暁天のアスカ

ひぐらしゆうき

序章

第1話 厄災

 20年前、大国同士のいざこざから全世界を巻き込んだ5年にも及ぶ大戦が巻き起こった。

 この5年で多くの国が滅び、日本を含んだ大国は疲弊し、戦う力を殆ど失った国々は国際会議の場で停戦を宣言した。

 しかし停戦宣言から4ヶ月後、世界は瘴気に包まれた。

 瘴気は人を怪物に変え、戦争で疲弊しきっていた人々になす術なく、さらに今まで確認された事のない瘴気に対応が遅れた各国は次々と死者を出し、世界の人口は8割減となった。

 日本も例外ではなく、人口減少で働く者がいなくなり企業は「遺産」を残し殆ど倒産、発電施設も次々に停止した事で電気が失われ、原油が輸入できなくなった事で移動手段だった車や電車、船、飛行機は使い物になら無くなった。

 国は総力を上げて国民の生活を守ろうとしたが、既に国に現状を打破できる力は一欠片も残ってはいなかった。

 人々は国という寄辺を無くし途方に暮れていた。

 そんな時、突如として瘴気から人々を救い、疲弊した人々の寄辺になるという集団が現れた。

 その集団は暁正教と名乗って人々に食事を与え医療行為を無償で行い、仕事を与え、そして、解毒剤で瘴気から人々を救った。

 日本の国民は次第に暁正教の教徒へとなっていった。

 暁正教は各地に教会を設立し、大きな教会には巫女と呼ばれる白髪白眼の女性を配置した。

 巫女は不思議な力を持っており、神の言葉を聞き届け、神秘の力で人々を癒した。

 正教が現れてから一年足らずで国民は暁正教の信仰者となった。

 力の無い国は暁正教に協力せざるを得ない状態となり、事実上、暁正教が日本国のトップに立つこととなったのである。


 そして、それから月日が流れた現在。

 一人の少年は瘴気に汚染された九州から山口県下関市に避難して来ていた……。

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