第八章 レイカとヒビキは祭りに酔う

第八章 【レイカ】(1/2)

 今夜は三社祭です。ミワちゃんとナナミとセイラと来てる。カリンも誘ったけど仕事だって、こんな日に。かなりブラック、カリンの会社。ミワちゃんの黄色地に白い花柄の浴衣キレー。ナナミ、相変わらず肩幅広っろ。その浴衣おとーさんの? 渋すぎでしょ。セイラはいったいいつからそーいう趣味になった? ゴスロリ浴衣って。でもアンガイ似あっててカワイイ。ウチはママの拝借。ちょっとオトナな感じの赤地に黒い縦じまの浴衣。高倉さんにママの浴衣出してって頼んだら着付けまでしてくれた。長すぎて腰紐高くしてるのは内緒。


 三社祭は宮木野神社と志野婦神社のお祭り。二社しか参加しないのに三社っていうのは、カゲ社といって数揃えを入れてるから。二より三の方が縁起いいしょ。でも、三つ目は青墓の杜にむかーしあった青墓神社のことって言う人もいる。ホントのところは分かんない。ウチは俗説の、宮木野さんと志野婦さんの双子の姉妹の他にもう一人男の兄弟がいて、三社ってのが好き。

 ウチは8年ぶりの三社祭。もとは4年ごとのお祭りで、ちょうど4年前にはあの事件があって中止になってた。でも、ミワちゃんたちは毎年参加だって。ヒマワリのパパが商店街振興を掲げて町長に当選してすぐの仕事が、三社祭を毎年開催に変えたこと。無理っていわれてたことを共催企業を募ることで実現したって。これはお祭りのパンフの受け売り。


「ヤオマンの提灯と、三社祭の提灯、半々って感じ」

「ほんとだー。んっぐぐ」

「レイカ、お前、その腐れ牛乳好きだな。何本目だ?」

「3本目。おいしーよ。あれ? なんて名前なんだっけ。ラベルない」

「辻沢ダイゴ。あのノボリに書いてある」

「ダンス・飲・ザ・辻沢ダイゴ!」

「ほれ、レイカ。踊れ!」

「あ、かっぽれ、かっぽれ」

「なにそれ?」

「知らない」

 あぶな、人にぶつかりそーになった。あんなでっかいヴァンパイアの被り物二人でしてたら邪魔でしょに。てか、周りヴァンパイアだらけ。

 宮木野さんと志野婦さんの双子姉妹がヴァンパイアって言い伝えをもとに、女の人はヴァンパイアの格好をして参加するように呼びかけてるんだって。二人一組でね。お揃いヴァンパイアコーデってやつ。おかげでいまや辻沢ヴァンパイア祭り。ハロウィンが流行るのに合わせて、こっちも人気出て来た感じらしい。これも町長のアイデア。でも、ウチはこれはいいと思う。だって、うれしいもん。コーデ目当てでも辻沢に人がいっぱい来るなんて。

 あそこの二人は、控え目に牙付けて口に血のりシール貼ってるだけだけど、さっきすれ違った二人組なんか、全身ヴァンパイアコスプレだった。紫と赤の全身タイツ着てマントつけて。気合入ってんなーって、注目の的だった。二人ともスタイルよかったし。

 ウチらジモティーは夜店で買ったヴァンパイアのお面、頭に乗っけておしまい。あー、そうね。あそこにもいるけど、沿線のJKは、制服にヴァンパイアメークってのが流行りみたい。お揃いコーデ、メンドーだからだと思うけど。けっこー、かわいい。スカートの丈つめて、ブットい足晒して。


ヒ! ちっさいおばーちゃんたち。チョー怖い。


「なんか、今年の志野婦の神輿、ちん(ピー)の形してるんだって」(ナナミ、ファール)

「やめてよー。ナナミ」

「セイラ、お前。何ぶりってんだ?」

「ないわ、辻沢の祭りは女祭りだよ」

「山椒の木の寄木造りって書いてある」

「レイカ、お前はどこの人だ。さっきからパンフばっか見て」

 ケッコー面白いよ。

「山椒の木ってのは最悪だね。宮木野さんとこNGのはずなのに」

「どぃうこと?」

「宮木野さんは山椒の木の元で死んだから、神社に山椒は持ち込めないことになってる」

 ふーん。そーいえば、役場の宮木野さんも山椒の木の下に寝転がってた。

「年女があの神輿に跨がるってパンフに書いてある。豊作祈願だって」

 ちん(ピー)に女の子が乗るって、恥ずい。(レイカ、ファール1。反省)

「セイラ、今年、年女でなくてよかった」

「そーだねー。セイラは乗せらんないね」

「ミワちゃんは?」

「あたしは、別に気にしない」

「ちん(ピー)にのったミワの姿って、ワラエル」(ナナミ、ファール2)

「ウケル。そん時は、ナナミも同乗してるから。同い年、二人とも笑」

「レイカもそん時は年女だろ。ママハイ仕込みが」

「ほっとけや」

 って、ナナミ、ヤマハイ仕込みでなくってママハイって言ってたんだ。ママの言うことハイハイ聞くって意味か。ウチ、そんなでもなかったよ。とくにコーコーの頃は。ナナミにテクニカルファールみとこ(ナナミ、ファール3)。セイラは笑いすぎ。

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