死ねない猫の殺し方

「儂を殺してくれ」

 縄の輪に首を掛けようとしたら声がした。私は中止して顧みる。しかし誰もいない。一匹の猫を除いては。まさかね。

「そのまさかじゃ」

 唖然とするが、確かに公園には私とこの猫しかいない。

「儂は不死の猫。それが悩み。どうにかして殺してくれ」

 死の境地へ足を踏み入れた時に見える幻覚だと思った。ならば生前最後に善意を働かせよう。そうすれば天国に行けるかもしれない。

 私は試しに縄で猫の首を締めてみた。無意味に終わる。

「仕方ない。諦めよう。ではまた」

 猫は去った。不思議な出来事だった。まさか、自ら命を絶とうとする私に神が命の尊さを教えたかったのか。そうに違いない。ならば精一杯生きてみよう。



 また死ねなかった。儂はどうすれば迷惑をかけずに死ねるのか。儂を殺そうとした者は後日死んでしまう。あの人間は元々自殺を図ろうとしていたので問題はないが……はて、どうやって死のうか……。

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