていた。が、あっさりと受け入れてくれる黒炎くん。


勇気を振り絞って誘ったかいがあった。


「~♪」


私たちは屋上で昼食をとることにした。


あぁ、好きな人とお昼を食べられることがこんなに嬉しいなんて。


「朱里、なんか嬉しそうだな」


「え!? もしかして、また……アホな顔してた?」


両手で口を照れくさそうに隠す。また、口開けてたのかな?


「ふ……あはは。アホな顔ってなんだよ。いや、ただ鼻歌歌ってたから何か良いことでもあったのか? って聞いただけだよ」


「……!///」


無邪気に笑う黒炎くんを見て、私は不覚にもキュン! と来てしまった。

これがいわゆる、胸キュンってやつなのかな?


「良いことって、そりゃあ好きなひ……幼馴染と久しぶりに一緒に食事出来たら嬉しいに決まってる!」


危なかった……。うっかり黒炎くんに私の気持ちがバレるとこだった!


昨日のこともあるし、不用意に好きなんて口には出来ない。

それに再会して、いきなり好きです! って告白されても反応に困るだろうしね! あと、アカリちゃんのこともあるし。

それになにより告白するのが恥ずかしいっていうのが一番の理由なんだけど。


「言われてみれば小学生以来だな。

昔は朱里の家にもよく遊びに行ったっけ‥‥」


なんて悲しそうな顔で昔のことを話すの?

その表情を見るたびに、黒炎くんの心の闇を少しでも楽にしてあげたいって思うのはいけないことだろうか。


「ねぇ、黒炎くんはアカリちゃんって子と付き合ってるの?」


昨日の話題を振るのは駄目だと思っていても聞かずにはいられなかった。


「‥‥あぁ、付き合ってる。ただ、これを言っても誰にも理解はされないけどな」


「そっか‥‥」


やっぱりそうだった。ショップの店長との会話から薄々気付いてはいたけれど、本人から聞くのは痛いほど心に響く。


今、必要とされているのは私じゃないんだ。


だけど、誰にも理解されないってどういうことなんだろう。

アカリちゃんと交際してるのを誰かに反対でもされてるとか?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る