スキル収集と仲間の強化 2日目 その1

 うん?これは鳥の鳴き声?それともモンスターの鳴き声?様々な鳴き声と、強い日差しが朝を迎えた合図であった。

 オレは体を起こして背伸びをする。あぁ〜、よく寝た〜!!その声で横に寝ていたシズが目を覚ます。その顔はボンヤリと腫れていた。


 よく考えたら、リアルでは想像できなかった。オレの隣で女の子が寝ているなんて……。少しだけ勿体ない気もするが…こいつに至ってはオンナと言うよりも、仲間!の感覚が優っていた。


「おはよう。シズ!!よく寝れたか?」


 なんでだろう?寝起きのシズの顔をしっかりと見れなかった。

 それに反して、サラリとした返答が返ってきた。


「おはよう!うん…少し不安だったけど…まぁまぁ寝れたかな?別に…モンスターに襲われても良かったんだけど……」


 聴き慣れた発情期発言だ!!オレはいつものシズだとホッと肩を下ろした。少しだけシズの様子がおかしかった?そう思っていたからであろうか……。


 はいはい…っと遇(あし)らう。


「もう直ぐそこが【エスゴール氷山】だから…取り敢えずステータス確認するか!?」


 そう尋ねられたシズは「ステータス」と呟き、表示されたパネルを眺める。どれどれ!?とオレもシズの側に寄る。


「昨日でレベル13から16に上がったから、経験値ポイントも増えてると思うんだけど…あっ…ポイント45だって!!このポイントどれに振ったらいいと思う?」


 レベルが上がっていくシズのステータスを見ながら羨ましそうに…それを隠しながら答えた。


「ここまできたら…【STR】に極振りして攻撃特化に…今更【VIT】や【AGI】上げても……」


 聞く前から答えは決まっていたのか!?というような返答が返ってくる。


「だよね!?今更違うのに振っても…だよね!?うん!!【STR】に振る!!」


 見事に極振りされた数値は、【STR】195〈+120〉となり、他のステータス項目はゼロが並ぶ。


「クロユキさんのステータスも確認した方が…カンストだけど……」

「うっせぇよ!!本当モンスター討伐して得る経験値とか…無駄だし!!どんだけ討伐しても無駄だし…」


 『レベル1でカンスト』の言葉を脳裏に浮かんでは、苛立ちを覚えるのだ。


「まぁ……今更確認って言っても……見てみるか!?」


 オレは「ステータス」と放ち、ステータスパネルを表示させた。


『所持金』

7500ジェム


『基本情報』

【NAME】クロユキ  

【Lv.】1『カウントストップ』

【HP】52/60     

【MP】4/20


『ステータス』

【ステータスポイント〈+15〉】

【STR】0〈+70〉  

【VIT】0

【AGI】100〈+1460〉

【INT】0   

【DEX】0 


『装備一覧』

≪右手≫

【アサシン・ブレード】

〈スキルボックス〉:【最後の一撃】

≪左手≫

【アサシン・ブレード】

〈スキルボックス〉:【吸血魔】

≪ヘルム≫

【空】

≪アーマー≫

【アサシンマント】

〈スキルボックス〉:【エンジェル・ハート】

≪グローブ≫

【アサシンブレード専用収納格式手甲】

〈スキルボックス〉:【空】

≪ブーツ≫

【飛躍の黒龍ブーツ】

〈スキルボックス〉:【空】

≪アクセサリー≫

【空】

【空】

【空】


『スキル』

【鑑定】【一重の極み】【電光石火】【無双回避】

【大物残滅ビッグ・イーター】【吸血魔】

【毒耐性 小】【断固たる決意『天使の施し』】

【エンジェル・ハート】【最後の一撃】

天から与えられし力ホーリー・〈覚醒(段階1)〉アクセル

【蓮斬(ディザスター・バースト) 『慈愛の加護』】


『パーティーメンバー』

シズ(クソど変態ビッチオンナ)


 これを見て、ふむふむ…っと頷く。


「やっぱり…レベル1でカンストかぁ!?うん?ポイントが15ある!?」


 オレの横でコマンドウィンドウに這いつくばって眺めるシズの姿。


「なんでレベル1なんかでカンストしてるんだろ??でも…スキルが…」


「取り敢えず…【AGI】にポイント極振りするわ!!う〜んっと…プラスボタン押して…っと、良しっ!!これで【AGI】が… 115〈+1460〉っと!!これで良いだろ!?あんまりモタモタしてらんないから【エスゴール氷山】に向かおう?」


 そう言って2人は立ち上がり、目の先に見える【エスゴール氷山】へと向かう。


「う〜ん!気持ちいいなぁ〜…っでも寒っ!!」


 カラッと晴れた空の下をこう、周りの風景を見ながら歩くのは何年ぶりだろうか?

