スキル収集と仲間の強化 1日目 その2

 誰かを踏み台にして昇進、昇格…昇給…そんな世の中にはヘドがでる!!


 だから…だからこそ……

 今ならこう思えるんだ!!

 このゲームで生きてくって…こんなオレなんかにも頼ってくれる仲間ができた。

 リアルじゃあ繋がらないヤツとだって……


 「セカンド・ライフ」で生きてくって決めて良かった……

 誰かをこんなにも守りたいなんていう気持ち…あの時のオレじゃあ到底思うはずも無かった!!


 オレに誰かを守れる力があったら……


 そう願った時、頭の中に通知音が響いた。


 『スキル【天から与えられし力ホーリー・〈覚醒(段階1)〉アクセル】を取得しました』


天から与えられし力ホーリー・〈覚醒(段階1)〉アクセル】 ユニーク

全身を緋色のオーラで包む込み、全ステータスをスキル発動時に瞬時に2倍にする(装備上昇値は除く)。被ダメを60%減少。

*使用制限

1日3回まで使用可能。1回のスキル継続時間は1時間。

取得条件

誰かを守りたいそう強く、心の底から願った時に与えられる。対峙した敵が自分よりも格上、ステータス項目4つ以上が敵よりも劣る場合に取得可能。


 これがあれば……


「シズっーー!!スキル、【覚醒ホーリー・アクセル】!!」


 この時のオレの【AGI】は『100〈+1460〉の2倍だから……『3120』である。

 これを持ってすれば、どんな動きも可能だ。

 シズの前に出て、シズを守る事だって……


 そう思いなが、無我夢中になり我を忘れ、シズがエントの攻撃を受けようとしている最中に、そこに割って入ろうとした。


「オレの仲間は……オレが守るーー!!」


 そう叫んだその次……

 オレの体には3本の切り傷が刻まれた–––。


「ウグゥ……」


 そのエントの攻撃を受けた反動で、シズの胸の中に吹っ飛ばされた。オレの体を小さな腕で抱え、支えていた。


「いやぁ!!!うっ…うっ…クロっ…クロユキさん……」


 オレのHPが減っていくのが分かった。オレの目には、涙で潤せたシズの瞳が写された。


「なんで…っなんで、いつもそうやって私のこと…かばってくれ……」


 オレのHPは52から5まで下がり、HPバーは赤く染められた。


「結構……痛いのな!?ダメージ食らうと…。でもっ、きっと【エンジェル・ハート】が発動でし…回復してくれるさっ……」


 被ダメ60%減少バフを見に纏うのだが、エントの攻撃威力は想像を超えていた。


「私が盾になるから……」


 そう言ったシズの細々とした体を見て、オレは応えた。


「オレが…勝手に守りたい!!それだけなんだ…。だから…このままじゃあいられない…!!直ぐに第2打が来るっ……から…」


 すると立ち待ち頭の中で通知音が鳴り響いては白い半透明のパネルが現れる。


『スキル【蓮斬(ディザスター・バースト)】を取得しました』


【蓮斬(ディザスター・バースト)】 ユニーク

慈愛の力を己の力に変換し、敵に30連打の攻撃を瞬時に

与えることが出来る。スキル詠唱後瞬時に敵の前に移動し、蓮撃を与える。

スキル発動時【STR】8倍(装備上昇値も含む)に瞬時に上昇させる。

〈別名〉『慈愛の加護』

*使用制限

1日5回まで使用可

取得条件

スキル【天から与えられし力ホーリー・〈覚醒(段階1)〉アクセル】を取得済みであること。HPが1%以下になった場合、パーティーを組んでいることが条件

の下、取得可能。また【AGI】が1000以上のプレイヤーに限って取得可能。


 このパネルを見てシズが泣きそうな顔で微笑んだ。


「このスキルって……」

「あぁ…このスキル…シズがオレを本当の仲間って想って…くれたってこと…。だから……」


 この言葉と同時にオレはシズの腕の中から飛び出した。

 痛みの余韻が残る中、少しばかりか【エンジェル・ハート】で回復した身体を瞬時に敵の方へと走らせる。

 目の前に映ったエントの群は、オレよりも体長は大きく、3、4メートルはありそうで、一つの木に生命を宿らせ動き、そしてしっかりと顔もあるのであった。

 巨体ともなれば、動きはノロく的を狙うのも容易である。

 しかし、攻撃の第2打目が…再度エントの腕が大きく振られる最中だ。

 オレはこの新たな力?スキルを手に入れて、エントに猛攻を仕掛ける。


 こんなクソど変態オンナのことなんて…今はコイツを守らなきゃ!!せっかく出来た繋がりなんだ!!ナンボ、ゲームだからと言っても…こんなオレをどこかで変えたかった…オレからしたらあんな腐ってる世の中から仮想空間に来たんだから……だから、誰かのために何かをしたいんだ!!!


