Chapter:1

Act:31『久しぶり』

蛍「散歩ってのは、ちょっと日が傾き始めたくらいが一番良いんだよなぁ。

  ……ん?」

?「……」

蛍(家の前に誰かいるな……女の子か?)

?「……あっ」

蛍(き、気づかれた)

?「蛍!」

蛍(しかも名前を呼ばれた!?)


?「やっぱり蛍だ。久しぶり」

蛍「え……久しぶり……?」

?「もうっ。幼馴染の顔忘れちゃったの?」

蛍「お前……桜か!?」

桜「うんっ、正解」

蛍「久しぶりだなぁ~! ……いつ戻ってきてたんだ?」

桜「えっとね、数日前! つい最近だよ」

蛍「そうなのか……その制服は?」

桜「えへへ、さっき学校に行ってたの。転入の手続きとかするために」

蛍「そうなのか」(知らない制服だな)

桜「蛍はもう授業始まってるんだよね?」

蛍「うん。夏休みは昨日終わっちまったし」

桜「お母さんが勘違いしちゃって、私明日から登校なんだ」

蛍「ははは、おばさんにしては珍しいな」

桜「でしょ? 私もそう思う。

  ……隣の家、今は違う人が住んでるんだね」

蛍「え? ああ、そうだな。桜はどのあたりに越してきたんだ?」

桜「んー、ちょっとだけ遠いかな? でも歩いて十分くらいだよ」

蛍「ああ、じゃあ近い方だな。近所だ」

桜「ご近所だね。それにしても……」

蛍「ん?」

桜「ちょっと前まで蛍が私を見上げてたのに、今じゃ私が見上げる側だもん。

  卒業式の時に背抜かれてたの、本当に悔しかったな」

蛍「おいおい、あれから何年経ってると思ってんだよ」

桜「四年間とちょっと、だね。大きくなっちゃったなぁ、蛍」

蛍「数年間で成長するもんだな」

桜「そうだね。うーん、でも悔しいなぁ」

蛍「はいはい」



桜「もうこんな時間! そろそろ帰るね」

蛍「舞にも会ったらどうだ? 喜ぶだろうから」

桜「明日の学校の用意しなきゃだから。

  舞ちゃんは次会う時の楽しみにしておくね」

蛍「そうか……。また会えるか?」

桜「もちろん。ご近所なんだから」

蛍「……そうだな」

桜「うん。それじゃ、蛍」

蛍「おうっ、またな」



唯「へえ、昔の友人に」

蛍「ああ。すげえ久しぶりだったはずなのに、話始めたらいつも通りでさ」

唯「ふふ、それは良かったね」

蛍「……あ」

唯「おや、どうしたんだい?」

蛍「連絡先聞いてねえ……」

唯「あらら」


唯「近所に越してきたんだろう? すぐまた会えるさ」

蛍「ならいいんだがな……」

唯「そういえば、今日は転校生が来るらしいね」

蛍「え、そうなのか?」

蛍(まさか……な)



桜「初めまして、東北の方から転校してきました。

  高遠たかとおさくらです。これからよろしくお願いします」

蛍「さ、桜!?」

唯「おや、彼女が……ふふっ、手間が省けたね」

蛍「ま、マジか……」

蛍(こんな偶然が、本当にあるのかよ!?)

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