 意外にもこれからもっと手強い敵が待ち受ける…そんな場所に向かうとこで、こんなにも絶景を唯我に眺めているなんて……

 山々が連なり、雪肌を見せつつもいっぱいの緑もある中で、海辺があり…断崖絶壁の海岸も眺めることが出来る。

 しかしこの絶景とは相異なって、次第に身体を冷気で襲う。【エスゴール氷山】の名だけはあるなと感心する。

 積乱雲だろうか?雲の塊が、氷山の先端部分を飲み込もうとしている。


 その時だ–––。何かのスキルのエフェクトだろうか?と思えるぐらいの突風が吹き荒れる。

 それはオレたち2人を飲み込んでしまいそうな勢いだ。

 オレは咄嗟にマントのフードを深く被り、下を俯く。


 「キャッ!!」


 風の音と共に耳に入るシズの奇声。

 慌てて振り向き、シズの様子を心配する。

 風で暴れる髪を、抑えながら悶える姿がそこにあった。ミニスカートが風でなびく。オレの視線はそこに釘付けだ–––。


 ミニスカートを片手で抑える。


 しかし…そうこの仮想空間の自然の力は言うことを聞いてくれない。スカートの裾がめくれ上がり、ジズの美脚が露わになる。


ゴクッ……


 「あぁ……、ダメダメ!!!シズは仲間なんだ!!!だからダメだっ……」


 きっとこの言葉はシズには届いていない。と思いながら、シズに言葉を掛ける。


「お〜い!大丈夫かぁーー!?」


 この声に反応したかのようにオレを見るシズ。


「足くらいなら〜、…別にいいけど〜!!それ以上は…ぜっ〜〜たいに見せないから!!」


 風の音なんかには負けまい!そんな口調で叫ぶシズを見て、なんだか嬉しかった。

 聞こえてたのかよ–––!?


「なっ、……見てねぇよ!!みっ、見たくねぇし!!そんなことよりも…先急ごう??」


 さらに風の勢いは増すばかり–––。


 オレたちの歩くスピードは変わり、先ほどよりもゆっくりとなり、勾配を感じながら少し前屈みで歩く。

 山に差し掛かったのだ。山の天気は変わり易い!とはよく言ったものだ。カラッと晴れていた空は一面雲に覆われていた。

 勢いを増す風と、それに比例して冷気がより一層身体を締め付けた。

 ゆっくりではあるが前に進んでいる感覚ははっきりと分かる。地形のせいだろうか。標高が高く感じられたが、意外とその先入観を一掃させた。

 しかし、葉を付けない木々はどことなく幻想的な光景であった。


 この幻想的な光景の中、遅れて歩いていたシズはオレに追い付いた。

 それほどオレの歩くスピードが遅くなってきたのだろう。

 少しずつ勾配が急になる–––。

 ふとシズが口遊む。


「この感じ…なんかモンスターが出てきそう……」


「おいっ!!やめろっ…フラグ立てんなよ!!本当に出て来たら……っておいっ!?……」


 辺りが白く薄い霧に覆われて、それはなにやら緊迫感を表現したような光景へと変化を遂げた。


 オレたちはこれが……

 再度押し寄せる新たな危機だとは、


 思えなかったんだ–––。


 …………。


「ウラララガガガガガガガァァァァァ!!」

「ガルルルルルルルルゥゥゥゥ!!」

「グオォォォォォォォォォォォォ!!」


 霧の中にとてつもなく木霊(こだま)する獣の叫び声が……

 それは風の音を遮って、俺たちの耳の中に襲い掛かる。今までとは比べ物にならない程の恐怖を植え付けられた。


「ガルルルルルルルルゥゥゥゥ!!」

「ブオゥブオゥブオゥブオゥブオゥ!!」


 木霊する叫び声のボリュームは次第に大きくなるのだ。


「キィギャァキィギャァ」

「ウラララガガガガァァァァァァ」


 叫び声によると複数体いるのだろうか?決して一体だけでは無い。


「ドッーーーン!!」


「ガサっガサっガサっガサっ」


「ギャァギャァギャァギャァ」


 それは暴れているのか?木々を薙ぎ倒しながら……うん?これはモンスター同士で争っているのだろうか?

 悲痛のような叫び声も耳に入ってくるのだ。苦しみと激痛を訴えるような……

 地響きも共に訪れる。

 重く低い地面を叩き割るほどの音が振動となり、足から伝わってくる。


「ウラララガガガガァァァァァァ」


 突然オレたちがいる場所から数十メートル離れた所に、それはまるでライオンと鳥が合体された獣が飛び出してきた。

 その獣は茂みの中から何かに襲われたようで、奇声を上げながら吹っ飛んできたのだ。

 そして2回3回と回転しながら、大きな引っ掻き傷をつけて現れた。

 獣はモンスターの部類だと判断できた。その獣の上には≪エンペルガー・ジャガー≫と記されていたからだ。

 動体にはハーピーの翼のようなものが2つ……その姿はまるでキメラであった。

 体長はおおよそ15メートル以上はあるだろうか!?


 しかし……


 聞こえた獣の奇声は、今オレたちの目の前にひれ伏しているヤツだけでは無かった。

 ≪エンペルガー・ジャガー≫の巨大な躯体をも吹き飛ばしてしまうほどの獣がまだいるのである。


「キィギャァキィギャァ」


 この威嚇にも捉えることのできる奇声が、もう一頭獣がいるんだと確信が出来た。

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