第十一章 【レイカとヒビキ】(6/8)
森の中の真っ暗な道をゆっくりと進んで行く。灯りと言ったらヘッドライトだけ。
「入れたものの」
「ナニすればいいの?」
しばらく行くと、受付の札が立ってるのが見えた。
「ちょっと様子見て来るよ」
車を脇に停めてカリンが一人で出て行った。二人きりになるとセイラはカバンからノートパソコン出して、いつもの真っ赤な画面表示させた。それからセイラはスマフォとパソコンで忙しそう。つまんないからウチはシートに横になってたら、
「ちょっと! レイカ。やめてよ怖がらすの」
どしたの?
「ミラー見たら、消えてるから」
「寝転んでただけだよ」
「もう」
変なの。
カリンやっと帰って来た。どうしたの? 顔色悪い。
「何か分かった?」
「収穫なし。『R』のほうはどう?」
「だめだね。システム障害の情報だけ。マップも見られなくなってる」
「スレッターは?」
「こっちは運営へのヒボーチュウショーばっか」
「実況は?」
「動画のリンクは死んでるっポイ」
やっぱ帰ろ。ここなんだか気分よくない。
「あ、ゴメン、PCの位置情報許可してなかった」
セイラ、会社のSEさんみたい。複雑怪奇なパソコン世界の全知全能者。そーいう仕事してるの? ウチ、それさえ聞いてあげてなかった。
「F5っと。でた。やっぱりエリア内だと見れるんだ、生実況」
セイラがノートパソコンのちっさい四角いところをこちょこちょいじって操作してる。マウスなくてよくそんなことできるよ。
パソコンから声だけ聞こえて来た。
〈システム障害の間隙を襲って、我が隊はAH地点を進攻しています。ミッションナンバーは何になるんすかね。後で運営にナンバーつけさせよう。そもそもヤツラの落ち度なんだし〉
「カリン、あれ!」
すり鉢男たちがヘッドライトの光を横切って行った。ひょっとして、今実況してた人たち? すぐ暗闇の中に消えちゃったけど驚いた顔してた。ここ本当は車で入る場所でないのかも。
画面を眺めてたセイラ言った。
「この実況は画面出てるけど、ずっと同じとこ映してる」
街灯と倉庫みたいな建物が映ってるだけの映像。ずいぶんカメラ低い位置。カメラ落とした? それとも倒れてる? 倒された?
別の実況。荒い息して切迫感すごい。
〈本隊は、規約上限の7人構成。しかしながらカーミラ・亜種に散々てこずってます。1回の戦闘で軽傷者3名出して、2体ようやく殲滅成功。みなさん事前情報に惑わされないように。ここのカーミラ・亜種、強いです。練板連合・ロストボーイズでした〉
けが人が出るって、結構真剣勝負なゲームなんだ。よく、こんなのに参加するな。
「もっと奥に行ってみよう」
車走らせても何にも出くわさない。人に出会ったのもさっきのだけだった。
「あれ、あんなところにエクサス停まってる」
カリンの車のヘッドライトに路端の白い高級そうな車が浮かび上がってた。人が乗ってるかはわかんない。ん、今度こそ何か動いた。車の後ろの茂み。人だ。人が出て来た。
「あ! 蛭人間?」
マダラハゲにメタボバラ。『V』のキャラそっくり。背広だから、改・ドラキュラ? カーミラ・亜種は基本、セーラー服。
「ちがうよ。カリン。似てるけど人間だよ。スマフォで電話してるもん」
車の故障かなんか? こんなところで?
「キャストさんとか」
「蛭人間って着ぐるみ?」
ぬいぐるみの中の人なんていません笑。
「なわけ」
「あの人そのまんま蛭人間でいけるんじゃない」
通り過ぎる時、蛭人間もどきと目が合ったような。
「ねえ。あの人、道に出てきて、ずっとこっち見てない?」
え? どれ。リアウインドウから見てみたら、ほんとだ。スマフォ耳に当てたまま。
「まだ電話してるよ」
((わがちをふふめくぐつらや))
「通報されたんじゃ」
カリンが急ハンドルを切ったから、ウチ、ひっくりかえって、ゴトンゴトンって揺さぶられて。
「レイカ。大丈夫?」
「いまのところは」
「山道に入っちゃったみたい」
オッケー。
カリンがゆっくり車を進めてるのは、車体に枝が当たって傷が付かないようにみたいだけど、おかげで頭ぶつけなくて済んでる。
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