第一章 【ヒビキ】(8/8)
三社祭の擦り合わせ、神社側は終わった。第1案だと予算オーバーするから、神社にも少し被ってもらおうと思ったんだけど、宮司さん金が絡むと絶対うんって言わないな。当たり前か。
「カワイくん。町長には初めから第2案でいく」
「りょーかいっす」
「それから、キミに任せてるイベントの件だけど」
「あれは、イベント屋さんにお願いすることになるかと」
「どこ?」
「ゴーマルサンイベントさんです」
いっつも忙しがってるあそこか。
「駅前広場にステージ張って、何かやるみたいっす」
「何かって?」
「何かっす」
カワイにさせろって社長が言うから任せてるけど。
「アイミツは?」
「アイミツ?」
「相見積もりだよ」
「あっ!」
あっ! じゃねーだろ。そこに頼むにしても、他から見積もり取って比較しねーと、ぼられてるかわかんねーだろが。アイミツ効果であっちが勝手に値引いてくれたりもすんだから。ビジネスの基本だろーが。カワイ、大丈夫か?
町役場はほとんどの職員がご帰宅ずみらしく、めっちゃ静かだ。
「なんで、役場の打ち合わせはこんな遅い時間なんでしょうね。7時前だったことないんすから」
確かに、この時間から役場に行くのしんどいよな。今回は特にね。あのハナゲはともかく、広報さんがどう言うか。
町長室。すぐ来るって言ったけど、もう15分待ってる。この悪趣味なインテリアの中にいると町長色に染められていきそうで気分が悪い。
「ヒビキちゃーん。こんばんはっと。あなたは? カワイくんね。ヒビキちゃん、おっかないでしょー」
「ヱ、ハヒィっす」
カワイは町長初めてか。ひとまずしゃべるな(無声)。っす(無声)。
「ヒビキちゃんは今日もズボン? 女はスカートがいいよ。アタシはね、ここの制服をセーラー服にしようと思ってるんだがね。その前にミスコン開催するんだよ。もちろん女子全員エントリーの。それでアタシマターのランク付けてね。ランクの低い者はズボンをはかせる。足がね、美しくないとね。そんなもんだよ。ズボンをはく女なんてのは」
次の選挙、自爆しろ。ハナゲ。
「じゃ、あとは頼んだよ」
行っちゃったよ。
で、広報さん。まーたよくしゃべること。あっという間に一時間経過。
「これは、山椒の古木の一本材でって言っといたけど」
「山椒の木一本でこれだけの大きさのものは準備できそうになく、あっても材料費だけで3ケタになるかと」
「で、寄木なわけだ。メリットは?」
「上部の重量が軽くなって、山車が安定します」
「ふーん、かえってコストかかりそうだけど」
「それは、なんとかこちらの責任で」
「そう? ならいいけど」
「あの、ここに町長のお名前を入れるについては」
それはスルーだろ、しゃしゃるなカワイ。
「いいよ」
「いいんですか?」
「いいよ。でっかくね。あとめっちゃ派手にして。電飾なんてどう?」
ねーさんを越えてった(無声)。言ったろ(無声)。
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