第十三章 【レイカ】(5/9)

 帰りにミワちゃんから渡された手提げ袋の中身。麦茶のポット3本分のスムージー。冷凍庫で保存してね、飲む分だけ解凍することって言われた。一本は帰ってきて全部飲んじゃったけど、2本は冷凍庫にしまってある。それから、ミッフィーの封筒に入ったミワちゃんからの手紙。

「レイカのママからの預かりものです。どうか、ミワを許してください」

 ハンカチにくるまれてたのは、ママのガラケー。遺品の中に見つからなかったやつ。

このガラケーから送信されたママからの音声メッセージはママが死んで何日か後に届いた。例の、

「レイカへ。ニーニーのことはよろしくお願いします」

 ってやつ。

位置調べたらN市からの送信で、その時ウチはまだN市にいたから、ママが天国に行く途中で会いに来てくれたのかなって。


 もう一度、ママのガラケーの送信済みメッセージを聞いてみた。そしたら覚えていたのと全然違った。

「レイカ、次の言葉をよく聞いてね。

 ママのレイカは、とってもいい子。

 ニーニーのことを思い出しなさい。

 すぐに辻沢に戻って、ミワさんに会いなさい」

 一語一語を区切るようなママの言葉。そうなんだ。このメッセージを聞いて、ウチはそれまで霧に覆われたようだった頭の中が晴れだして、記憶のカナタにあったものが少しずつ呼び戻されて来た。その時、最初に女バスの仲間たちのこと思い出したのはうれしかったな。で、今やっと思い出したのが、ママはウチに大事なこと言う時いつもこの言葉を使ってたこと。

「ママのレイカは、とってもいい子」

 それを聞くと、ウチはいい子にしなきゃ、ママの言いつけ守らなきゃってなった。


 ガラケーの中には、もう一つ、下書きのメッセージが残ってた。作成日付はママの死んだ日になってる。

「レイカへ。時間がありません。もうすぐママはあの人たちに殺されるでしょう。レイカにお願いがあります。かわいそうな女の子たちを助けてあげてください。レイカなら、きっとできるはず。なぜならレイカは、宮木野と志野婦二人の血を引く、辻沢最強の、ヴァンパイアだからーーーーー雑音ーーーーーーピー」

 何を言っちゃってるの? ママ。

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