ボス部屋現る!?

「なんで一人で討伐しちゃうんですかぁ?うぇ〜ん…」


「だってしょーがないだろ?倒れたんだもん!結果的に2人してHPゼロにならなくて良かっただろ!?」


 シズの目には涙が溜まっているのが、暗い洞窟の中でも、多少の光の乱反射で見えた。

 すると何やら、聞き覚えのある音がオレの頭に響くと白い半透明のパネルが表示された。


『スキル【断固たる決意】を取得しました』


【断固たる決意】 ユニーク・スキル

自分を中心に絶対防御壁を生成する。このスキル継続中如何なる攻撃をも無効化にする。パーティーメンバーも防御壁内に入っていると同等効果が得られる。

〈別名〉『天使の施し』

*使用制限

一日に一回のみ使用可能。スキル継続時間は発動後から15分間。

取得条件

パーティーメンバーを庇いながらそして1人で戦い、敵を殲滅する。尚且つ、被ダメゼロを保つこと。


 オレはこのパネルを一目見て、口が開き目が点になり、ピタッと止まってしまった。

 魂が抜かれるような、そんな錯覚に陥ってしまった。


「この【断固たる決意】って言うスキル…時間制限みたいな条件はあるけど、無敵状態って事か?オレ…Lv.1で無敵状態になっちゃうの?やべぇじゃん!?めちゃめちゃ使えるスキルじゃん!?」


 隣でこのコマンドウィンドウを眺めていたシズが口を開く。


「こっ、このスキル半端ないですね!?無敵ってあの無敵ですよね!?すごい!!でも…これ私には要らないです!ポイです!」

「分かった、分かった!お前が言いそうなのは大体想像つくわ!」



 しかし、当たり前の如く、レベルアップはしない–––。


 そして、パネルの画面は変わり……


『金貨【5600ジェム】を取得しました』と記載され、画面は消え去る。


「大体1匹で700ジェムっていったとこか?まぁ、金には変わらないと…だけど家賃には遠いなぁー!?」


 シズは少し休もうと腰下ろした瞬間……


「休んでる暇無いだろ?さっきだって、毒ガス受けたの少しだけだったから…毒の状態異常にならなかったから良いものの…そうこうしてるうちに、また違うモンスター来るかもしれないだろ?」


 オレはそうシズを急かすように言い聞かせた。


「私だってその気になればモンスターの1体や2体だって…と言うか、あのゴーストの群れに毒ガス吐かれながら、どんどんHPが減っていくのを想像しちゃうと…あぁ、なんだか火照って…」

「はいはーいっ!欲情はそこまでにしといて…奥に進むぞ!?」


 ふとこちらを向くシズの顔があった。


「私の◯◯の奥まで?そっ、それは…あっ、だっ…だめぇ〜〜!!ハァ〜ン……」


 何かに悶えるシズの姿–––。


「もうそろそろ、良い加減にしてもらいますか?この腐れビッチが!!これ以上話すと、放送禁止用語が炸裂しそうですよ!?」


 こうしてオレとシズは洞窟のさらに奥へと進む。


 しかし、突如として現れたのが、オレの背丈よりも高い大きな扉であった。鉄の様な物質で出来ているのだろうか?固く重そうな扉である。


 きっとこの扉の奥には、ボスがいる–––。

 そう確信出来るほどの、強烈な扉であった。先ほど詠唱したスキル、【回避無双】と【電光石火】の効果はまだ続いているようだ。


 「さぁ、心の準備は…?なんて事聞くとでも思ったかぁ?おい、固まってねぇで行くぞ!?これはなぁ、金の成る木だよ!ボスっていったら報酬だってきっと……」


 ボス部屋の扉を前にして固まるシズの姿。

 しかしそうは許さまいと、力尽くで引っ張り、扉を開けようとする。


「ハァハァハァ、そんなに強引にしなくても私は…ちゃんと脚を広げ……」

「はい!黙ろうなぁ!?このクソど変態ビッチが!!」


 さらに力を入れて引っ張るのだ。


「こっ、こんな…私はもう天に召されても…」

「はいはい、分かったよー!良いから黙って中入るぞぉー?」


 その扉は両開きになっており、ドアノブなどは付いていない。この隠しダンジョンの洞窟…薄暗い雰囲気に合っている。中にはそれなりに強大なモンスターが待ち受けていると謳(うた)っているようだ。


 ゴクッと呑み込み、オレはその重い扉を押し開ける–––。


 中は暗闇で覆われて風の流れが分かる。やはりそこには強大なモンスターが…そんな先入観に襲われるのだ。

 オレたち2人は、その中へと恐る恐る1歩2歩と歩みを進める。より強大なモンスターを討伐出来れば、それなりの報酬を獲れる。それがMMORPGのお約束みたいなものだ。しかし、オレたち2人は何を隠そう。【VIT生命力】はゼロである。一撃でも受けてしまうと立ち待ちHPバーは赤く…否、ゼロとなりモンスター消滅時のエフェクト…ポリゴンの欠片となって散って行く。そんな不安を抱えながら重い脚を歩めと言い聞かせるのだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る