「ちょっ、クロユ……」

「ウオォォォォリャァァァっ!!!!!!!」


 オレの叫び声はこの場所全体を飲み込むほどまでも響き渡った。


「あんな姿見たら…私だってジッとなんかしてらんないよ!!!」

 シズは武器を構えて、剣先をエントの群れに合わせる。


「スキル!【蓮斬(ディザスター・バースト)】!!」

 

 詠唱と共に、オレの体は瞬間的にエントの群れの前に移された。そしてスキルモーションに入る。両手を横に広げて……。


「ジャァァァン、シャキーン、ジャキーン、ジャジャン、ザクッザクッ、シャキーン………ザクっ!!」


 その猛攻撃はあっと言わせぬ凄い神速のような速さで、エントを切り刻んでいった。

 瀕死のダメージを与えたのか?エント3体は力尽きていく様子であった。


「はぁ、はぁ、はぁ…、シズっ!!」


 シズの構えられた武器は振り上げられた。


「分かってる!!スキル!【修練の一撃】!!」


 シズのスキルモーションが終えると、エントの群れはガラスが割れたように破片となり消えていくのであった–––。


 これを見て、オレは大の字にその場に寝転んだ。


「はぁ、はぁ、はぁ…一時はどうなるかと…。にしても結果オーライだな!?家賃だって稼がないと……だしっ!!はぁ、はぁ、はぁ……」


 シズがその場に倒れ込んだクロユキを見て、クロユキの元へと駆け寄る。


「クロユキさん!!大丈夫??はぁ、はぁ、はぁ……」


 するとシズの頭の中で通知音が響いた。


 『レベルがアップしました』

 『スキル【神聖力(セイクリッド・トゥルース)】を取得しました』


 シズのレベルがアップし、Lv.13からLv.16へと上がり、スキル詳細のパネルが現れる。

 これを寝転がるクロユキとクロユキの側に寄るシズ2人で眺める。


【神聖力(セイクリッド・トゥルース)】ユニーク

神の神聖力をもたらして、パーティーメンバーのみ(発動者除く)を結界を張り、守護する。

〈別名〉『加護を与えし力〈君を守るよ〉』

*使用制限

詠唱から発動まで20秒かかる。1日の使用回数1回のみで結界が張られてから5分間保つ事ができる。スキル発動後に発動者は全てのMPを失う

取得条件

パーティーを組んだ状態で自分がラストアッタクを成功させ、パーティーメンバーを救出する。尚且つ、パーティーメンバーと自分よりも格上の敵と対峙し、討伐成功した場合。ステータス項目3つ以上が、対峙した敵よりも劣る事が前提。


「…………」


 これをしっかりと眺めたシズは沈黙を続けていた。


「シズっ……このスキルって……」


 黙り込むシズがやっと口を開けた。


「このスキルがあれば…この先クロユキさんの事守れるね!?私だっていつも守られてばっかりじゃあ嫌だ!!だから……今度は……」


 そう言うシズの顔は笑っていた。

 でも、儚くどこかに消えてしまいそうな気がしたんだ!!


「一応、ありがとう!…って言っとくよ!!取り敢えずは疲れたし、回復に専念って事で…ここら辺に野営しよう!?」


 コクっとシズは頷き、オレと同じ大の字になって寝転んだ。


 もう夜が更け掛けていた–––。

 ゆっくりとした風を感じながら、2人は空を眺める。

 

 こんな世界なら……ずっとずっとここに……


 居たい–––。


 リアルのオレがあのまま働く身であったなら、こうしてのんびりと空を眺める事なんてあっただろうか?

 いや、そんな心に余裕は無かった。肩身の狭い思いで会社で過ごしながら、なるべくトラブルには巻き込まれまいと目立たぬようにやってきた。

 これが仕事であり、これが働くと言う事だ!!と自分に何度も何度も言い聞かせる。

 平穏な日々を感じた事はなかった–––。


 オレはどこかで居心地の良い場所…安らぎを得られる場所、


 オレらしく生きられる場所……

 それを探していたのかもしれない–––。


「シズっ……お前のスキル【責められるのがお好き】はヘイト集めるから、一旦装備外した方が良いかもしれないな!?」


 寝そべりながらシズはオレを見た。


「そっ…そうだね!?じゃあ装備外すね!?う〜んっと……これで…装備解除っと…うん!!外したよ!?」



 てっきり猛反対するだろうと思っていたが…こう簡単にも納得されたら、ある意味困るのだが…。


「明日起きたら、レベルアップしてるし…オレはカンストだけどな!?ステータス確認した方が良いかもな!?……もう今日は疲れたし、ここで寝よう!?この空を見ながら…」


「あっ…なんかロマンチックなこと言って…私が横に寝てるからって……変な気…起こさないでね!?」


「なっ…当たり前だ!!ふんっ!!お前なんかに手出すかよ!?」


 ………………。


 オレはシズが寝たのを確認して、そして辺りを見渡し安全を確認してから寝ることにした。

 

 気持ち良さそうな寝顔が見えた–––。


 身に羽織っていた【アサシンマント】を脱ぎ、寝息を立てるシズに覆うように掛けた。

 明日は【エスゴール氷山】を越えなくちゃいけないし……

 早めに寝とこう……


 その夜は深い眠りにつけた–––。



♢♢♢♢♢


【あとがき】

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