Act:49『あんな泣き虫さんがねぇ』

  ピンポーン


舞「あっ!」

蛍「ん」

舞「私が出る!」

蛍「オッケー」


  ガチャ

舞「いらっしゃーい!」

桜「あ、舞ちゃん!」

舞「桜ちゃん~~~~!!!!!」

桜「大きくなったね! もうすっかりお姉さんだ~」

舞「えへへ」

蛍「よう、桜」

桜「あ、蛍。おじゃまします」


舞「はい、お茶だよ~」

桜「ええ! 舞ちゃんがお茶出してる!」

舞「ふふ~ん、お客さんには当然の対応です!」えっへん

蛍「ほとんど家事もやってくれてるんだ。料理も上手だし」

舞「急に褒められまくるとなんか怖い!」

蛍「俺はいつも褒めてるからな? 常に感謝もしてる」

桜「そうだよ~、いつもお弁当『美味しい美味しい』って食べてるもん」

舞「えっ……そ、そうなの?」

蛍「ま、まあな」

舞「……そ、そっか」

蛍「おう……」

桜「ふふふっ」


桜「お家は全然変わってないね」

蛍「そうだな。模様替えも特にしてないし」

桜「うん。すっごく懐かしい気持ち。

  それにしても、本当に二人で暮らしてるんだね」

蛍「ああ、驚きだろ?」

桜「私が引っ越して、蛍が中学に入ってからずっとなんだよね?」

蛍「うん」

桜「すごいなぁ、あんな泣き虫さんがねぇ」

蛍「うるせっ」


蛍「案外なんとかなるもんだぜ、その状況になるとさ」

桜「そうなんだね」

蛍「親からの仕送りは充分だし、不自由もないしな」

桜「うん、真っ当に育ったね、非行にも走らず」

蛍「親目線だな、桜」


桜(私がいなくても、大丈夫だったんだなぁ

  なんかちょっとだけ、悔しいかも)

蛍「でもさあ」

桜「うん?」

蛍「桜がいてくれたらって思うこと、たくさんあったな」

桜「え……」

蛍「ほぼ毎日一緒にいたんだ、そりゃそういう考えにもなる」

桜「そっか……そうだね」

 (ずっと、一緒だったもんね)


――――――――――


舞「桜ちゃん、ご飯食べて帰るよね?」

桜「えっ、あー……」

舞「ね!? ね!?」

桜「ああ、じゃあそうしようかな?」

舞「やたー!!!」

蛍「舞の腕の見せ所だな」

舞「うん!」

桜「あ、私も手伝っていい?」

舞「うん! いいよ~」

蛍「流石、料理研究部」

桜「うふふ、そうだね」


――――――――――


桜「ま、舞ちゃん。これって何人分?」

舞「三人分だよ~」

桜(どう見ても三人分以上あるけど……)

 「ね、ねえ蛍」

蛍「ん?」

桜「お腹、空いてる?」

蛍「へ? なんで――」

桜(つ、伝われ~~……)

蛍「――あんまり、空いてないかもなぁ」

桜「だってさ舞ちゃん! ちょっと量減らさない?」

舞「えー」

桜「それに、私もそんなに食べられないから……ね?」

舞「桜ちゃんがそういうなら、いいよ」

蛍(桜、ナイス!)

桜(良かった~)


―晩ご飯―

三人「いただきまーす」

蛍「……うん、美味い!」

舞「それ、桜ちゃんが作った料理だよ~」

蛍「おお、そうなのか。味付けが俺好みだ」

桜「やった~」

舞「ふふ、桜ちゃん、良いお嫁さんになるね」

桜「え?」

舞「お兄ちゃん、どう思う?」

蛍「いや、ならないわけないだろ、桜は」

桜「えええっ!?」

蛍「……? なんでそんなに驚くんだ」

桜「あ、いや、なんでもないよっ?!」

蛍「……?」


――――――――――


桜「送ってくれてありがとう」

蛍「気にすんな。にしても舞、テンション高かったなぁ」

桜「そうだね~」

蛍「桜のおかげだよ」

桜「あはは、そうなのかな?」

蛍「桜のこと、好きだからなぁあいつ」

桜「んん、蛍はどうなの?」

蛍「え……いや、それはまあ……」

桜「ん~?」

蛍「……好きだよ、そりゃあな」

桜「そうなんだ~?」

蛍「……ちっ」

桜「ふふっ……」

蛍「……」

桜(……え、私今何聞いたの……?

  小学校の時みたいな感じで冗談みたいに……!)

蛍「なんか、懐かしいなこの感じ」

桜「へっ!?」

蛍「こういう感じでからかわれるの、さ」

桜「あ……う、うん。……そうだね」

蛍「やっぱ、桜が戻ってきてくれて良かったよ」

桜「……そう言ってもらえるなら、私も戻ってこれて良かったな」

 (……私も、またここに戻ってこれて、嬉しいよ)

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