Seed

あゆう

memory loveyou

 私が元の世界に転生して15年がたった。

 未だに彼は見つかっていない。

 似てる人に声をかけてみたりしたけど、違かった。

 当然よね。以前と同じ姿をしているとは限らないもの。

 私だってそう。

 以前とは顔も目の色も違う。唯一同じなのは髪の色だけ。

 だから以前と同じような長さまで伸ばしている。言葉が話せるようになってからはすぐに青いリボンを両親におねだりした。幸い裕福な家に生まれたみたいで、その願いはすぐに叶えて貰えたの。それからずっと一日も欠かさずに付けている。

 彼がすぐ気付いてくれるように。

 そして今日は15歳の誕生日の翌日。今私は冒険者ギルドの前にいた。

 運が良いことに今世の私は魔力が高く、優れていたのだ。

 それがわかった時に決めた事がある。それは冒険者になって彼を探すという事。


 それから二年。私は冒険者を続けていく内に、【蒼銀の美少女魔導師】と噂されるようになった。とゆうか、そうなるように仕向けた。いろいろなツテを使って噂の種をまいた。【蒼銀の魔導師】は、蒼いリボンと銀髪を示していて、もしかしたら彼が気付いてくれるかもしれないと思って自分で考えてみたの。【美少女】の方は勝手に付いてきた。まぁ……嬉しいけど?でも私は彼一筋だからね!


 そしてその広まった噂の中にはこういった物がある。

【蒼銀のは生前の記憶があり、生まれ変わりの恋人をさがしている】

【そのためどんな相手からの求婚も断っている。王族からですら】

【必ず蒼いリボンをしていて外す事はないらしい】

【笑顔で魔法をぶっ放す】

【とんでもなく可愛い】


 この噂がどんどん拡散していって彼の元に届いてくれたら……。特に最初と最後のが。


 ある日、とある情報が入った。海を渡った先の大陸の黒い髪で剣に蒼いリボンを巻き付けた剣士がいると。

 以前の彼の髪色は黒だった!

 私はすぐに船を探して手配した。幸いそれなりに稼いでいたので資金は潤沢にある!


 新しい大陸のモンスターは私がいた所のものより遥かに強かった。彼はこんなところで生きていたの?

 都市や街で情報を集めて彼を探す。その情報を頼りに街から町へと。私がいた大陸まで噂が来るくらいだから情報はすぐに集まった。

 そしてたどり着いたのは大陸中央の帝国内の墓地。

 目の前には墓石とそこに突き立てられた剣と、剣の柄に巻かれたまま風で揺れる蒼いリボン。


「あ、ああ……あ゛ぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 彼はいなかった。

 言葉は全て泣き声に変換されていく。

 吐き気がする。

 視界が歪む。

 意識が……離れ……る……。


 体に感じる揺れに目を覚ますと、そこは元の大陸に帰る船の上だった。一緒に旅をしてきた仲間が連れてきてくれたみたい。捨てておいてくれて良かったのに…。


 船を降りると、私は今までの冒険で得た資金や宝等を仲間に分けてパーティーを抜けた。

 引き留められたり、受け取れないと言っていたけど、私にはもう必要ない。旅の目的もない。


 そして今、転生してから一度も来ていなかった、前の人生で過ごした村があった場所に来ていた。

 そこはすでに村とは言えず、廃屋が並ぶだけになっていた。

 そこであの頃の楽しかった事を思い出そうとするけど、ハッキリと出てこない。彼の声はどんなだったのかですら。

 そこで一つ思い出す。

 あの記憶の花の事を。

 すぐにあの山に足を向けた。

 彼の声を。表情を。もう一度。


 以前、幽体で着いていった時とはちがってモンスターはあまり出てこなかった。出てきたとしても今の私の敵ではない。ときどき息絶えているモンスターもいたが、きっと縄張り争いで負けたのね。


 そして苦もなくあの場所にたどり着く。

 けど花は咲いていなかった。四年に一度だけ咲く花。きっとまだ咲く時期じゃないのかな。


「やっと来たね」


 声がして振り向くと、そこには剣を持った私より小さな、銀色で長い髪の男の子がいた。13歳位かな?こんな所に子供?


「えっと、君は?」


「この姿では初めてだね。とんでもなく可愛い蒼銀の美少女魔導師さま?広まってきたその噂を聞いた時に確信したよ。きっと君は同じ世界にいるってね。そして君ならきっといつかはここに来ると思ってね。体を鍛えて、ここの近くでずっと待ってたんだ。とは言ってもまだ一年くらいだけどね。まだ体が小さいから苦労したよ。だけど会えて良かった。ちょっとずれたけど、同じ世界に生まれる事ができたよ。ほら」


 少年は後ろを向く。

 その銀髪には蒼いリボンが結ばれていた。


「そんな……まさか……」


「髪の色もお揃いになったね」


 そう言って微笑む顔は、以前と顔は違っても彼の優しさで溢れていた。


 絶望していた。

 もう会えないと思っていた。

 けど、今目の前にいる。私の巻いた種はちゃんと彼まで届いていた。


「ねぇ、アナタはあの世界で最後に言ったこと覚えてる?」


「もちろん」


 言いながら背伸びをして私の涙を拭ってくれた。

 私と彼は目を合わせて口を開いた。


「「生まれ変わっても愛してる」」


 そう言って私は小さな彼を抱き締めた。

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