第十七章 【レイカ】(7/11)

「なあ、レイカ。お前、とんでもねーことしてきたな。くわばらくわばら」

「なんのことよ」

「お前はこの期に及んでしらをきる気か?」

「なんか、時代劇っぽいね。ヒマワリの言葉」

「お、人の気にしてることをズケズケと。ずっとここに閉じ込められてっから、普段TVばっかり観てんの。でもな、ここのTV、いろいろ壊れてて、昼しか観れなくって、やってるの火サスとか時代劇の再放送しかねーんだ。わるいか?」

 そーいえばここのTVってば、いまどきチャンネルだ。地デジとかどーなってるの?

「じゃ、鬼へーとかみてたんだ。火サスもウチ好きだよ」

「だから、その危機感のなさはなんだよ。お前死にかけてんだぞ」

「あ、そうだった。でさ。ウチ何したの?」

「ったく。殺しだろーが」


ヒマワリのなっがーい説明。

 つまり、ウチはザ・デイ・ウォーカーのセーヘキを生かして、辻沢のヴァンパイアたちの肉親を殺しまわってる殺吸血鬼鬼(ややこしーな)ってことにされてて、その審判が今夜行われるから、ギジドーにミナサンが集まってて、結果によってはウチは打ち首ゴクモンになる。ってことでいい?

「まあ、そんなところだ」

 ヒマワリ、鼻くそほじってきったない。それをどこにやる? 町長の名札になすくってるよ。

「まさか、ミワちゃんやナナミはもう?」

「コロシやったのはレイカだろ。どうしてミワやナナミが罪かぶんなきゃならないんだよ」

「ウチら仲間だもん」

「お前は、ミワたちに連行されて来たんだぞ」

 ?

「わっかんねー奴だな。お前はミワに刺されたの」

 ? ?

「辻女ヴァンパイアーズは、ヒマワリを救い出すため町長を倒しに来たんだよ」

「なんだヴァンパイアーズって。NBAにそんな名前のチームあったか?」

「ちがうよ。ミワちゃんとナナミと一緒に付けたウチらのチームだ」

 よっし、決まった。

「まったくショーもねーな。ミワもよくまーこんなボケとつきあってたな。ま、それもこれも、この殺人鬼を連れてきて、ウチをここから解放するためだけどな」

 あ、殺人鬼でいいのか。いやいや全然よくないよ。

「で、ウチだれのこと殺しちゃったの?」

「まず、一昨年に9人。去年が12人。今年になってからが6人だ。その中には自分のママも入ってるってんだから、恐ろしい女だな」

「そんなに? てか、なんでウチがママを殺すわけよ」

「知るか。セーヘキ持ちのヴァンパイアのすることなんて」

「ウチはセーヘキ持ってないよ」

「お天気おねーさんてのは、セーヘキじゃねーのか?」

「そっちはそうだけど、そのセーヘキでなく」

「まあ、いずれにせよ。お前が真犯人なのはそのセーヘキが証明してるからな。ヴァンパイアが眠ってる昼間にねぐらに忍び込んで寝首欠くなんてこと出来るのは、昼間出歩けるお天気おねーさんしかいねーからな」

 え? なんか変だな。殺してきたのはヴァンパイアの肉親って言ってなかった?

「でもウチ、ミワちゃんにヴァンパイアにされたのついこの間だよ。2年前はおろか1年前とか先月の分とか説明つかないでしょ」

「そんなの知るか。そもそも論で、お前のトコロの辻王は、生まれて来た子はすぐにヴァンパイアにするって、ミワの調査報告書ではなってるし」

「調査報告書?」

「潜入調査のだよ。ミワは危険を顧みずに、お前んちに忍び込んで、巷で噂になってることを調べ上げたんだよ。けなげじゃねーか。ウチのために」

 高倉さんの言ってたこととまったく逆。

「しっぽをつかんだから、お前は今日連行されてきたんだ」

「でも、ウチがずっとヴァンパイアじゃなかったのって、ヒマワリだって知ってるよね」

「何言ってんだよ。お前はずっとヴァンパイアだったよ」

「そんな、ウチのことちっさいころから知ってるじゃない」

「ちっさいころ? ミワとお前んちによく連れて行かれたよな。何て言ったけか、お前のきもクソ兄貴」

「その時だって、うちヴァンパイアじゃなかったでしょ」

「ホントにそうか?」

「いっしょに楽しく遊んだよね」

「楽しく?」

「おままごとしたり」

「物色したり?」

「お医者さんごっこしたり」

「味見したり?」

「そんな言い方って」

「なんだ? お前んちに呼ばれるタンビに、ウチとミワはブルブルだったかんな」

(「ヒマワリはボクの。ミワはレイカの」)

(「なんで、いっしょに遊ばないの」)

(「おいしいおやつはひとりじめにしたいから」)

(「ニーニーやめてあげて、ヒマワリいたがってる。かみつくのやめて」)

(「レイカもミワにかみついてみろよ。おいしいぞ」)

(「そうなの? ミワちゃんって、おいしかったんだ」)

 ミワちゃん。ウチは……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る