黒森山探索④
有料老人ホームから帰って来た俺は、コンビニで洗剤やスポンジを購入し、江上が持って来てくれた重箱を洗った。
そして今日判明した内容を伝達するために、彼女の家の前まで自転車でやってきている。
LINEにメッセージを送ると、彼女は直ぐに家から出てきた。
「里村君! お疲れ様! 今日は本当にごめんね!」
「うん。弁当有難う。メッチャ美味かったよ。一応洗っておいたけど、気になるなら洗い直して」
「おお!! わざわざ悪いね」
「それと、これ、瑠璃さんへの見舞いの品」
コンビニの袋を差し出すと、キョトンとされる。
ゼリーやアイス等、安物ばかりなので少々きまりが悪い。
「お前も食いたかったら食ってもいいから」
「有難う。お姉ちゃん絶対喜ぶと思う!」
「だと良いけど」
「黒森山で何か分かった事有った?」
「うん。結構進んだと思う」
俺は江上に対し、十二律に関連する推理や、そこから老人ホームに繋がった事、そして代表のオッサンに言われた内容等を可能な限り詳しく説明した。
最後まで聞いた江上は、手放しで俺を褒めてくれた後、一転して難しい顔をした。
「楽譜をゲットするためには、老人ホームで演奏会を開かなきゃならないのかぁ……」
「しかも、老人達全員から評価されなきゃいけないみたいなんだ」
そう。楠木さんが俺達に告げた条件とは――有料老人ホーム壱越の入居者に対してちょっとした演奏会を開き、楽しませること。そしてその全員から称賛されること。この二つなのだった。
これは、寄せ集めの三人しかいない合唱部には結構荷が重い課題と言える。
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