第二三章 レイカとヒビキはすかさず次の試合/納品に臨む

第二三章 【レイカ】(1/4)

 ウチは必死になって炎のギジドーを探した。

ミワちゃんは? ミワちゃんどこ?

「ナナミ。ミワちゃんいない」

「きっと町長室だ。ヒマワリのとこ」


もいちど階段上がって、ナナミと町長室の前へ。

扉に鍵が掛かっててあかない。

「ミワちゃん。ヒマワリ。一緒に逃げよ」

 中からヒマワリの声。

「もう遅い、ウチらはここでさよならだ。ナナミそこにいるね」

「ああ」

「カリンとセイラにありがとうって」

「わかった」

「ミワちゃん!ヒマワリ!二人を置いてけないよ」

「バカ言ってないで、はやくしな。あたしらはレイカを売ったんだよ」

 ミワちゃんの声。

「そんなの、あとで考えようよ。今は一緒に逃げなきゃだよ」

「じゃあ、本当のこと言ってやろうか?」

「ママを殺したっていうんでしょ」

 長い沈黙。ウチとミワちゃんたちを隔てる距離のような。

「そんなのナンカの間違いだから。きっとウチが真相解明してみせからる」

〈何故なら、私は一流のミステリーを1000冊以上読んで……〉

「うるさいね。こんな時に」

「大変だな。レイカ」

「ナナミ。ウチ辛い」

「まあ、分からないでもないが、レイカ。ちなみに、ここ傾きだしてるぞ」

 ホントだ、床が揺れてる。ふわふわした感じ。

「やっぱり、この円盤って飛んで脱出するヤツ?」

「ばっか。落ちんだよ。はやく。非常階段へ!」

「でも」

「ウチらだけでも下まで降りなきゃ。こいつに巻き込まれたら終わりだ」

「ミワちゃん! ヒマワリ!」

 ナナミに手を引っ張られて階段へ。

「誰だ非常扉鍵かけたヤツ」

「展望エレベーターは?」

 ドアが開いたから乗ってみる。

「動くみたい。ポチっとな」

 ドアが閉まるより早く降り出した感じだった。気のせい?

「なんか、速くね?」

「うん。これ落ちてるっポイ」

「ウチら死ぬのか?」

「ナナミ、こっち来て」

「きめーな。レイカそういう趣味もあったのか?」

「もう!」

 ナナミをお姫様抱っこする日が来るなんてね。

「レイカ何をする。放せよ」

 エレベーターはそのまま地面に激突。

足の下から激痛が全身を伝わり脳天を突き抜けて行った。

エレベーターの箱、めっちゃくちゃ。

やば、もう少しで床のスプリングで串刺しになるところだった。

扉開かない。

こっちの窓から出ちゃお。

「ナナミ、大丈夫だった?」

「うん。ってか、早く降ろせ。いつまで抱っこしてるんだよ」

 宮木野さんの銅像、誰かに似てるって思ったら、これって高倉さんだよ、マンマそう。

「レイカ、行くぞ。何突っ立ってるんだ?」

 ナナミ、ちょっとだけ待ってくれる。pkしちゃったみたいだから。


 なんとか庁舎を脱出して、駐車場の端まで逃げて来れたけど、なんてこと、オジサン、オバサンがカリンたちを取り囲んでる。

セイラ、失神しそうでしょ。

やめたげて!

「ちょっと、何してんの?」

「辻王。この者どもはヴァンパイアの敵だ」

「償いをさせねばならん」

「レイカ」

 カリン、違うよ。

ウチはそんなんじゃないからそんな目で見ないで。

この人たちとは別だから。

何があってもカリンたちを守るから。

「オジサンたちの家族を殺したのは町長」

「違う。こやつらは」

((青墓の土へ帰れ))

 さっぶ。あの声だ。零下三〇度だ。ニーニーの声だよ。

頭の中に響いてる。ニーニーどこ? 

みんなには聞こえてるの? この声が。

「レイカ様、ご無事で。この者たちは、すぐに引き下がらせますので、ご安心ください」

 高倉さん?

((皆の者、我が辻の血を汚すことのなきよう、速やかに安息の地へと戻るがよい))

 寒い。フルエル。

やっぱりあの時の声だけど、これは高倉さんの声だったの? 

そういえば、あの時お台所に高倉さんも居たっけ。

あれ、オジサン、オバサン帰ってゆくよ。案外あっさりしてるね。

「ヒビキさんたちも、気持ちをお楽にしてください」

 高倉さん、カリンのこと知ってるんだ。

背後でものすごい轟音。地響き。

「あらあら、盛大に落っこちましたね」

 ギジドーがまっさかさまに落ちちゃった。

脱出失敗ってこと。って、ヒマワリとミワちゃんたちは? 一緒? 

ウチ、助けに行かなきゃ。

「待ちなって。あれじゃ助からない」

「でも、ナナミ。ウチ、まだミワちゃんにちゃんと謝ってない」

「ああなったら、ウチら行ってもどうしようもない」

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