　安藤さんはぼくなんかと違って本物のアーティストになりつつある。当初映写機を使って浮かび上がらせていた骨の像は、今ではスマホのアプリとして無料で提供されている。レントゲンを使っているわけではない。骨の像はカメラの入力を基に合成される。骨にはユーザーレビューがつけられる。人気があるのは妊婦と胎児で、昼食にサンマを食べるサラリーマンはその次くらいに良い。

　骨フェチという人は意外といる。骨を写すカメラのレビューをオンにすると羽衣さんの骨には「肩甲骨。可動域広そう（ポジティブ評価）」「前頭骨。せり出してる（ポジティブ評価）」「鎖骨。折れそう（ポジティブ評価）」といったコメントがつけられている。ネガティブ評価された骨については失礼なのでいちいち書き写さない。