1章-27話 研究所 後編
「なんでわかるの?」
邪神が封印されたことが事実であったとしても、この積んだ世界を見てどうして復活していないといえるのだろう。
「邪神がもし復活していたら、わたし達はとっくに死んでいるわ。強大な力を持った邪神がいないからこそ、魔族は世界の理を変えるなんて回りくどいことをしていいるのよ」
答えは簡単だった、クロエが返答してくれた言葉が全てなのだ。何千年も前の話など証明することが難しいが、少なくとも神と同様の力を持った相手が、今も存在しているのであれば、とっくに人類は滅んでいる。
「クロエ達はその理を元に戻す為に研究しているっていってたよね? そんな方法あるの」
「あるわ。他にも石板があってそれに書いてあるの。全てを解読出来ているわけじゃないのだけど‥‥‥ある素材を集めて特別な場所で儀式を行うの」
「素材?」
シンヤは呟くように質問をする。世界のルールを変えるほどの物、そう簡単に入手できるものではないのだろう。
「一番難しいのは天使の血‥‥‥」
「えっ!? だって天使は封印されたって」
「そうなの。だから代わりの物がないか、神々の封印を解く方法、封印されていない天使の捜索、他にも可能性があるもの、全てを探しているの」
「それらが見つからなければ‥‥‥?」
「人類は滅亡するだけ‥‥‥。でも大丈夫。絶対見つけるから」
きっと彼女が諦めることは無いのだろう。まだ一緒にいる時間は短いのだがシンヤはクロエの瞳に決意を感じ取りそう思った。
「‥‥‥あのさ、クロエ」
「どうしたの?」
シンヤのこの世界アビリスに来るまでの事はクロエにも話しているが、言っていないことがあるのだ。
「実は、おれ。ここに来る前に死んでるんだよ」
「死んでる?」
「前のおれが住んでいたところで誰かに刺されて‥‥‥そのまま」
自分が死んでいたと告白するのは、シンヤにとって可笑しく実感のない話だ。それを誰かに話すことで奇異の眼で見られたりするのではないか? 最悪見捨てられると思っていたが、ここで話ておかなくてはと勇気を出して言葉にする。
「でもシンヤ生きてるじゃない」
「死んだあとに行くところで天使と会って、話して‥‥‥そのあと、黒い影に飲まれたらここにきていたんだ」
なぜ生きているのかと聞かれたら分からないと答えるしかないが実際シンヤは死んだのだ。そして天界でここに飛ばされた。
「うそ‥‥‥じゃ、ないのね‥‥‥」
「その時一緒にいた天使、ノエルって名乗っていたけど‥‥‥その人も一緒にのまれたんだ。もしかしたらこの世界に来ているのかも‥‥‥」
この世界の天使と違うかもしれないが、少なくとも神が作り出した神の使いという意味では同じ。可能性は高いのだろう。
「そのノエルって人を見つけることができたら‥‥‥。他にも必要な物や問題もたくさんあるけど‥‥‥」
「この世界を救えるかもしれない‥‥‥」
「‥‥‥っ!!」
感極まったクロエが、いきなり抱き着いてくる。シンヤはどうしていいかわからず両手を上げて硬直しているしかなかった。
「ちょっ‥‥‥」
「シンヤっ、ありがとうっ!」
気恥ずかしくなったシンヤはクロエに声を掛けようとするが、涙を流す彼女は死の声をかき消し耳元で感謝の言葉を叫ぶ。
耳元で声を張り上げられたシンヤは、耳鳴りのする状態でクロエに抱きつかれたまま立ち尽くしていた。
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