異世界狩ろう録;異世界植物観察記

なんよ~

異世界タンポポの一種

 この異世界では、人以外にも動植物達もこの異世界に迷い込む。




しかし、この異世界はマナと言う名の自然エネルギーというものが存在しており、その影響からか、多少なりとも動植物はそれに最適化するために独自の進化を遂げるのであった。




今回はそんな異世界ならではの独自の進化を遂げた植物をご紹介する。




 異世界タンポポの一種




日当たりのいい草原の中に一際黄色く花々を咲かせている植物群を見つける。




皆さん、御存じのタンポポの一種だ。だが、このタンポポ、異世界転移して何世代もの月日と交配の結果、独自の進化を遂げたのである。




本来のタンポポの種子は、綿状の毛のようなもので風を掴んで拡散する種である。




その点は異世界タンポポも一緒なのだが、本来の種よりもこのタンポポは数倍の飛距離を有している。




なぜそんなに飛ぶことができるのであろうか、それにはマナが大きく影響している。




 この異世界タンポポは普通のタンポポと同じように光合成と根からの吸収により、栄養を蓄える。その時に、地中に僅かながら存在するマナも吸収する。




そうして、タンポポはマナを貯め込むのである。だが、それだけでは終わらないのが、異世界タンポポ。




なんと、彼らは周りにいる他の植物からも栄養とマナを吸収してしまうのだ。




根を大きく広げて、他の植物の根に絡みつきマナと栄養を吸収しようとする。そのようなことをされてしまっては、植物は成す術もなくマナと栄養を奪い取られてしまう。




だが、このマナの略奪は同じ兄弟にも向けられる。




彼らに同種の慈悲という心はなく、養分やマナを吸収できる物ならなんでも吸収していく。例えそれが同じ種のタンポポであったとしても。




ここで、特筆して面白い点がある。異世界タンポポの同じ同種同士の根が絡み合うと、そこでマナと栄養の奪い合いが起こるのだ。




絡みつけられた方もなんと絡みついた方から養分やマナを奪い事があり、その勝敗は様々な要因で変わることがある。栄養状態、マナの保有量などで決まる。




戦いに負けた異世界タンポポは、栄養が吸い尽くされて枯れていく・・・。




そうして、周りの植物からマナを大量に奪い取った異世界タンポポは、茎の部分にマナを貯蔵する。それは種をつけるまで大切に守られる。




綺麗な黄色い花を咲している地中の中で、無残にも枯れていった花々たちのことを忘れてはいけない。そうして、生き残った者同士で、花粉の交換をして種をつけていく。




次に取り上げる点は、その拡散方法である。綿毛が飛び始める頃に、茎の中に蓄えられていたマナを花部分に集約しはじめる。




 そうして、いよいよ風に乗せて拡散する時が来る。




白い綿毛をつけた異世界タンポポが、今か今かとその時を待つ!!




一陣の風が吹く。その瞬間、今まで貯め込んでいたマナをこの時のために放出する。




それは大きな息を吹きかけた様に、タンポポを空高く舞いあげる!!




そうして、はるか上空へと上昇したタンポポは、激しく吹きあられる風に乗ってまだ見ぬ場所へと飛び立っていくのであった。




以上、拡散する種の異世界タンポポの観察記録を終わらせていただきます。

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