魔力枯渇





 見慣れない天井。


 シンの部屋の天井でもない。


 目が覚める前の記憶は無い。


 シンは体を起こそうとするが、体が言うことを聞かなかった。


 身体的疲労というよりかは精神的な疲れだった。


 シンが寝ているベッド以外何もない白い部屋。


 白い壁に囲まれた部屋。

 左側にはやはり聖都を見渡せる窓がついている。


 日は沈みきってしまって、聖都は沈黙に包まれていた。


「シンさん。夕食を持ってきましたよ」


 不意にドアが開く。


 入ってきたのは使用人ではなく、銀色のトレーを手に持ったカナリアだった。


「そんな顔をしないでくださいよ。私が使用人さんに頼んで、ここまで運ばせてもらったんですよ」


 よっぽど呆けた顔をしていたのか、カナリアがクスリと笑った。


 カナリアがなぜ自分に良くしてくれるのかわからなかった。


 勇者だから?


 少なくともその可能性が最も高かった。


「ありがとうございます。もう目が覚めたので大丈夫ですよ」


 シンは力なく返事をする。


「魔力枯渇で倒れたんですから、一日は安静ですよ」


 いいですね。と、カナリアが念を押すように言ってきた。


「魔力枯渇?」

「魔力枯渇というのは、魔力を出し切ってしまった状態のことです。通常は自然に回復していくのですが、極端に出してしまうと回復が追いつかなくなって、気絶、最悪の場合死に至ります」


 シンの疑問にカナリアが丁寧に説明する。


 つまりシンは生死を彷徨っていたということなのだ。


 その事実に若干の恐怖を覚えたシンだったが、それもそれで良いかと思えてしまった自分が怖かった。


 カナリアに遅れて入ってきた使用人が、椅子と丸テーブルを部屋に運んできた。


 使用人はベッドの側にそれらを置くと、そそくさと部屋から出ていってしまった。


「何はともあれ安静です」


 運ばれてきた椅子に腰を掛けたカナリアは、シンに夕食を食べるように促した。


 シンは食事を口へ運ぼうとスプーンを動かすが、その手は途中で止まってしまう。


「ええっと……カナリアさん? あんまり見られると食べにくいといいますか……」


 カナリアが終始シンの方を見たまま食べる様子を観察していた。


 年頃でなくても、食事を人にずっと見られるということは恥ずかしいことである。


「あっ。すみません。つい」


 カナリアが気恥ずかしそうにして、顔を背けてしまった。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


休んでしまってすみません。

今週は毎日いけそうです。頑張ります。


明日か明後日になにか(作者もジャンルがわからない)があがります。


星ありがとうございます。


よかったら応援コメントや星をお願いします。


これからもよろしくお願いします。


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