第3話


「なんとか、大丈夫。

そっちこそ、怪我とかしてない?」


「俺は大丈夫。

って、男は傷くらい残ったって平気だ。

お前は女子なんだから、傷なんか残ったら大変だろ?」


「そう、だよね……」


あれ、なんだろう。さっきから違和感を覚えるのは。

私、この男の子の事、知ってる気がする。


「あの、助けてくれてありがとう。

私、霧姫朱里! 今日から星ヶ丘高校の1年生になるの」


「朱、里……? 俺は黒炎」


「やっぱり! 黒炎くんだよね!?  

私のこと、覚えてる? 幼稚園からの幼馴染で‥‥」



さすがに覚えてるわけないか……と諦めかけてたそのとき、「ああ、ちゃんと覚えてる。久しぶり、朱里」と微笑んでくれた。


声色も高校生らしく大人で、身長もかなり高くなってる。

サラサラの黒髪で王子様のようにカッコいい顔。

だが、他の高校生より若く見えて、童顔だ。


そんな黒炎くんを私が間違うはずがない。


「会いたかった……黒炎くん!」


やっと会うことができた。私の初恋の人に。


私は嬉しさのあまり、黒炎くんに勢いよく抱きついた。


「!? あ、朱里……ここ、一応、通学路なんだけど」


「え?」


私はハッとあたりを見渡した。すると、「きゃー。カップルがいる」などと女の子たちが顔を真っ赤にさせて、こちらを見ているのに気付いた。


いくら久しぶりに会えたからって、大胆すぎたかな、私///


「ごめ……黒炎くん。迷惑、だったよね?」


「いや、迷惑ではない。

けど、こんなところ“アイツ”に見られでもしたら……」


そういうと黒炎くんは私から静かに離れ、目を反らした。


黒炎くんの“アイツ”って誰のことなんだろう。私はとても気になった。


「あの、黒炎くん。アイツって?」


「……俺もこの高校に通う1年だ。同じクラスになれるといいな」


「……」


今、完全に話をそらされたよね?


私と会話しながらも、どこか遠くを見ている。


黒炎君、貴方は今、何をおもっているの?


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