第二章 【レイカ】(2/8)
〈ぬぇ・いー。ぬぇ・いー。っぎは『ヒナギクさく丘』、ぬぇ・いー。デス〉
相変わらず、アナウンス分からない。成実。ナルミって言ってるの。なんで「ヒナギクさく丘」だけテープなんだろ。ここには遠征で何回も来た。ライバルの成実女子工業高校、成女工があるんだ。女バスのみんなして、暑いときはTシャツにバスパン、寒くなったらジャージとシャカパンで、一人一つずつ肩から一個用ボールケース下げてね。試合に負けた帰りはみんなして悔し涙を流したし、勝った時は大声で歌を歌いながら帰った。
乗ってきたよ。成女工の集団。ここの制服もかわいいよ、ちょっとだけね。うわ。一気にJK率上昇。
ピンポロピインピンポロピインピンポロピイン。
ガシュー、ガコン、ガコン、ガガガ。
〈は、っさすあぬ〉プファン。
さすがこんだけJKがいると、圧迫感アル。ん? ナンカ変な声する。
「うおあっは!。うおあっは!。うおあっは!」
あれー。あのイケメンだ。突然のJK集団に刺激されて本性出したんだね。真っ赤な顔してキョドっちゃてる。セーヘキだ。あれは、カンペキなセーヘキ持ちだ。あいつゲリ男じゃなくって、制服系のセーヘキ持ちか? きょーれつやばい。おーい、そっちのJKってば(無声)。お話にムチューなのはわかるけど、あんたたちシトが急激襲来中(極太明朝体)だよ。元ライバルのウチがいうんだから信用しな。そのイケメンは人間の皮被った怪物。気を付けて! ホラ。そいつの前に立たないの。悪いことは言わないから。油断してっと、チー吸われちゃうから。早く逃げて! ATフィールド張り巡らしちゃって。
ガガッガガン、ガガッガガン!
おっと、名曳川鉄橋だ。ここは鉄橋の音がうるさくって大声出しても何言ってるか分かんない。だから試合の帰りに女バスのみんなしてここで好きほーだい叫んでた。ヒマワリ、鼻くそほじんなーとか、セイラはマジオタクーとか、レイカはpkしすぎーとか、レイカのボケはヤマハイ仕込みーとか。ほっとけや。
あー。鉄ちゃん、窓から乗りだして写真撮ってる。危ないっての。周りのJK引いてるし。名曳川鉄橋は撮り鉄にはたまらんスポットだけど、あーいうのはチョット。とかいうウチらだって窓から叫んでたんだから一緒か。
ウチのイナカは次の辻沢なんだけど、この名曳川と反対側の猫分川にはさまれた土地で、おくるみの赤ちゃんみたいな形の町なんだ。ついでにいうと、赤ちゃんのおでこに駅があって、右目が宮木野神社、左目が志野婦神社。お鼻が町役場。それで、辻沢の名前のもとになった六道辻が赤ちゃんがお顔の下で握ったオテテの部分。おへそが雄蛇ヶ池で、ルアーのメッカだって(ルアーって何かな)。それと青墓の杜がおしめね、いつもじめってるイメージ笑。それと、最近できたのが、宮木野神社の裏から、辻の字のシンニョウの形に雄蛇ヶ池をかすめて抜ける宮木野バイパス。東西南北、周りはこうやって切り立った崖になってるから、昔から外界との接触が限られてて江戸時代は隠れ遊里だったり。だからかな、変なシキタリがいっぱい残ってるの。おー、なんか起こりそーな設定。雪に閉ざされたホテルで次々に怪奇現象に見舞われちゃってさ、最後はアル中の父親が……。
〈ぬ、じさー、ぬ、じさーです。っぎは『山椒の里』、ぬ、じさー。トマリマス〉
あ、何言ってるかわかんないけど、辻沢ね。降りよ。
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