忘れられないあの日へ
麗央
第1話 記憶
楽しかった日々・充実した日々
毎日が楽しくて、幸せで、大切な人がいて、ずっとこんな生活が続くと思ってた。
でも、それは違かった。
突然奪われた幸せ。
あの日のたった数分で全てが崩れた。
目の前には、大量の血。そして、血塗れの大切な人。
一瞬頭が真っ白になった。何がなんだか理解できなくなった。このことが起こる前は、楽しく家に帰る途中だったのに、普段ならそのまま一緒に家に帰ってご飯を食べていたのに、なんでこんなことに____。
そして、一気に意識が戻った時、私は血塗れになった大切な人を抱き抱えて、ひたすら泣き続けていた。
泣くと同時にひたすら
「まだ、行かないで!!」
「やだ!やだ!いなくならないで!」
「まだ、助かる!絶対に助かる!」
と叫んでいた。
しかし、私の願いは叶うことはなかった___。
あとの記憶に残っていることは、
冷たくなった亡骸を救急車と警察の人が来るまで、泣きじゃくりながらひたすら抱きしめていることだけだった。
______________________
ピッピッピピピピッピピピピッピピ
いつの間に寝ていたのだろう。
もういつもよりも2時間も多く寝ていた。
まだ半分意識がない状態なのか、朦朧とした中で体を起こそうとした時
「痛っ」
頭痛で一気に意識が覚醒した。
少し、じっとしていると痛みも和らいできたので、鏡の前に立つと頬には涙の跡が残っていた。自分でもまさか泣いているとは気づかなかった。
私の朝起きてから、夜寝るまでの予定はだいたいいつも同じで、
早朝に起き、顔を洗い、無駄に豪華な用意された朝食を食べ、車で学校に向かい、学校が終わって車で帰宅。そして、勉強をして、用意された夕食を食べ、お風呂に入る。お風呂から上がった後はまた勉強をして、寝る前に決まってする1時間ほど本を読んで時計の短針が12をすぎて2にさしかかっている時にベットに入る。
というごく普通の生活である。
学校生活はというと、それほど楽しいわけでもない。
だからと言っていじめられてるというわけではない。ただ、友達といえる人は1人もいない。私は学校の中では、ただの大人しい人になっているというところだ。
別に顔はこれといって可愛くもなく、小さくもないし、おしゃれに可愛くお化粧もしていない。地味なごく平凡などこにでもいる顔だと思う。
____________________
“「でさー、この前彼氏ができたんだけどー、超かっこよくてー、______ 」”
彼氏________。
普段は聴こえてきても何も思わないはずのクラスメイト達の何気のない会話に、私はひどく動揺した。
彼氏、恐怖のあの日、幸せを奪われた、あの時の絶望と恐怖、どんどん鮮明になり、連鎖されていく記憶。
抑えようとしても抑えられない寒気
止まらない震え
止まらない冷や汗
猛烈な吐き気
そして、だんだんと朦朧とする意識
そんな中、ふわっと体が軽くなる感覚を覚えた。はっきりとしない意識の中周りを見てみると、どうやら、誰かに抱き抱えられているということに気がついた。周囲がざわついている。いつもなら、抵抗するところだが、そんな力もなく、その人にされるがままになっていた。
そして、私は意識を手放した。
__________________
“「_____じゃあ、任せたわよ。」”
「はい。先生。」
目を覚ますと、そこは、今寝ているベッド、バットを覆う白いカーテン、などから考えて保健室のようだ。誰かの会話する声で起きたのだろう。1人は保健室の先生だと分かった。
では、あとひとりは?会話から保健室の先生ともうひとりいることが想像できた。
一体誰なんだろうと考えていると______。
「ねぇ、起きたの?」
えっ_______________________。
私はその瞬間思考が停止した。
目の前には、もう存在しないはずの_____
“あの人が______”
「み、な、と、みなとなの?」
でも、それは思い違いで_____。
「えっと、俺は廉斗。残念ながら、君がいうみなとって人じゃないよ」
そうだよね。みなとがこの世にいるわけないよね____。一瞬だけど期待した私は馬鹿だ。
「それで?体調は良くなった?」
体調.....?あ、そうだ、私は保健室に運ばれたんだ。でも誰に?
あ、この目の前にいる人か__。
お礼はきちんと伝えなきゃ______。
「先程は、ありがとうございました。私を保健室まで運んでくださって、重かったでしょう__?」
「あー、いやいや、全然。椎名さんって思ってたよりもめっちゃ軽くて逆にびっくり。」
「いえいえ。私なんて本当重いんで。
でも、ありがとうございました。私は、このまま授業を休むのもいけないのでそろそろ教室に.......。」
「まだダメだよ?安静にしてなきゃ。せっかく少し回復したのに、また振り出しに戻っちゃうよ。」
別に何か体調が悪いとかそういうんじゃないのにな______。
ただ、あの出来事を思い出しただけで___。
別に、辛くない辛くないつらく..ない
ふいに、頬に温かいものが落ちてきた。
あっ、私泣いてるんだ。
泣いてることにさえも気づかないなんて....。
あれ?涙が止まらない。なんで?
拭いても拭いても止まらない。次々と瞳から溢れ出す涙。視界が大量の涙でぼやけてきた。
「え_____________。」
涙を拭くことに精一杯だった私は、抱きしめられていた。
え?いきなりどうして?疑問で頭の中が埋め尽くされたが、何か懐かしい温もりを感じで、抵抗できなかった。どこまでも続く海みたいに広くて優しい温もりに包まれているような気がした。そして、自然に抱きし返していた。
安心感......。
ほぼ初対面で話したこともないような人に私は安心感を持っている。
普通なら、突き飛ばして逃げているのに..
なんでだろ?不思議な人。
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