第十一章 【レイカとヒビキ】(5/8)

 トリマ、ウチらは0時になる前にカリンの車にのって、現地に行ってみることにした。途中でヤオマンBPCってファミレスに寄ってご飯食べようってなったんだけど。なんで? さっき食べなかったっけ。ここでも、カリンとセイラはお肉をモリモリ。ウチはなんだか食べそびれちゃった。もったいなかったけど、残しちゃってカリンにほとんど食べてもらった。


 セイラのマンションの前の道に車停めてセイラの準備待ち。

「おまたせー」

 セイラが戻ってきた。荷物取りに寄ったの。

「セイラ、何持ってるの?」

「ん? これ? セイラのゴマスリセット。スリコギの絵柄なめネコなんだ。カワイっしょ」

 本格スリ鉢とスリコギセット(5400円)、スリコギに「なめてっと、すりつぶすぞ」って書いてある。

「なんで持ってるの?」

「これないとさ、やばい」

 なんで?

 セイラ助手席にすっぽり収まって、彼女さんみたい。すり鉢抱えてなければのハナシ。

「大丈夫かな。いきなり行って」

『R』(どっぷりだね。こう言うようになっちゃ)に参加するにはいろいろメンドーな手続き(血の団結式とか?)がいって、今夜ってわけにはいかないから、ウチらはオシノビってことらしい。カリンが、

「こっちは辻沢の住人だから、『すみませーん、道に迷っちゃってー』で、とーす」

「住人が道に迷うムジュン」

 ってセイラ。

「うっさい、黙れ笑」


 宮木野神社前。境内に誰もいなさそう。ジーって虫の声だけしてる。

「たしか、ここがスタート地点のはずだけど」

「『R』見てみよ。何か出てるかも」

「あれ、SIMカード差せっておこられた。レイカどしたのこれ」

 ガラケーに差したまんまだった。はい。ガラケー。

「イマドキ、ガラケーって。なんで?」

「だって、そのスマフォ反応悪くって」

「え? それまずいな」

 セイラ、あっというまにSIMカード入れ替えちゃった。すごい。

「ぜんぜんフツーに動くよ。接触かな」

 どぃうこと?

「まだ、マップにピン立ってない」

「もう、12時回ってるのに」

 辺りは暗いし、不気味な感じする。なんか出ても不思議じゃないよ。ん? 窓の外、何か動いた?

ゴッ、ゴッ、ゴゴッ。

「ヒーーーーーーッヒ」

 ビクッたー。警備員のオジサン、牙つけて。モー。やめて、そーいうの。セイラひきつってるしょ。

 ウイーィ(窓開ける音)。カリン、そっち反対の窓。イィーウン(窓閉める音)。ウイーィ。

「ごめんなさい。ここ規制中だから停車しないでもらえるかな」

「あ、すいません。ちょっと道に迷っちゃってて」

「道に迷うムジュン」(ささやき声)

「うっさいって笑」(ささやき声)

「どこ行くの?」

「青墓です」

「ア・オ・ハ・カ」(ささやき声)

「うっさいの笑」(ささやき声)

「なら、裏のバイパスまっすぐ行って雄蛇ヶ池で降りて真っ直ぐだよ。あっちも規制中だけどね」

「そーなんですか? ありがとーございます」

 イィーウン。

 なんか、切り抜けたけど、青墓行くの? これから?

「トッサに出ちゃった。規制中って言ってたからあっちでもなんかやってる」

「この間の連中も青墓の杜って言ってたし、もしやがあるかもしんないね」

 ウチ、青墓はあんま行きたくないな。

「この時間に青墓の杜って」

「うん。住人はフツー行かない」

 簡単に言うと、自殺の名所。この町で何かあると、大概あそこで発見されたり。だから、ヒマワリたちの時も、最初に捜索隊が入った。そういうところって色んな噂が立つでしょ。そーいう場所。



 青墓まで、車でも結構かかった。

やだね。こんどこそなんか出そ―だな。

〈鬱蒼とした森が魔王の影のように見える〉

 は? 今のウチが言ったよね。突発性中二病か?

ゴッ、ゴッ、ゴゴッ。

「ヒーーーーーーッヒ」、プ。

 だから、警備員さんやめてって。ウチ、屁ぶっちゃったでしょーに。

ウイーィ。カリンこっち見んな。ウイーィ。セイラまで?

「スレイヤーの方ですか? 申し訳ないんですけど、システム障害で今晩のイベントは中止になりまして」

「中に入れないんですか?」

「上からは入れるなって言われてるんですけどー」

「えー。これ逃すと、一か月後しか来れないんですよ、ウチら遠くから来てるんで」

「トークカラ辻沢ナンバー」(ささやき声)

「ダマレ笑」(ささやき声)

「そういう方、結構いらっしゃってですね。さっきの方も」

 三人で、シナ。

「折角遠くから来ていただいてるんでー」

 お、効果アリげ。ウチらの女子力も捨てたもんじゃないね。

「「「来てるんでー」」」

「えっと、内緒で入ってもらってもいいすよ」

「よかったー。警備員さん、話分かるー」

「「ありがとーございます」」

「ここの道でいいんでしたっけ」

「あ、はい。まっすぐ入っていただいてですね」

「どーもー、スレイヤー」

「お気をつけて、スレイヤー」

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